阿賀野川のむかし話

酒呑み地蔵旧中蒲原郡横越町(現新潟市)

酒呑み地蔵

 小杉の法幢寺は今から300年ほど前にたてられ、ここに行基という、たいへんえらいお坊さんが作ったといわれる酒呑み地蔵がまつられています。むかし、このお地蔵さまは阿賀野川の中で、毎ばん光っていたのを寺のおしょうさんが見つけ、村人と力をあわせて、川の中からさがし出して、寺にまつったと伝えられています。さて、今から230年ほど前のころのお話です。
 この法幢寺の門前の酒屋に、毎日どこからともなく小僧がやってきて、通い帳を持ってお酒を買いに来ました。ところが、この小僧はいつになってもお金を払わないので、ついにその通い帳がたまってしまいました。ある日、お店の主人が少し脅かしてやろうと思い、そばにあった鉈を投げつけたところ、運悪く足のかかとに当たってしまいました。しかし、かかとから血を流しながらも平然として歩いて帰ったので主人が不思議に思い、流れた血の後をたどっていくと、それは法幢寺のお地蔵さまの前で消えていきました。
 「はてはて、不思議なことがあるものだ。」といってお地蔵さまをしらべてみると、お地蔵さまの足のかかとが切り落とされています。「そうか、毎ばんお酒を買いにきたのは、このお地蔵さまだったのか。」主人はあまりの不思議さにびっくり。それからこのお地蔵さまを「酒呑み地蔵」と呼ぶようになりました。
 このお地蔵さまは、よくできなかった味噌をおいしい味噌にかえる不思議な力をもっており、お地蔵さまに供えた酒を味噌にまぜるとかならずおいしくなるといわれ、遠くから酒をもってお参りに来る人が多いそうです。また、寺の境内で、いくら掘っても水が出なかった井戸にお地蔵さまに供えた酒をいれたら翌日、こんこんと清水がわき出したという、いろいろありがたいご利益があるといわれ、いまもお参りをする人でにぎわっています。