ほくりく学ぶくん通信
ほくりく学ぶくん通信
川を見直して、川から学べ!川とともに地域がある“発見”と“学び”の宝庫を活用しよう
当たり前の素材(かわ)から、新しい発見を促す“気付き”の機会をいかに生み出していくのか
事例1 黒部市立若栗(わかぐり)小学校
黒部川の恵みがわからなかった子どもたちが、いま積極的に動き出した
野外での体験学習を積極的に取り入れる
 自然や環境、治水、地域の歴史や成り立ちなど、黒部川を素材に幅広いテーマで「総合学習」を進めている若栗小学校では、子どもたちが主体的に学習に取り組み、いきいきとした成果を上げています。それは、子どもたちが主体となって学習への興味・関心を高められる環境が、学校全体に醸成されているからなのかもしれません。たとえば、6年生は流木、5年生は水生昆虫、4年生はメダカの観察、というように、全学年にわたりテーマが異なる「黒部川探検」や「手作りビオトープ」(昔の田んぼづくり)での水生生物調査など、野外・校外学習が継続的に行われています。そこでは、子どもたちが体験を通じて学び取れる、自然のフィールドで得られた「発見」や「驚き」の大きさだけではなく、一つの学習テーマから自然の体系や連鎖、構造の発見へと発展できる進め方が重視されています。教師は地域の人々や諸団体と連携を取り合い、子どもたちが黒部川が日頃の生活にどのように関わっているかに気づき、理解できる機会の提供に務めているのです。
「学習の生活化」がより深い理解を生んだ
 川は地域の生活や文化に深いかかわりを持っています。とくに黒部川扇状地という日本でもたぐいまれな大地をつくりあげた黒部川には、昔から地域への恵みをもたらしてきた一方、数々の大水害を引き起こしてきたという歴史があります。その結果、先人の知恵で生まれた「霞堤」など、学習の素材も豊富にあります。
 しかし、水害や水で困った経験のない現代の子どもたちにとって、黒部川の存在は当たり前すぎて関心が薄く、「学習対象になり難かった」と校長の勝田栄造先生は振り返ります。そこで考えられたのが「学習の生活化」という観点です。
 たとえば、黒部川の水量は降雨や降雪によって日々変化しています。そこで、そのことを理解するために雨量測定を毎日行うことにしました。その記録は子どもたちの手によって、国土交通省黒部工事事務所のホームページに毎日書き込まれています。夏場、雨が降らない日が続いた時は、「先生、僕らの仕事がないよ」と子どもたちががっかりするほどだったといいます。要はテーマの与え方なのです。
「いま、子どもたちの関心をいかに堤防に向け、治水を考えてもらうかに腐心しています」という勝田校長の狙いは、堤防が地域の暮らしを守ることだけではなく、堤防を築いたり維持管理する人がいることにも気付いてもらうことです。つまり、子どもたちの職業観の醸成にも結び付けていこうという狙いです。「自覚を育てることが目的。先生はあくまでも相談役であり、学習は子どもたち同士で」。「総合学習」が本当の意味で定着するためには、学校側でも、それを支援する地域の人材・団体との連携がいっそう重要になると、勝田校長は考えています。
■毎日の雨量観測とホームページの更新作業
雨量観測は晴雨に関わらず毎日欠かさず行われています。測定結果は、国土交通省黒部工事事務所のホームページにアクセスして、毎日書き込んでいます。このホームページ上には流域の他校や主要観測点のデータもわかり、比較することができます。
黒部工事事務所 http://www.kurobe.go.jp
「世界水プレフォーラム」では、さまざまな学習成果をポスターにして発表しました
 
国土交通省北陸地方整備局