マスつき三平
 むかし、小国郷(おぐにごう)の荒川(あらかわ)には魚がたくさんすんでいました。中でもイワナやヤマメといったマスのなかまは名物で、両手でかかえるほどの大きな魚もいました。小国のひとたちは、まるでヤリで突(つ)くようにしてカギにひっかけてマスをつかまえ、それをよその町や村に売ってくらしをたてていました。

 とくに三平(さんぺい)という男がとったマスはだんせん高く売れました。
 なぜなら三平はマスのえらにうまくひっかけるので、魚の身(み)がぜんぜんきずつかなかったからです。

 そのため三平は「マスつき三平」とよばれるほどでした。
 その三平が、とある旗本(はたもと)にめしかかえられて江戸のおやしきにはたらきにでました。
 ある日、主人のおともをして三平がヤリの道場(どうじょう)に行った時のこと。

 主人のけいこおわるまで三平は門の外で待っていました。「エイ、ヤッ、エイエイエヤッ」という声をあげて、中では門人(もんじん)たちがいっしょうけんめいにヤリのけいこをしています。それを見ながら三平は何かぶつぶつとつぶやいていました。
 それを一人の門人が聞きとがめて言いました。
 「これ、何をぶつぶつ言っておるのじゃ」
「へい、そんなやり方ではいけません」
「何をなまいきなことを。それなら中に入って、ヤリを持ってやってみろ」
 そういうわけで、三平は門人たちとのヤリの試合(しあい)をすることになってしまったのです。

 ところが三平の強いこと強いこと、次々に出てくる門人たちはみな一突きでしりもちをついてしまいました。そこへ出てきたのが、お師匠(ししょう)さまです。
 三平はとうとう道場でいちばんえらい人と試合をするはめになってしまいました。2人はしばらくにらみあっていましたが、やがて三平が「エイッ」と一突き。

 するとお師匠さまはふとももを突かれてドシンとひっくり返ってしまいました。
さあ、大変です。いくらなんでもご主人さまの師匠を負かしてしまうのはやりすぎです。ご主人の旗本は青くなって、三平をさんざんに叱(しか)りつけました。

 すっかりしょげてしまった三平はそのまま姿(すがた)をくらましてしまいました。どこへ行ったのかはだれも知りません。

 ふるさとの小国郷にも帰ってはこなかったということです。

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