河川事業

早出川捷水路事業

早出川は、その源を矢筈岳に発し杉川や仙見川等の支川を合流し、五泉市(旧村松町)を経て市街地の東側を流下し、新潟市(旧新津市)の境界付近で阿賀野川と合流する流域面積264.0km2、流路延長44.8kmの一級河川です。早出川は清流で知られ、魚つりや夏場の水遊びなど、身近なレクリェーションの場として、人々に親しまれています。

早出川はその名が示すとおり大雨が降るとすぐに洪水になる川で、急激に水位が上昇し、また急激に下降するという特徴を持っています。

早出川の災害の歴史は古く3年に1回の作流れは普通のことと考えられていた程絶えず水害に見舞われ、水害は宿命とさえ言われていました。
特に、五泉市街地付近では、川幅が狭く曲がりくねっていて、洪水が流れにくいため、堤防や川岸が欠け込んだり、川の水位が高くなり、水があふれたりする被害が度々発生していました。

  • 早出川捷水路施工位置図

戦後の主要洪水一覧表

発生年月日 主な被害状況 善願水位 善願流量
昭和28年8月 上流越水、一本杉、桑山冠水
昭和31年7月 大洪水で不動橋流出
昭和33年8月 上流越水、一本杉、桑山冠水
昭和42年8月 (羽越水害)市街地湛水 16.12m 1,293m3/s
昭和44年8月 三本木橋被害 15.57m 1,032m3/s
昭和53年6月 堤防漏水多数発生及び市街地湛水 15.50m 862m3/s

早出川の被災状況 昭和44年8月の洪水(旧三本木橋)

これらの被害をくい止めるため、幅200m、延長2,000mの新しい川の開削(捷水路)を実施し、川幅は旧川の約2倍になりました。また内水はん濫を防ぐ排水機場の建設も行われ、平成12年3月(2000年)完成しました。 平成16年7月の記録的な集中豪雨の時も、早出川流域の浸水被害は発生せず、安全度の向上が確認されています。


  • 完成直後の捷水路(点線は旧川)

  • 現在の捷水路(上流から望む)

早出川捷水路改修の変遷


昭和55年

平成元年

平成5年

捷水路事業の目的

早出川は、五泉市街地付近で曲がりくねっていたうえ川幅が狭くなっていたため、洪水を流す能力(流下能力)は、計画高水流量1,850m3/sに対して半分程度でした。この区間での流下能力の増大を図るため曲がりくねった箇所を解消する捷水路事業が計画されました。


早出川下流能力図

捷水路の事業内容

捷水路は川幅200m(旧川の最小川幅は90m)、延長2,000m(旧川2,500m)の新しい川を造るもので大規模な事業となりました。

主な事業内容 築堤 4,050m(両岸)
低水護岸 5,200m(両岸)
高水護岸 1,290m(両岸)
堀削 835,000m3
2橋(県道三本木大橋、市道桑山大橋)
樋門及び機場 1箇所(太田川樋門及び太田排水機場)
総事業費 約200億円
完成年度 平成11年度
関係地権者数 約220名
用地補償面積約37ha(交換用地12haを含む)
旧川の利用 全体面積16haが、公共用地、交換用地として利用されました。
旧川は捷水路敷地となる農地の代替地とするため、捷水路敷地の掘削土を一時仮置きし、捷水路通水後埋め立て、農地を再現しました。
現在、その一部はショッピングセンターとしても利用されています。

環境対策

早出川捷水路では、自然環境に配慮した川づくりにつとめ、親水利用・景観・生態系・植生を考慮し、人工河川的なイメージを和らげるように配慮しています。

護岸は、早出川の玉石に似せたコンクリートプレートブロック(疑石玉石ブロック:早出川で取れた玉石で型枠を作成)と格子状に組んだコンクリートの枠に玉石を詰めた法枠工法を法勾配3割(水平に3mいって1m下がる勾配:通常は2割)で施工し法面の中間に幅3mの小段を設けました。小段より下の護岸は、土砂で覆い10割程度の勾配で施工河床に取り付けて浅瀬のある水際を作り散策・水遊び等、水に親しみやすくしました。

また、捷水路区間が直線となり単調となるのを防ぐため、緩傾斜堤防を施工したり、巨石を配置して魚類などの生息空間を確保したり、できるだけ自然景観と水辺の小動物たちの生息場の確保に配慮しました。


  • 緩傾斜堤防の低水護岸

  • 巨石を配置して魚類などの生息を考慮
低水護岸の標準断面図
低水護岸の標準断面図