既設砂防えん堤のスリット化
スリット化によるメリット
大雨の際に土石流による被害を防ぎ、下流に流れ出す土砂の両を少なくする砂防えん堤。
この砂防えん堤により高い効果を得、自然環境に配慮した既設砂防えん堤のスリット化が計画・実施されています。
スリット化による4つのメリット
- ①水質・底質の改善
- 砂防えん堤の上流に溜まった落ち葉や水が原因となる悪臭の発生を抑制します。
- ②下流域への無害土砂の供給
- 平常時には下流域へ土砂を供給します。
- ③魚道の創出
- 上流と下流の川の流れを連続することにより、魚道を創出します。
- ④渓畔植生の増加
- 砂防えん堤上流の川の流れが固定することにより、渓畔植生が増加します。
スリット化する際の留意点
1.砂防施設の機能に係わる留意点
- ①山脚固定機能
砂防えん堤上流に堆積した土砂が減少すると?
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砂防えん堤上流に堆積した土砂が減少することにより、川沿いの斜面を堆積土砂により押さえる効果が弱くなります。そのため、堆砂区域に地すべり誘発などのおそれがないか十分に検討する必要があります。
- ②下流での河床上昇
洪水の減水期にスリットから多量の土砂が流出し、砂防えん堤下流に堆積したら?
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洪水の減水期にスリットから多量の土砂が流出し、砂防えん堤下流に堆積することが想定されます。下流に保全対象がある場合は、河床上昇による洪水氾濫の危険がないか十分に検討する必要があります。
- ③連続スリット
スリット砂防えん堤を連続して配置する場合は?
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スリット砂防えん堤を連続して配置した際の、それぞれの砂防えん堤の昨日状況シミュレーション計算や水理模型実験による詳細な検討が必要となります。
2.下流環境に係わる留意点
- ①臭気対策及び底質の改善における下流への影響
水抜き暗渠が詰まり、上流側に常に水が溜まると?
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湛水状態になった砂防えん堤の上流側に堆積した落ち葉などによる悪臭はスリット化によって改善されるが、スリット化前の湛水した砂防えん堤上流に堆積した細粒土や難分解物質の有機物等が、スリット解放時に一時的に流出することとなり、流下する量によっては下流の水利用や渓流の環境に影響を与えることが考えられる。必要に応じて土質試験やボーリング調査等を実施して、上流側に堆積した細粒土や難分離物質等の質や量を調べる。
また保全対象の被害想定を行い、砂防えん堤上流の掘削除去や下流での沈砂池設置等の対処方法を検討しておく。
また下流に利水施設がある場合は、流出土砂による取り入れ口の閉鎖等の危険がないか十分に検討する。
- ②魚道効果の維持
スリット化には、 魚道の創出というメリットもありますが?
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流れが速くなったり、剥離流が発生したりして、魚の遡上を妨げることが考えられる。下流との水面の連続性に留意し、本場と副場との水面段差を極力小さくする。副えん堤下流に魚道を設置する場合、魚道の下流端に洗掘による段差が発生しやすい。局所洗掘を見越した構造とする。
- ③適切な維持管理の方策
スリット化したあと、 スリット部が流木等により詰まると?
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既設砂防えん堤をスリット化したあと、スリット部が流木等により詰まるとスリットによる効果を発揮できなくなることが考えられる。スリット砂防えん堤の機能を永く発揮していくためには、スリット部の流木の除去等の適切な維持管理が必要。
スリット化する際の留意点の動画解説
スリット化工事の概要
