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いいでの伝説

『兄弟話』(小国町)

兄弟話

 むかしあったけど。

 あるどこに大勢の子ども持ったじんつぁとばんつぁいでやったど。子ども大勢のために、働いても働いても身上はよくなんねがったど。そしてはぁ、とうとうはぁ、子ども大きくなったども、何にも与えてらんねで死ぬようになったずも。

 そん時、父親、子ども皆集べて、「お前だには何も残してくれっこと出ないようなもんであったども、おれぁ金甕、裏の畠さ埋めておいたから、どこだなんて教えねども、お前だで一生懸命で、畠、隅まで掘ってみろ、そうすれば、出はっから」 て、こう言うて死んだど。そうすっど兄弟ではぁ、一生懸命で、毎日、「三尺も深く掘んなねぞ」て教えたど。そして一生懸命で掘って行くども、なかなか出ないずもの。その金甕。そうすっじど一人の兄弟、「おらはそんなことやめた」て、別な仕事についてしまったど。

 そのうちにまたその別な兄弟、「明日も掘っても出ないと、今日も出なかったし」一人やめて二人やめして、とうとう辛棒つよいのが一人になったど。そして隅から隅まで掘って、掘った土も唯置かんねから、耕したわけだど。そしたら野菜でも何でもよく出来るど。そして終る頃になったとき、その息子は気付いたど。「父親の言うたのは、金甕ではなく、土を掘れば掘るほど作物がよく出来ると、こういう教えであったな」で、気ぃ付いて、それから一生懸命で百姓に精出したために、大金持ちの長者になってあったけど。んだから人間て真面目に一生懸命働くもんだど。むかしとーぴん。