平成18年8月30日(水)9:30〜12:00
名鉄トヤマホテル 4F「瑞雲の間」
1.平成18年7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
2.平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果(速報)について
3.その他



評価委員会





第25回黒部川ダム排砂評価委員会における評価
 7月1日から7月3日にかけて実施された連携排砂、7月13日から15日にかけての連携試験通砂、7月15日から25日にかけての2回の連携通砂に関する環境調査結果(速報)から、以下の知見が得られる。
  なお、連携排砂を実施した7月1日から2回目の連携通砂を終了した7月25日までの期間中に、黒部川流域では1000ミリ近い降水量を記録し、断続的に洪水が発生した。
◇水質について
河川では、
  連携排砂においては
    SS(浮遊物質)、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、全窒素および全リンは昨年の連携排砂時に比べいずれも低い値を示しているが、他の過去の連携排砂時の値とほぼ同程度である。
      DO(溶存酸素)飽和率は、出し平ダム直下で一時的に84%に低下したが、直ちに100%前後に回復している。
      SS粒度組成は、出し平ダム直下及び宇奈月ダム直下では、それぞれ昨年の状態と類似している。
    連携試験通砂および連携通砂においては
      連携排砂時に比べSSは低い値を示している。
      BOD、COD、全窒素、全リンについては、連携排砂時に比べ低いか同程度の値である。
      DO飽和率は、100%前後を示している。
      SS粒度組成は、出し平ダム直下および宇奈月ダム直下では連携排砂時に類似している。
  海域では、
      代表4点におけるSS、COD及びDO飽和率は過去の調査結果と同程度である。 ただし、C点では、1回目の連携通砂時におけるCODおよびSSは過去の値に比べ最高値を示している。
◇底質について
ダム湖では、
  出し平ダムにおいては、平成18年5月の定期調査に比べ、連携排砂及び連携通砂後は、COD、強熱減量、全窒素、全リンおよびTOC(全有機態炭素)は低下し、ORP(酸化還元電位)は同程度の値である。また、それらの測定値は過去の調査結果と同程度である。
      宇奈月ダムにおいては、平成18年5月の定期調査に比べ、連携排砂後はCOD、強熱減量、全窒素、全リンおよびTOCは低下傾向にあるが、連携通砂後には、COD、強熱減量、全窒素およびTOCは5月の定期調査結果と同程度となっており、全リンについては連携通砂後に高い値を示している。また、ORPについては平成18年5月の定期調査と同程度である。
測定値全般については、過去の調査結果と同程度である。
    海域では、
      いずれの測定項目においても、これまでの調査結果と同程度である。
◇アユの生息実態調査について
アユの採捕調査によると連携排砂や連携通砂の前後で採捕尾数に大きな変化は見られない。
 以上が現時点における速報値に基づく知見であるが、全調査資料が出揃った段階において総合的に評価したい。
 
○実施経過について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−1−@ 平成18年7月連携排砂の実施経過について
資料−1−A 平成18年7月連携通砂の実施経過について
 
[主な意見]
(委員A)
資料−1−@の4ページで、連携排砂時の出し平ダムで流入量よりも放流量が多いが、流入量が250m3/s前後の時にこのような操作をすることになっているのか。
また、今回初めて連携試験通砂を実施しており、このときの自然流下時間は出し平ダムで4時間、宇奈月ダムで3時間であったが、この時間を決定した根拠は何か。
(事務局)
流入量が洪水量に達すれば、当然ながら過放流は認められないが、ご指摘頂いた時間帯については、流入量が少なく、連携排砂の実施決定前の段階であったため、通常のダム操作の一環で、流入量よりも放流量を多くして水位を低めに抑えるように事前放流を実施していた。
(事務局)
連携試験通砂における自然流下時間については、平成18年度の連携排砂計画では堆砂状況等をモニタリングして決定することとなっている。具体的には、過去の36洪水の波形を用いてシミュレーションを行っており、その結果、500m3/s以下の出水の場合、宇奈月ダムでは、約3時間で流入してきた土砂を排出できる計算となった。同様に出し平ダムでは約4時間となった。
実際、試験通砂中に、ダム下流地点の濁度を監視しているが、その値がおおむね一定値になったことも確認しつつ、自然流下時間を出し平ダムで4時間、宇奈月ダムで3時間とした。
(委員B)
試験通砂後の測量を予定していたが、流入量が多く測量は実施できなかったとのことであるが、その後、測量等を行い、試験通砂時の排出量を算出しているのか。
(事務局)
試験通砂については、当初予定していた試験通砂後の貯水池測量が出来ず、試験通砂前後の土砂動態は把握できなかった。ただし、ダム直下をはじめ河道部において、水質調査等を行っており、試験通砂時の状況については全く把握出来なかったわけではない。
(委員C)
今年の排砂は非常に典型的で、想定されたことが出来たものと思う。今後の課題としては、通砂をどのように扱っていくのかがポイントであると思うが、次の2点について確認したい。
1点目は、7月の梅雨がまだ続いている間は、試験通砂を行っても連続して通砂がくる可能性もあり、7月から8月に通砂回数を多くした方が翌年の排砂量が少なくなり効果的であるという狙いがあるのかもしれないが、もともと試験通砂を想定していた時期はあるのか。2点目は、2回目の通砂は実施決定から4〜5日後に実施しているが、どのような想定からこのタイミングとしたのか。
(事務局)
試験通砂の時期については、排砂通砂の実施期間が6〜8月であり、この3ヶ月間の中で行うこととした。
2回目の通砂のタイミングについては、通砂実施決定後、梅雨前線の南下により、まとまった降雨がしばらく無いことが予測されたため、梅雨前線が北上しまとまった雨が期待できる時期を待って実施した。
 
○環境調査結果(速報)について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−2−@ 平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果(速報)について
資料−2−A 平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果(速報)データ集
 
[主な意見]
(委員D)
硫化物の測定方法については前年度と同様な方法で行っているのか。また、アユの採捕調査で6月6日に781尾が採捕され、それが天然遡上群ではないかという説明であったが、体長組成等の根拠があってそのような判断をしたのか。
(事務局)
底質調査については、採泥したものを全層攪拌して実施するというのが連携排砂実施機関の方法であり、これに対し、水産試験場では、表層5cmの試料を採って分析するという方法としている。今回示しているデータについては、従来から連携排砂実施機関で実施している方法で分析したものである。
(事務局)
天然遡上群と説明した根拠については、アユの体長が小さかったこともあり、あくまでも推測ということでご報告した。
(委員E)
昨年は音沢橋など上流部でもアユが採捕されているが、今年は上流部での採捕がなく下黒部橋と四十八ヶ瀬大橋だけで採捕されているような状況であるが原因は何か。
(事務局)
昨年度の放流は頻繁に実施されていたが、放流は下流から上流、全川にわたって行われている。そういう点で、権蔵橋や下立地区でも採捕されたと考えている。それに対し、今年は今回までの調査期間においては、放流は6月14日が最後であり、それ以後実施されていない。このような点から、もともと天然遡上アユの多い下流側で特に採捕数が多かったのではないかと考えている。
(委員長)
アユの採捕調査については、昨年と比較してみると、今年度はやや採捕尾数の変化が少ない状態になっている。それから、硫化物の分析方法については、今回は、同一の試料で全層と表層だけの2種類の採取方法を実施機関で行っているが、それらの点について、次の評価委員会にデータが提示されることから、そのときに十分検討をお願いしたい。
(委員F)
資料−2−@の15ページと16ページについては、排砂・通砂1日後の調査を含め、どのように変化しているかを非常に良く表している。今後も、このようなわかりやすい資料づくりに努めていただきたい。
(委員A)
今年は2回の連携通砂と連携試験通砂を実施しているが、1回目の連携通砂時にSSが高くなっているが何故か。
(事務局)
細かい分析はまだであるが、1回目の連携通砂の実施決定から自然流下を実施するまでの間に、比較的大きな洪水が2度発生しており、その影響ではないかと考えている。
(委員G)
連携排砂では、長期間にわたり溜まったものがダム下流に排出されることになるが、BOD、COD、全窒素、全リンなどの指標を見ると、出し平ダム下流よりも宇奈月ダム下流の方が、観測最大値が少し高くなってきている傾向がある。その原因が黒薙川なのか、あるいは宇奈月ダムに溜まったものなのか、今後注意する必要がある。
 
○その他
詳しくは以下の資料をご覧下さい
参考資料2 連携排砂及び連携通砂実施時における魚の退避場(やすらぎ水路)の効果調査について
参考資料3 連携排砂及び連携通砂実施時における濁水耐性調査(黒部川内水面漁業協同組合調査)について
 
[主な意見]
(顧 問)
やすらぎ水路の調査結果から、どのような水路が設計上望ましい形状なのか。
(事務局)
排砂中に上流からの流入水が停止するようなところよりも、湧水がある場所の方がより適切であると考えているが、今後、さらに詳しく分析をして参りたい。
(委員E)
やすらぎ水路は黒部川の生態系を考える上で、洪水や排砂時に魚が待避できる場所が必要なのではないかということで造っており、排砂時に用水が止められ、やすらぎ水路内の流水がなくなるということまでは想定しないまま設置した側面がある。このため、用水に頼っているようなところでは瀬切れが発生している。その点、村椿と五郎八では湧水もあることから瀬切れすることがなく、待避場所として十分に機能しているのではないかと評価している。今後も整備するのであれば、このような条件を持ったところで実施すべきである。
一方、排砂時に魚を含めた生物がどのような影響を受けているのかという点は、排砂を始めた当初より非常に興味あるところでもある。生物の調査は非常にやりにくく、アユの調査にしても排砂の前と後、流況が安定した時を見計らって調査を実施しているため、調査そのものがかゆいところに手が届かないような感じがある。そういった意味でも、黒部川内水面漁協において今回の調査に踏み切ったことについては、まさに排砂のまっただ中で魚がどのような影響を受けるか把握しようとしたものであり、大英断であったと思う。
ただし、調査内容に関しては、もう少し厳密に実験計画を立てて実施しないと、本当に濁りの影響で死んだのかを把握することは難しいと感じる。
実際、濁りが出てきて魚はどのような行動を取るのかという調査については、連携排砂実施機関で今までも実施してきているが、今回内水面漁協で実施したような調査について、是非とも連携排砂実施機関側で試してみるべきであると思う。内水面漁協も連携排砂実施機関と協調して行いたいとのことでもあることから、実施方法についても広範囲に聞き取りを行いつつ実施しては如何か。
(事務局)
実施機関としても、調査の信頼性や関係機関・関係団体との協調の上でも、適切な方法で検証する必要があると考えている。したがって、内水面漁協からの話を聞くとともに、評価委員の方々からのお知恵を借りながら、来年度に向けて調査計画を立案したいと考えている。
(委員A)
内水面漁協が実施した調査と同様な調査を実施するのであれば、やすらぎ水路でも実施するなどカゴを入れる場所を何点か変えて調査する必要があるのではないか。
(委員長)
内水面漁協の調査と同様な調査の実施に際しては、もう少し客観性が得られるような形で、専門家の意見も聞いて行っていただきたい。
(委員B)
内水面漁協で実施した調査手法については、やはり逃げ場がないということ、川の中にカゴを入れるということで流速の問題も考えられる。また、種苗性ということも考えなければならない。このようなことから、ある程度のサイズをきちんとそろえるなりの客観性の高いデータが得られるように工夫しないと、調査結果の評価が困難になる可能性がある。
(委員E)
排砂の影響なのか、それとも自然出水による濁りの影響なのか、同じ濁度ないしSSの時に排砂の時と排砂でない時の違いがあるのかどうか、このような点についても留意しながら調査計画を検討いただきたい。
(事務局)
いろいろなご意見をいただき、来年度の調査計画を立案していきたい。
 
○平成18年7月連携排砂及び連携通砂に対する評価について
   [評価(案)について委員長より説明]
 
(委員長)
今回の評価案について、ご意見がありましたらお願いします。
(委員E)
アユの生息実態調査について「連携排砂や連携通砂の前後で採捕尾数に大きな変化が見られない」との表現であるが、採捕尾数には誤差の問題も含んでいることから「大きな変化」というのが意味を持つのか、非常に微妙な表現である。
(委員H)
今回の海域底質データについて、「底質分析をどのように評価するか」という問題で議論がある中では、「これまでの調査結果と同程度である」との表現は、単年度での影響評価ができていない、と言うに等しいので、疑問が残る。
(委員D)
この評価文の前段に、今年の連携排砂・通砂時で、連携試験通砂を初めて実施したこと、黒薙川での崩壊により連携排砂・連携通砂中も濁流が流出していたこと等、特徴などの記載も欲しかった。
(委員長)
只今の皆様から頂いた意見につきましては、次回の評価委員会で考慮していくこととし、今回の評価委員会における評価については、お手元の評価案の形で、まとめさせて頂きます。
(各委員)
了解。
−以 上−

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