ほくりく学ぶくん通信

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VOL.20 南魚沼市立後山小学校総合学習〜治水・利水の大切さを学ぶダム見学〜

ダムの役割を知るために 外と中から三国川ダムを探検した。

 

治水・利水に役立つ三国川ダム
ダム管理の核・操作室を見学する
ダム管理の核・操作室を見学する
ダム地下を流れる水のビデオ映像の迫力に見入る
ダム地下を流れる水のビデオ映像の迫力に見入る
 「地域に開かれたダム」の指定を受けた三国川ダムは、信濃川水系魚野川の支流・三国川の上流部に建設されたダムです。しゃくなげ湖の周りには釣り堀やオートキャンプ場、遊歩道などがあり、シーズン中は多くの人が楽しむ場所です。
 南魚沼地域の山々の水を集めた三国川は魚野川と合流した後、信濃川に注ぐ清流です。昔から農業や漁業に利用されてきた川ですが、いったん洪水になると大きな被害をもたらし、また夏の日照りによる水不足も問題でした。
 昭和44年8月、集中豪雨によって起こった洪水で地域は大きな被害を受けました。このような被害をなくすため昭和50年に事業開始した三国川ダムは平成5年に完成しました。ダムは洪水時には下流に流す水量を調節して被害を最小限に抑える機能があります。また、日照りの時期にも安定した水量を下流に流し、水道や農業用水、発電のために役立っています。このように複数の目的を持ったダムを多目的ダムと呼んでいます。
 今回ダムを見学に訪れた後山小学校では、「水はどこから」をテーマに社会科の学習を進めてきました。山から流れ出た水が平地へ下り、水道や農業に利用され、海へとつながっていく。源流から河口までの水の流れ全体を見渡して学習を進めるとき、三国川ダムが大きな存在として浮かび上がってきます。ダムの役割とは? そこで働いている人はどんな仕事をしているの? これらの疑問を現場で解決するため、児童たちが三国川ダムを訪れました。

 

24時間ダムを見守る仕事
正面:非洪水期常用洪水吐(冬〜春に水を流す)  向かって右の丸い所:非常用洪水吐
正面:非洪水期常用洪水吐(冬〜春に水を流す)  向かって右:非常用洪水吐
 ダム管理所は毎日24時間、いろいろな機器を使ってダム内外のデータを集めています。現在のダムの水量はどれくらいか、下流にどれだけ水を流せばいいかといった判断を行います。中でもコンピューター室・モニター室はダム管理の核となる場所で、部屋中の珍しい機器を児童達は興味深そうに見回していました。
 ビデオ見学では、ダム建設を始めるきっかけになった洪水の様子、建設の様子、ダム内部の様子などを学習しました。ダム地下を流れる水の迫力ある映像と音声に、児童たちは真剣な様子で見入っていました。
 管理所の外に出るとダムの雄大な景色が広がります。非洪水期常用洪水吐(洪水が少ない冬期などに水を流す)の上に立ち、欄干からはるか下の水路をおそるおそる見下ろす児童たち。ダムのスケールの大きさが実感できる場所です。
 
地下深い監査廊を歩く
監査廊内の階段
監査廊内の階段
長い監査廊を歩く
長い監査廊を歩く
 いよいよダム内部、地下の見学に向かいます。エレベータに乗って地上から約100m下に一気に降りました。ダムの点検・補修のため、ダム内部には長い通路が通っています。児童達は地上にいた時よりも興奮した様子でざわめきが収まりません。狭く薄暗い通路の見学はちょっとした探検気分のようです。常用洪水吐ゲート室、利水放流ゲート室と進み、水量を調節する仕方が職員によって解説されます。約500段の長く急な階段には驚いた様子で、「急な階段だね」「登ってみたい」といった声が聞かれました。数100mの長い通路を歩いて外に通じる扉を開けるとダム堤体の直下に出て、見学は終わりました。
 
流域の安全を守る仕事の大変さ
ゲート室で解説を受ける
ゲート室で解説を受ける
 今回は三国川ダムを外と中から見学することで巨大構造物の大きさを目の当たりにした新鮮な驚きがありました。普段は入れないダム内部には珍しい計器やコンピューターがあり、地下には見たことのない光景が広がっていました。それぞれの場所での職員による解説は児童の目線に合った丁寧な内容で、ダムの役割を理解する助けになったことでしょう。担当の先生は、流域の安全を守るため日夜を問わず働く仕事の大変さが良く実感できただろうとコメントされました。
 今後は学習の成果を感想文にまとめ、関連する社会科の学習につなげていく予定です。

先生の声

渡辺 正夫校長先生

南魚沼市立後山小学校
渡辺 正夫 校長先生

滅多にない機会 真剣にとりくんだ
 南魚沼の山々に育まれた水が、私たちの利用する水道や農業用水に利用されているという水のつながりをテーマに学習を進めてきました。ダムはその中でも大事な役割を果たしている施設として今回の見学は欠かせませんでした。
 中でもダムの内部見学は滅多にない機会でした。事前の学習はありましたが、現場を見学することでダムの大きさを実感できました。地下深くで大変な仕事に従事している人たちがいるということに触れて、将来こんな仕事に就きたいと思った児童もいるかもしれません。大人の仕事の大変さを体感できたと思います。ビデオから地下見学に至るまで、児童の真剣なまなざしに確かな手ごたえを覚えました。
 管理所の皆様には、地域の暮らしを守るために働く中、時間を割いて同じ地域の子に社会勉強させて下さるというあたたかみを感じました。教育現場の者として大変ありがたい機会でした。