10月16日(日)富山県魚津市ミラージュホールにおいて

「富山県下水道シンポジウム」
 下水道“新時代”〜富山湾の恵みを永遠に〜

を開催しました。

 富山県は水産資源など富山湾から多大な恩恵を受けています。
  この恵み豊かな富山湾を次世代に残していくために下水道は大きな役割を担っています。
 しかし、下水道の存在は住民の皆様からはなかなか見えにくい面もあったのではないでしょうか。
  一方で、富山県の下水道では処理水の融雪や冷暖房への利用や光ファイバーの利用など新たな取組を多く行っています。
  私たち下水道関係者はこのシンポジウムを通じて住民の皆様に下水道の必要性と新たな面を知ることによりサプライズ(驚き)を感じていただきたいと思いま した。

 当日は250名近い市民の皆様に参加戴き、会場はほぼ満員となりました。
 大変多くの方にご参加いただきありがとうございました。

 今回は当日の内容をご報告します。


特別講演「ふるさとが、旅が、おしえてくれた自然の恵み」
俳優 黒部進さん

 基調講演を俳優の黒部進さんより戴きました。

 黒部進さんは1939年富山県黒部市生まれ、 1961年東宝映画「暁の合唱」でデビューし、1966年に「ウルトラマン」ハヤタ隊員として出演、全国的な人気を呼びました。
 現在も放映中の「ウルトラマンマックス」にご出演中です。
 この他、テレビ番組(ぶらり途中下車の旅)、映画(キングコングの逆襲、ゴジラVSモスラ)CM出演(タマノイ酢、キリンビール、吉野屋)などでも活躍。また、 『ウルトラ旨い!愛と正義の大人の食卓』(ワニマガジン社、2001年)、『ハヤタとして、父として』(扶桑社、1998年)などの著書もございます。
 趣味のアフリカ旅行・陶芸・料理でも才能を発揮されています。

【講演要旨】

 富山で生まれ、高校まで故郷である黒部で育ったが、故郷で養った忍耐力のおかげで現在の仕事を続けられているのだと思う。
 水に関する講演ということですが、日本は水の輸出国だと思いますか、それとも輸入国だと思いますか。
 日本は食物を輸入していますが、食物を育てるために必要な水量は膨大であり、これはその水を輸入していることと同じです。
 家族に水の大切さを分かってもらうため、アフリカ旅行に行ったが、旅行中本当に水は大事であると感じた。
 しかし、日本に帰ってくると、その意識は次第に薄れていき、意識を持ち続けることはなかなか難しいことであると感じた。
 今後、水の戦争が起こるのではないか。
 上流の住む方は綺麗な水の恩恵を受け、下流の方は水に対して苦労をする。心配である。
 とにかく水は大切である。
 その意識をもって生活していく必要があります。

 当日はこれ以外にも黒部さんのプライベートな興味深い楽しいお話もいろいろ伺いましたが、それは今後の機会に。


パネルディスカッション
「下水道”新時代”〜富山湾の恵みを永遠に〜」

 富山の下水道と水環境について身近な話題から地球規模の話題、生き物からハイテクまでさまざまな話題でリレ−トークを行いました。
  富山の下水道について考えてみませんか?という提案を行いました。
  下水道について新たな発見があったでしょうか?

【パネリスト紹介】

今回座長をお願いしております、元富山県立大学短期大学部長の高倉盛安先生です。先生は水質の研究を御専門とされておられます。

うおづ女性の会連絡会会長の岡崎明子先生です。
女性参画推進として、文化、スポーツ、ボランディアなど幅広く活動しておられ、ご家庭では下水道に最も近いユーザーである主婦でいらっしゃいます。

北日本新聞社論説委員の楠登先生です。
朝刊コラム「天地人」の担当としてご活躍されております。

ご講演もいただきました黒部進様にもご参加いただきました。

 

富山市科学文化センター館長の布村昇先生です。
水生生物の研究を御専門とされておられます。

国土交通省流域管理官の藤木修様です。下水道行政に携わっておられ、富山県のご出身です。

【シンポジウム要旨】

●高倉氏
それぞれの分野、立場の方から下水道の役割や重要性、問題点についてどのように考えているか話し合いをお願いします。
下水道状況はかなり高度化された安定した状態にあり、汚いというイメージはぬぐい去っていきたいと考えています。下水道は管理によって循環型社会の形成になくてなはらない施設になっています。富山湾の水質を正常な状態にするためには汚水等に対して下水道のルールを守る必要があるのではないでしょうか。
 近年、富山湾のCOD数値が悪化しており、環境基準の達成率が100%から60%、30%まで落ちています。
 これは湾内の表面で植物プランクトンが生産され、有機物量が増えたことが原因と思われます。
 汚濁物だけを浄化する生物処理だけでは対応できないのではないか。植物プランクトンが無機物の形で増殖されるため、そのあたりをハード面で考えていかなければならないと考えられます。
 今回のパネルディスカッションでは、1段目に下水道の役割、重要性、問題点についての話、2段目にこれから下水道はどうなるのか、どのような期待ができるのかについて話をしていきたいと思います。

●岡崎氏
 こんにちは。女性の、ユーザーの立場として、お話をさせていただきます。
 うおづ女性の会では自然、環境保全の啓蒙運動について取り組んでいます。
 魚津は水道水がおいしいため、水をじゃぶじゃぶ使う生活に対して、意識を変えていかなければいけないと思います。
 自然の循環社会が大切なのかについて説明すると、昔はくみ取りトイレで雨が降ると汚水で床下浸水が起こり、痛い目にあいました。
 しかし、近年新築した家のトイレは管理をしていれば快適に生活できます。
 管理費を払うことよりも快適にトイレを使えるほうが魅力的であり、うれしかった。
 安心、安全なトイレを使っており、臭わない、汚くない水洗システムはすばらしい。
 また、台所に立つのは女性だけの時代ではない。生活に関わることは家族みんなで意識をもって協力していくことが必要です。
 だが、家事全体については、一般的に女性の方にかかっているように思われる。家庭から地域に啓蒙していく活動をしていきたいと思っています。

●楠氏
 県民への下水道の認識の浸透状況と、下水道の抱える問題についてマスコミの立場から話をしたいと思います。
 県民への認識状況について、このようなシンポジウムが国、県の主催で開催されること自体、かなり意識が変わってきています。
 26年前に新聞記者になったとき、住民は下水道施設の必要性を分かっていながら、下水処理場の建設のことになると、地元はみんな反対していた時代でした。
 このような下水道施設は住民に嫌われて、反対運動が起こるため、行政は住民、マスコミに情報を流さない時代でした。
 その後時が流れ、国、県がシンポジウムで積極的に国民に説明するようになり、本日の富山県の説明も大変勉強になりました。
 行政の姿勢が180度変わった印象を受けます。
 これは普及率が上昇して、住民全体の協力なくして、水質、環境全体を考えることができなくなってきているからだと思う。みなさんの協力なくして環境の問題、富山湾をきれいすることは考えられない。行政だけでは富山湾の環境問題は考えられない。行政も住民をみて、情報を提供し、環境問題を考える時代になってきている。
 富山県の下水道の説明では、富山の普及率は高い状況にあります。
 あとは、実際に住民の方が下水道につなぎ込みをしていただけるか、住民が行政にいかに協力してくれるか、それによって下水道の普及率は更に上がると思われます。
 富山県は下水道に関して、先進的な取り組みをしていることが分かります。
 魚津市では処理水を融雪水として利用したり、ありそドームの冷暖房用のエネルギーに廃熱を使用しています。
 下水道が単にトイレの水洗などだけでなく、多用途に使われていることがわかります。
 合流式下水道に関して、雨水と生活排水を同じ管で処理するシステムで、富山市と高岡市の一部で採用されていますが、その人口比率は非常に高い。
 下水道のメリットを受けれる人口に対する合流式下水道の人口比率を聞かせて欲しい。
(富山県より合流式下水道を採用している人口は富山市で1万人、高岡市で3万4千人で、合計4万4千人、普及率シェアでは約4% である旨の説明あり。)
 雨が降ると汚水が川に流れる。全国の大都市ではこのシステムが残っており、水質が悪化しています。
 下水道を考えて行く上で合流式の改善を考えていかなければ富山湾の水質改善はないのではないでしょうか。
 また、雨水対策は都市部で大切になってきています。
 富山市でも近年水没があり、県、市の計画降雨量では対応できない場合がある。将来のことを考えて、雨水対策に力をいれてほしい。

●黒部氏
小さい頃、トイレットペーパーがなく、代わりに葉を使用していた。
アフリカでは、糞尿の使い方は実用的であり、牛糞で家を作ったり洗面の水に利用したりしています。
それぞれの国でトイレの使い方、水に対する捉え方があるようです。

●布村氏
 昔は家族みんなで下水さらいをしていました。
 大人も子供も下水を意識していたが、いつのまにかきれいになり、意識が低くなったのが現実では。
 下水道の力を感じたことは、川に鮎が戻ってきた時です。
 川の水質を調査し、下流の水質の方が上流よりも汚いと思っていました。しかし、市や町の水質はきれいで、上流の農村部が汚れていました。
 下水道の整備された地域はきれいでしたね。
 地球の温暖化、異常気象、公害などについて、人間が自然に負荷を掛けすぎており、快適な生活に慣れてしまっているが、行政だけでなく、一人一人が生活も見直すことが必要だと考えています。

●藤木氏
 東京湾では赤潮が発生し、青潮も発生している。富山湾でも同じ兆候がでないかと心配しています。
 普及率について富山県は全国平均よりも高い。各県において普及率には地域差があり、市町村、県が乗り気にならないと進まない。県民性も関係していると思います。
 下水道を整備しても、住民の方がつなぎ込まないと意味がないので、お金等の個人的な問題もありますが、環境のためにもつなぎ込むようお願いします。
 役所が下水道を整備しても、つなぎ込んでいただかないと経営面でも苦しくなるため、つなぎ込んでほしい。
 また、下水道が整備されていない地区は早く合併浄化槽に切り替えるようお願いします。世界から見ると、日本はまだまだ汚水処理整備は遅れています。
 近年の異常気象から見ても、雨水対策は大切であり、浸透施設や貯留施設を考えていく必要がある。また、長期的に見ても、まちづくりをコンパクトにしていく必要があるのではないか。農業等の問題もあるが、人口が減ってきている地域の土地利用を考え、自然を増やす等の浸水、水害対策をやっていくことも必要ではないかと思います。

●高倉氏
 では2段目に入ります。新たな下水道の役割や富山県の下水道に対する期待等についてお話をお願いします。

●岡崎氏
 自分が外国で見てきて、今後の生活に取り入れた方がよいと思うことを紹介します。
 娘がドイツで生活しています。ドイツ人はあまり風呂に入らず、日本は一回着た服はすぐ洗濯をするが、ドイツは衣服を風通しの良いところにつるし何回か着ます。生活習慣や文化、気候は違うが、まねることはできると思います。
 日本では河川が溢れ洪水になると堤防を作るが、ドイツではそのようなことはせず、自然の景観を大切にしている。緑を増やすことで10年、100年前に戻し、緑をふやしていくことを考えています。
 また、川をきれいにしすぎるとサケが帰ってこない、微生物が住めなくなるなどの問題があるため、バランスがむずかしいと思います。
 魚津市は多額のお金で下水道事業をしているが、自分のところだけ整備されているだけでは意味がない。
 なんとか力を合わせて、魚津市全体に下水道網がいきわたり、また垂れ流し状態にある雨水の循環を考えて欲しい。

●楠氏
 下水道の普及率が上昇しているが、行政では縦割りの予算で整備しており、同一自治体でも公共下水道、農排等で格差が生じてきました。
 しかし、魚津市ではそれぞれの施設のつなぎ込みが始まっており、先進的な地域です。
 下水道の問題として、地震があります。
 地震後に食料や水は受け取れるが、下水道が壊れるとどうにもならない。下水道の代わり、水洗トイレの代わりはなかなかない。いかに地震に強い下水道を整備していくかが重要です。

●黒部氏
 私は旅をした海外の状況について話したいと思います。
 アフリカのトイレ事情などはユニークでした。
 やはり水は非常に大切だと思います。
 これを実感するためには、海外の状況はいろいろ参考になると思います。

●布村氏
 私たちは現在便利な生活をしているが、自然と関わることの重要性が言われています。
 下水道の様々な役割について、行政がもっとPRしていく必要があります。
 昔、富山湾は透明度の高い海であったが、今はそうでもない状況です。
 富山は水が豊かであるが、日々の生活から水を大事にする努力していく必要があります。

●藤木氏
 新潟県中越地震において、液状化によりマンホールが浮き上がる現象が起きたが、この対策として管渠を敷設した後の埋戻し材を改良土にするなどの対策をしました。
 現在、液状化対策の技術マニュアルの作成をしています。
 下水道施設に関しては、地震時だけではなく、壊れない施設を目指しています。
 富山県は下水道で先進的な取組を行っているが、そのアピールが十分ではなく、あまり全国で認知されていません。
 どんどん情報を発信し、地場産業に繋げていって欲しいと思います。
 
●高倉氏
 これらの話を元に、さらに下水道に関心をもっていただきたいと思います。
 以上でパネルディスカッションを終了します。

●司会 松岡
 質問はありませんか?

●一般参加者
 藤木管理官に質問です。
 これから高齢化社会になるが、高齢化する前にできるだけ早く下水道の整備を行って欲しい。
 また年金生活になりますので、いかに安く、安全、安心にできるか考えを聞かせて欲しい。

●藤木氏
 大都市以外の地域でこのような声はよく聞く。多くの大都市ではもう下水道の整備はそんなにいらないのではないかという空気が流れているが、それは間違いだと思う。基本的な汚水処理の整備が必要な地域はたくさんある。我々も公共団体に対する助成も含めてがんばっていこうと思う。また、下水道整備の推進に関して役人だけではなく、住民の方にも声をあげていただき、連携プレーでやっていきたい。

 大変、長時間にわたるディスカッションでしたが、下水道ではほとんど始めてのシンポジウムということでパネリストの先生も聴講者もかなりの力が入っていたようです。
 新たな発見はあったでしょうか?
 これを機に下水道に関心を持っていただければ幸いと思います。


特別展示 パネル展
 『新潟県中越地震の下水道被害』

 昨年10月23日新潟県中越地方をM6.8の地震が襲い、道路や住宅など甚大な被害を被りました。
 下水道施設においても阪神大震災以来の被災を受け、耐震対策の必要性が浮き彫りになりました。
   隣県の地震被害から学ぶものは多いのではないかということでパネル展を開催しました。
 


アンケート結果報告

当日ご協力いただきましたアンケート結果のご報告を掲載します。

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当日配布資料

プログラム(PDF形式 4.5MB)

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国土交通省北陸地方整備局 建政部 都市・住宅整備課
   〒951-8505 新潟県新潟市白山浦1−425−2
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富山県土木部 下水道課
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魚津市役所 下水道課
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