阿賀野川のむかし話

鐘の道旧北蒲原郡京ヶ瀬村(現阿賀野市)

鐘の道

 ずっとむかしのお話です。
 金渕に寺屋敷というところがあり、そこに善照寺という寺がありました。この寺は今、水原にある善照寺であったといわれています。
そのころのお話です。
  鐘つき堂の鐘がいつも「福島潟へいごん、いごん」と鳴りひびきます。よく聞くと鐘は「福島潟へいこう、いこう」といっているようにも聞こえました。あんまりうるさいのでおしょうさんは、「そんなに福島潟へいきたいか、いきたきゃいけ。」 と鐘をどなりつけました。
 すると不思議、不思議。鐘はたちまち、すとんと落ちて動きはじめたではありませんか。
 鐘が動くとその重みで道が掘られ、川のようになりました。これが善照寺の前の川、駒林川になったといわれています。  福島潟へ向かって進んでいくうちに鐘は動きつかれて、途中でひと休みしました。そのとき、川で赤んぼうのおむつをせんたくしていた女の人が鐘をみつけて、「これはせんたくもののよいおき場所ができた。」といって、洗ったおむつを鐘のうえにかぶせてました。すると鐘はおむつをかぶったまま歩き出しました。女の人はびっくりして鐘をおいかけ、おむつをとりもどそうとしましたが、鐘はそのまま福島潟の中へぼちゃぼちゃと音をたてながらはいってしまいました。
 鐘はその後、ときどき水のうえに姿をあらわしましたが、その頭にはいつもおむつをかぶっていたそうです。