金沢河川国道事務所

白山の成り立ち

主峰(しゅほう)の形が違う理由

 白山は御前峰、剣ヶ峰、大汝峰の3つの峰から構成されています。しかし主峰がありません。日本を代表する山としては珍しいことですが、その成り立ちを知ると、きっとあなたも納得されることでしょう。
 山の姿をじっと眺めてください。峰を構成する稜線に目をやると曲線と直線が混じり合っていることが分かります。シャープな剣ケ峰と御前峰、丸みをもった大汝峰。稜線はつながっていても山の表情に違いが現れています。
 実はこれらの峰の年齢はみな違うのです。一番若い剣ヶ峰、年長は大汝峰です。その年代差は10万年以上。最も若い剣ヶ峰の誕生は今からおよそ2,900年前のことです。さらに地形を形造る地質にも違いがあります。
 大汝峰は10〜14万年以上前に噴火した古白山火山が侵食作用を受け、丸みのある姿になりました。その後、今から4〜5万年前に新白山火山が誕生。およそ4,500年前に山体の頂上部が東の方へ向かって大崩壊を起こすと、ほぼ南北にわたって馬蹄形をした尾根ができあがりました。それが御前峰です。そしてこの崩壊の後、凹地に現れたのが剣ヶ峰です。稜線が荒々しく鋭い印象を与えるのは形成年代がずっと新しいからで、こうした成り立ちが地形の多様性を生み出しています。

柱状節理(ちゅうじょうせつり)

 白山の火山活動のダイナミズムを目の当たりにする証拠が登山道から見られます。柱状節理です。一見すると切り立った岩肌に見えますが、実は噴出した溶岩が急速に固まり、冷えて収縮する際、垂直方向に割れ目ができて、いくつもの柱が束になったような形になるものです。中飯場付近から柳谷の対岸斜面を望むと、上の方に見える岩場がそれです。


柱状節理
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自然の変化に富む理由(丸い石)

 

丸い石
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遠目には一つの山に見えていても、山の所々が歴史的にも組成的にも全く違うのが白山です。白山は堆積性の地層に火山活動が加わり、二つの異なる生い立ちが一つになりました。それが地形的にも自然の上でも変化に富んだ姿をしています。
 ほぼ山頂近くの黒ボコ岩付近に露出している丸い石の地層。足下にそれらが散らばっている様子はさながら砂利を敷きこんだように見えます。しかしその小石は驚く程磨かれていて角張ったところがありません。地層のある付近は、かつて湖の底でした。石は水に流されて転がり、互いにぶつかり合って丸くなっていったのです。今からおよそ1億7千万年前のことでした。やがて造山活動運動が起き、その湖底は地表に現れます。砂岩や頁岩など堆積性の地層で覆われている部分にはそうした歴史があります。白山で発見される生物の化石は、湖があった時代の名残なのです。
 火山活動は周囲に特有の形も残しています。地表に流れ出た溶岩が急速に固まって出来た柱状節理。溶岩流の痕跡をとどめる大白川付近の地形。荒々しさと同時に緊張感溢れる造形を作り出しています。
 ふもとから中腹にかけ地表をおおう様々な種類の植物。高度が増すにつれ植物層は草丈が低くなり、そこに岩肌も見え始めてきます。白山は1億年を超える古い時代の地層と、30〜40万年ほど前からの火山活動が加わり、変化と起伏に富んだ姿となっていったのです。