にいがた2kmのまちづくり

にいがた2km未来を語るシンポジウム

日時:
令和5年7月2日(日)13:30~16:00
会場:
新潟市民プラザ
(新潟市中央区西堀通6番町866NEXT21ビル6F)
主催:
国土交通省 北陸地方整備局 新潟国道事務所
新潟市 都市政策部
プログラム
1.にいがた2km(にきろ)とは
発表:新潟市都市政策部 係長 稲葉 一樹
2.基調講演「センシュアス・シティ 都市の本当の魅力を測る」
講師:LIFULL HOME’S総研 所長 島原 万丈氏
3.パネルディスカッション
コーディネーター

株式会社connel 代表取締役 萩野 正和氏
新潟市 都市政策部 小林 愛実

パネリスト

大澤 優月氏(新潟法律大学校3年)※大学生チーム1
後藤 峰志氏(開志専門職大学4年)※大学生チーム2
輪倉 大流氏(新潟青年会議所)  ※社会人チーム1
片桐 誠司氏(マチアケ)     ※社会人チーム2
※各チームのワークショップ成果(PDF:2.6MB)

4.トークセッション
コーディネーター

新潟日報社 執行役員 総合プロデュース室長 大塚 清一郎氏

主催者代表

北陸地方整備局長 内藤 正彦 (当時)
新潟市長 中原 八一

開催状況
会場の様子会場の様子
基調講演の講師 島原氏基調講演の講師 島原氏
パネルディスカッションの様子パネルディスカッションの様子
トークセッションの様子トークセッションの様子
1. にいがた2km(にきろ)とは
発表:新潟市都市政策部 係長 稲葉 一樹
 「にいがた2km」は、新潟駅周辺・万代・万代島・古町をつなぐ都心軸周辺エリアの呼称です。

 現在、新潟市の都心エリアでは、約60年ぶりとなる新潟駅のリニューアルや在来線の全線高架化による南北市街地の一体化が進み、同時に複数の民間ビルの建て替えが行われるなど、都市構造が大きく変わろうとしています。本市では、こうしたタイミングをチャンスと捉え、高次都市機能の集積や魅力の創出、賑わいづくりを、市民や関係団体、企業の皆様と一体で取り組み、「にいがた2km」を「本市経済・産業の発展をけん引する成長エンジン」としていく様々な取り組みを推進しています。

 「にいがた2km」内の、古町地区、万代島地区、新潟駅・万代地区では、まちの目指す姿や方向性を共有しながら、皆さんと一緒になってまちづくりを進めていくため、それぞれ将来ビジョンを策定しています。
 中でも昨年度に策定した、「新潟駅・万代地区周辺将来ビジョン」では、多様な人々が出合い、交流が生まれ、新たな魅力・価値が創造される『人中心のまち』を目指しています。
 これまで主にクルマ中心であった道路空間を、人中心の空間へと転換し、ゆとりや潤いのある歩行空間や滞留空間を創出する「ウォーカブル」なまちづくり」を進めるもので、いま全国的に推進されてきています。

 本日のシンポジウムの主催者である、国土交通省 北陸地方整備局 新潟国道事務所が、新潟バイパスから古町をつなぐ「万代島ルート線」の整備を進めていますが、こうした外郭道路ネットワークが形成されていくと、都心エリアへの自動車流入量が減少していきますので、この「にいがた2km」においても、「ウォーカブル」なまちづくりを進めていくことができると考えています。
 しかし、これからのまちづくりは、行政だけでは進められません。多くの方々から自分のまちについて興味を持っていただき、関わっていただくことが必要です。そうすることで、より「にいがた2km」が魅力的なまちへと成長していくものと考えています。

 本日のパネルディスカッションでは、令和5年3月に行われた、「にいがた2㎞未来トークワークショップ」に参加いただいた、4名の方々から「にいがた2km」の未来に向けたアイデアや思いなど、自由に語っていただきます。どんな意見が飛び出るのか、私も楽しみにしています。

 「にいがた2km」は人中心、まちの誰もがその作り手として参加できることを目指しています。皆さん本日のシンポジウムをぜひ楽しんで聞いていただき、「にいがた2km」を舞台に、自分だったら何ができるか考え、語り合っていただけると嬉しいです。一緒に新潟の未来をつくっていきましょう。

2. 基調講演「センシュアス・シティ 都市の本当の魅力を測る」
講師:LIFULL HOME’S総研 所長 島原 万丈氏

 私はLIFULL(ライフル)という不動産ポータルサイトを運営する会社の社内シンクタンクであるライフルホームズ総研の所長をしています。今日お話しするのは2015年に発表した「センシュアス・シティ・ランキング」に関するもので、レポートはホームページからダウンロードできるので、興味のある方はご覧ください。

 センシュアス・シティ・ランキングとは、直訳すると官能都市評価。具体的には「なんかこの街いいよね」とか「なんとなく合わないな」とかいう、言葉にはできない感覚的な都市の魅力を数値化して都市評価をできないかという問題意識から開発したものです。

 都市の「住みよさランキング」が毎年発表されますが、2018年までは千葉県印西市が7年連続ナンバーワンでした。このランキングの指標は安全安心、利便性、富裕度等です。例えば安心は人口あたりの病院のベッド数や高齢者福祉施設の数、利便性では大型小売店の面積、快適さは都市公園の面積など。それから持ち家比率や一戸あたりの延べ床面積などでも比較されます。そういう街は、数ヘクタールの用地に鉄道を通してショッピングモールと公園と病院をつくって、新築住宅をどかっと供給すればできてしまいます。市街地再開発事業のフォーマットもまさにこれで、日本は都市と郊外を同じものさしで見ているのではないかと思います。

 人口が増え続けている時ならいいかもしれませんが、人口が減っていく中で経済を豊かに回していくためには、新しいアイデアをどんどん出せるクリエイティブな人が集まる都市にしなければなりません。クリエイティブな人たちはショッピングモールや娯楽施設には興味を持ちません。彼らが求めるのは利便性ではなく、寛容性、多様性、アイデアを発揮できるチャンスです。

 センシュアス・シティ・ランキングは、デンマークの都市デザイナー、ヤン・ゲールの考え方を参考に、都市をアクティビティ=動詞で評価します。指標の一つは、人と人との「関係性」の指標。①共同体に帰属していること、②匿名性があること、③ロマンスがあること、④機会があること、と区分し、それぞれの経験ができているかを調査します。もう一つは「身体性」の指標。①豊かな食文化があること、②街を感じられること、③自然を感じられること、④歩けること、という身体の心地よさを感じるアクティビティができるかどうかです。全国の都道府県庁所在地と政令市に居住する20〜64歳の男女18,300人を対象にアンケート調査を行いました。

 この結果、総合1位は東京都文京区。新潟市は134都市中38位でした。8つの指標のうち最も高いのは「食文化が豊か」で14位。一方「街を感じる」(68位)、「歩ける」(66位)の評価が低くなっています。新潟市は車社会的な性格がやや強く、歩行者中心=ウォーカブルなまちづくりに欠けているところがあるといえるでしょう。

 歩行者中心の居心地良いまちづくりの取り組みは、世界中で進められています。日本の事例としては、姫路市がよく知られています。駅から姫路城に続くメインストリート・大手前通りを路線バスとタクシー以外の乗り入れを禁止に。路面を活用した社会実験や遊休不動産を活用したリノベーションまちづくりを進め、まちの魅力を上げました。

 東京大学とマサチューセッツ工科大学がスペインで行った共同研究では、歩行者空間に立地する小売店・飲食店の方が非歩行者空間にある場合よりも売上が高いこと、街路を歩行者空間化すると売上が高まることが実証されています。新潟でもウォーカブルなまちづくりを進め、街の魅力を高めていってください。

3. パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは、3月に行った大学生と社会人のワークショップでグループを代表した大澤優月さん(新潟法律大学校3年)、後藤峰志さん(開志専門職大学4年)、輪倉大流さん(新潟青年会議所)、片桐誠司さん(マチアケ)をパネリストに迎えました。コーディネーターは株式会社connel代表取締役 萩野正和さんと新潟市都市政策部の小林愛実さんが務めました。

小林
ワークショップで出された「にいがた2km」のイメージ、使い方について、それぞれのグループ案をご説明ください。
大澤
ワークショップでは、悪天候の日が多いので万代クロッシング、西堀ローサの地下空間を有効に使いたいという意見が出ました。万代クロッシングは現在ダンスを練習する人たちが使っており、より使いやすくしながら他のストリート系の人たちも使えるように、西堀ローサは昼と夜を分けて活用を検討してはどうでしょう。
後藤
5〜10年後、自分が子育て世代になった時にどんな街に暮らしたいかという視点で話し合いました。やすらぎ堤だけでなく信濃川の水上にも移動販売船や、水に浮くオフィスがあったらいいなと。「にいがた2km」間の移動には、高齢者、障がい者、ファミリー用のカートがあるといい。個人的にはキャンパスが新潟駅南口の側にあるので、駅南のまちづくりも忘れないでほしいです。
輪倉
万代クロッシングの可能性に絞って話し合いました。従来の利用者の利便性を上げたり、アート空間にしたり、また早朝の朝市や朝活など、昼間以外での活用が考えられるのではないかと。私は飲みに行くのは職場周辺の古町。個性的な店がある場だと思います。
片桐
古町は古き良き情緒を残す場所があるのにつながっていません。われわれが考えたのは「野点(のだて)のまち」。みなとぴあ(新潟市歴史博物館)を起点に赤い傘を掲げ、これを目印にしてスポットをつなぎ、歩ける街にしてはどうでしょう。駅から萬代橋を渡ると違う街に入るという変化をつけたいですね。「にいがた2km」は全体で統一したイメージはなく、個性あるエリアが点在している感じがしています。
萩野
「にいがた2km」は、山手線の駅で言えば、だいたい1~2駅分くらいの距離間です。まちの様相やゾーンが変わる距離ですよね。それぞれのエリアの個性を生かしつつ、連続性やまとまりが感じられればいいですね。
「にいがた2km」の中でアクティビティが起こる場、人が集う場としたらどこでしょうか?
大澤
真ん中にある「やすらぎ堤」がいいんじゃないでしょうか。私もよく散歩に行きますし、ミズベリングなどもあります。
片桐
「みなとぴあ」であってほしい。博物館に用がない人でも行けば何かあるという魅力をつくることはできると思います。
萩野
集まった人がまちづくりに参加できるような仕立ても必要ですね。
輪倉
私は青年会議所に所属しているから関わっていますが、現状ではほとんどないのでは?誰でもチャレンジできる仕組みができたら面白いと思います。
後藤
今回、ワークショップに参加して社会人と話せたのは面白かったです。もっとそういう機会が増えたらいいなと思います。そして学生にも伝わる方法で周知してほしいですね。自分のアイデアを一つでも実現したいなと思います。
小林
「ここが好き」というのを表出させる、シェアする場があると良いですね。従来の「まちづくり」への「市民参加」ではなく、自分が好きなエリアがもっと良くなるように、その魅力をみんなでシェアできるようにするという仕組みになれば。
輪倉
今起こっている街の変化を体験できるのはとても貴重な機会で、話し合えるのは今しかないんですよね。
4. トークセッション

 シンポジウムを総括し、新潟日報社執行役員総合プロデュース室室長 大塚清一郎氏をコーディネーターに、主催者を代表し内藤正彦北陸地方整備局長(当時)、中原八一新潟市長によるトークセッションが行われました。

大塚
先程のパネルディスカッションでは、本当に色々は話が出て私自身とても刺激を受けたのですが、お2人はいかがでしたでしょうか?
内藤
パネリストの皆さんいろんな思いのこもったお話ありがとうございました。市民の皆さんにとっても、伝統を守りながらも新たに作りだす「新潟らしさ」を考えるきっかけになったと思います。
数年後にどんなことができるか、どんなふうに変わっていくのか、皆さんのまちづくりへの関心が「にいがた2km」にとってとても重要であると感じました。
中原
パネリストの皆さんありがとうございました。皆さんの話を伺って、ご自身のアイデアを通じて「にいがた2km」に愛着を持ち、活躍していただけるような環境づくりが重要だと感じました。これらのアイデアが今後プロジェクトやイベントとして形を成し、街に広がっていく姿を想像しながら「にいがた2km」を盛り上げていきたいです。
大塚
お二方それぞれの立場から、「にいがた2km」の将来像や現在の取り組みについてお話しください。
中原
新潟駅周辺から万代地区、古町地区、万代島地区のすべての地区で将来のビジョンを策定しました。「にいがた2km」では「緑あふれ、人、モノ、情報が行き交う活力あるエリア」を創造し、「本市の経済・産業の発展をけん引していく成長エンジン」として、市民の皆さんと取り組んでいきたいと思います。
内藤
都市の中心が弱いと都市全体が弱くなってしまうため、「にいがた2km」はとても重要な役割を担っています。国土交通省でも、万代島ルート線(国道7号沼垂・栗ノ木・紫竹山道路など)の整備を進めることで、中心部へのアクセス向上や人中心のまちづくりなど、「にいがた2km」が皆さんにとっても賑わいや訪れやすさが期待できると思います。
大塚
ありがとうございます。新潟市を訪れる人にとって、「にいがた2km」は街の「顔」。来訪者の評価はメインストリートで決まると言っても過言ではありません。続いて具体的に伺います。まずは新潟駅周辺での取り組みは?
中原
新潟駅周辺では、新潟駅の連続立体交差事業や高架下バスターミナル、万代広場の他、南北市街地を繋ぐ道路整備を進めています。南口広場では、タクシーや一般車の乗降場の混雑、駐輪場の確保など様々な課題があり、国の新潟駅交通ターミナル整備事業「バスタ新潟(仮称)」の上層部活用を含めて、南口広場周辺の将来のあるべき姿を関係者の皆様としっかり議論したいと思います。
大塚
南口はきれいになりましたが、バスやタクシーのアクセス等解決しなければならない課題はありますね。「バスタ新潟(仮称)」は国の事業ですが、いかがですか?
内藤
「バスタ新潟(仮称)」は1階がバス乗り場、2階が待合空間ということで計画されています。最近完成した東京のバスタ八重洲は、バスタ新宿と造りは同じなのですが、飲食店を含む地下街と接続し、バスの待ち合わせ時間を有効に使えるようになりました。「バスタ新潟(仮称)」でもまち歩きやグルメ、ショッピング、イベントなどでバス待ち時間をうまく使えた方が効果的なので、バスタ単体で整備するのではなく、新潟市やいろいろな皆さんと協力して有効利用できるバスタにしたいと考えています。
大塚
パネルディスカッションでも水辺の活用案が出されましたが、やすらぎ堤と萬代橋についてはどうお考えですか?
中原
萬代橋と信濃川は新潟市の重要な財産で、この水辺空間は「にいがた2km」の中でも拠点となる場所、そして「新潟ならでは」の空間です。ただし、やすらぎ堤、万代テラス、ミズベリングは萬代橋からのアクセス、車椅子の方の利用には難があり、どうにかならないかと思っています。
内藤
いろんな方がアクセスできるというのが重要なことです。バリアフリーに対しては配慮していかなければいけないと思っています。萬代橋は国道、信濃川は一級河川、下流は港湾ですから、北陸地方整備局の道路部、河川部、港湾部すべてが関わっている空間です。関係者の皆さんと協力しながら取り組みます。
大塚
ありがとうございます。萬代橋の東西にそれぞれある地下空間、万代クロッシングと西堀ローサに関してもいくつかの活用案が出されました。
内藤
万代クロッシングは平成9年に国道7号の交通渋滞対策と歩行者の安全確保のために設置した地下横断歩道施設です。現在では柳都大橋の開通やスクランブル交差点ができるなど状況が変化してきており、万代クロッシングの役割も変わっていくのかなと思っています。消防設備が無いなどの課題があるのですが、今後皆さんがどう使いたいかに応じて、中原市長とも相談しながら利用方法の検討を進めていきたいと思います。
中原
西堀ローサについては古町ルフルと直結した全天候型の施設として今後も重要なものと位置付けています。ただしその活用については全庁的な検討を重ねているところで、「にいがた2km」のエリアの関わりの中でどういった都市機能を担うべきか関係各所と話し合っていきます。
大塚
最後に「にいがた2km」の未来について一言ずつお願いします。
中原
皆さんとともに「にいがた2km」を盛り上げ、魅力を増し「選ばれる新潟」を目指していきます。
内藤
都市中心部では道路自身がウォーカブル、「ほこみち」といった歩行者中心の空間へと役割を移していくと思います。やすらぎ堤や万代テラスとのつながり、周辺のオープンスペースも含めた賑わい空間の創出も見据えて進めていく必要があろうと思います。この賑わい創出には利用する皆さんの関心が非常に重要だと思っています。
大塚
新潟が大きく変貌していく今、市民一人一人が声を出していくことが50年後、100年後の新潟をつくっていくんですね。ありがとうございました。