ほくりく学ぶくん通信

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VOL.19 立山町立立山芦峅小学校4・5・6年生総合学習
〜立山カルデラの歴史と砂防工事現場をめぐる〜

昔も今も、人の力によって支えられている“砂防”の現場を見学。

 

トロッコはロッコでも・・・
工事用のトロッコに乗って出発
工事用のトロッコに乗って出発
昔はトロッコが通っていたトンネル
昔はトロッコが通っていたトンネル
 立山から流れる常願寺川(じょうがんじがわ)は、日本最大級の急流河川。かつては雨が降るたびに洪水や土砂崩れを引き起こす「暴れ川」といわれていました。また、1858年の大地震によって大規模な土砂崩れが発生し、今も多量の土砂が不安定な状態で残っています。「砂防工事(さぼうこうじ)」は、不安定な土砂が水とともに一気に流れ出さないよう、砂防えん堤を作ったり、崩れた山を緑化したりする工事です。今回は、普段は入ることができない工事現場を、立山芦峅小学校(たてやまあしくらしょうがっこう)の児童が見学しました。
 防護用のヘルメットをかぶったら、トロッコに乗って出発です。トロッコといっても観光用ではなく、工事の作業員や工事資材等を現場まで乗せていくためのもの。山の勾配(こうばい)がきつく、一度に登ることができないため、トロッコは前進・後退しながらジグザグに進む「スイッチバック」という方法で登ります。立山の大自然の中、ガタゴト音を立ててゆっくり進むトロッコ。その車内では、立山カルデラの歴史や、砂防工事のいろいろな話を聞き、児童たちはメモを取ったり、真剣に耳を傾けたりしました。

 

今も「崩れ」の恐れがある砂防工事現場
「大きいね」「岩が落ちてきそう!」カルデラの壮大な景色を見つめる
「大きいね」「岩が落ちてきそう!」カルデラの壮大な景色を見つめる
 途中、急斜面に横たわる大きな岩を発見。今にも落ちそうな巨大岩に、児童たちも驚いた表情です。これは土砂崩れの跡で、こうした不安定な岩が大小あちこちにあり、作業中に突然落石することもあるのだそう。この土砂崩れは、1858年の大地震が発端でした。「150年も前の地震の後始末を今もしているんです」という言葉に、自然の力の強大さを感じます。工事現場では、作業員の方が手を振ってくれました。危険と隣り合わせの現場で、懸命に働くみなさんの姿が印象的でした。
 
これが日本一の迫力!白岩砂防えん堤
作業員のための「天涯の湯」
作業員のための「天涯の湯」
登録有形文化財に指定されている「白岩砂防えん堤」
登録有形文化財に指定されている「白岩砂防えん堤」
かつてにぎわいの面影を残す立山温泉跡
かつてにぎわいの面影を残す立山温泉跡
作家・幸田文の「崩れ」文学碑
作家・幸田文の「崩れ」文学碑
  トロッコは全長約18km・標高差約640mのコースを1時間45分かけて登り、終点の水谷出張所に到着しました。ここで昼食をとり、今度は歩いて出発です。300メートルほどのトンネルを抜け、見えてきたのは「天涯(てんがい)の湯」。作業員の方のために作られた癒しの露天風呂で、児童たちも足湯に浸かりました。
  その後、高さ日本一(63m)の「白岩砂防えん堤(しらいわさぼうえんてい)」を見学。砂防事業の土台をなす大規模砂防えん堤で、落差・大きさとも大迫力の光景です。また、1969(昭和44)年に閉鎖された立山温泉跡や、作家・幸田文の「崩れ」文学碑なども見学しました。
 
崩れの歴史・砂防の今を知る
みなさんの安全のためがんばっています!
みなさんの安全のためがんばっています!
 今回、多くの見学ポイントをまわった児童たち。工事現場の他にも、この砂防工事が1906(明治39)年に始まったことや、作業員の方は6月から10月頃まで、家族と離れて働いていることなどを知りました。「昔も今も、多くの作業員の方のおかげで私たちの暮らしは支えられている」-そのことを、しっかり感じとることができました。

先生の声

水野敬雄先生

立山町立立山芦峅小学校
4年生担任

水野 敬雄先生

立山カルデラと共に生きる
 「あの岩、落ちてきそうだ!」トロッコ乗車中に見た崖の上の巨大な岩。本校の常願寺川での活動は主に中流だが、今回はその上流である「立山カルデラ」を見学した。
 切り立った断崖。幾重にも連なる砂防ダム。天涯の地と名づけられた「立山カルデラ」。当日はあいにくの霧でカルデラの全容を見ることはできなかった。しかし、時々覗かせる荒々しく崩壊し削られた断崖を目にした子供たちは、自然の凄まじさ、偉大さを強く感じとることができた。
 事後の学習では、山崩れの凄さや岩の大きさ、えん堤の数に驚いたなどの発言があった。なにより、自然災害から自分たちの生活を守るために多くの人が働いてくれていることを知ったことが、今回得た最もすばらしい発見だったのではないだろうか。