滝坂地すべり

地すべりと集落の暮らし

西会津町と滝坂・銚子ノ口

 ここ西会津町は福島県の北西部、新潟県との県境に位置し人口は九千人強、面積は二百九十八平方キロメートルで北に雄大な飯豊連峰を望み、町の中央に阿賀川が流れ、青い空と濃い緑の自然豊かな町です。
 西会津町の中心、磐越西線野沢駅から北へ約四キロメートル地点に、阿賀川を堰止めた上野尻ダムがあります。上野尻発電所、上野尻第二発電所を合わせて六五、五〇〇キロワットの水力発電所です。発電所脇の公園には桜の大木が数十本あり、その季節になれば桜の花が見事に咲いて川面に美しく映えます。
 上野尻発電所からだいたい二キロメートル下流にあるのが、阿賀川の名所である「銚子ノ口」になります。「銚子ノ口」の右岸側が私たちの滝坂です。
 「銚子ノ口」というのは、以前は左岸側に大きな岩があり、この岩を私たちは「ワラダ石」と言っていました。この岩があるために、酒を注ぐ銚子(徳利)の口のように阿賀川が狭かった訳です。
 昭和四十五年にこの「ワラダ石」を含め約一万立方メートルを掘削除去し、撤去した岩は右岸の河岸に地すべりの押さえとして盛土をした訳です。
 「ワラダ石」を撤去するまでは、上流から見ると最初の小滝と大滝しか見えなく、その奥が広く見えることから銚子ノ口と名付けられておりました。それが撤去後の今は、奥の中滝といった辺まで全部見えるようになってしまった訳です。
 この「銚子ノ口」は両岸が岩で、春は若葉に青葉、秋は紅葉と大変綺麗な川です。
 私たちが子供の頃は、「銚子ノ口」付近は生活のためにも非常に大切な場所でした。海からサケ、マス、ヤツメウナギが信濃川、阿賀野川を通って阿賀川に遡上し、それを網ですくい取り、野沢や上野尻の宿場などに売って生活の足しにしていたそうです。
 また、昔から滝坂は山林に恵まれており、林業を生活の中心とした豊かな集落で、今日迄来ている訳です。

滝坂・銚子ノ口