いいでの伝説

『慶次之介と玉川太郎』(小国町)

 慶次之介は(1)下滝部落の、丸山という山の中ほどに岩の─人間の顔にたとえれば、鼻のように出っぱったところ─洞穴に住んでいて、山でも川でも上手であったというので、今でも部落の人々は山の神のように信仰をして、旧二月十七日にお祭をして、そこへお詣りに行く。
 けれど、出っぱっているので、風当たりが強く、雪が積らず、とても岩穴は誰一人見た方がないそうです。その下でお詣りして帰る。年々そうなそうです。そして、部落の言い伝えには、金の茶釜があると言うんだそうです。
 玉川太郎との喧嘩は、太郎が(2)玉川の川にヤナのようなしかけで、真ん中を水を通して、そこへドウと此処では言う、細い木で編んで丸くしたものをつけ、魚を取る。それを作って置いたのから、慶次之介が魚をそっととって逃げようとしてるところを、太郎が見つけ、怒って追いかけては、石を投げつけ投げつけした慶次之介は、ぶっつけられては大変と、駈けて駈けて、下滝のところを、五あごにかけて、その次の山を駈けずって、これは駈けずり山という。慶次の岩屋に逃げ込んだ。
 今でも岩穴の下に山菜取りに行くと、カランカランと音のすることもあるそうです。(川崎みさを)

注(1)下滝部落(小国町津川の滝部落)
注(2)玉川(小国町玉川)

おわり
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