榧の木の白狐
 むかし、胎内川(たいないがわ)のほとりに大きなかやの木の林があり、1匹の白狐(しろぎつね)が住んでいました。
 ある日、館村(たてむら)の与五郎(よごろう)がここを通った時のこと。犬に追われた狐が逃げてきて与五郎に助けをもとめたので、与五郎はこの犬を追いはらって、狐を林の中へ逃がしてやりました。

 一方、そのころ近江新(おうみしん)に与茂(よも)というお百姓(ひゃくしょう)がいました。与茂の娘はすまよといい、たいへんな美人でした。すまよは黒川藩(くろかわはん)の家臣(かしん)保科家(ほしなけ)に奉公(ほうこう)していましたが、その美しさにおどろいた保科家の息子の良助(りょうすけ)はすぐにすまよを好きになりました。
 すまよも良助を好きになり、2人は恋をするようになったのです。
 しかし、良助の父は、身分がちがうといってすまよを家から追い出してしまいました。親もとに帰ったすまよは良助のことを思いながら毎日に泣いていたのですが、こんなにつらいならいっそ死んでしまおうと、ある夜、家をぬけ出しました。そして胎内川に飛びこもうとしたその時、だれかによってだきとめられました。ふりかえると、それは若い女の人でした。

 女の人は「実は自分も死のうと思ってここへ来たんです。黒川(くろかわ)におよめに来たのはいいのですが、おしゅうとめさんとの仲がわるく、つらくなってしまって」と言いました。
 すまよは自分と同じようにつらい思いをしている人と出会ったことでなかまができたと感じ、死ぬことを思いとどまりました。そして2人はその夜、かやの木の林で一夜を過ごしました。実はその女の人は、白狐が化けていたのです。

 次の日、狐の女はいぜん犬から助けてくれた与五郎のもとをたずね、新潟(にいがた)に奉公に出たいので世話をしてくれとたのみました。
 与五郎は狐の女とすまよを新潟につれていき、大津屋(おおつや)というお店に紹介しました。狐の女もすまよも美しかったので、大津屋の主人はとてもよろこんで与五郎に百両をあたえました。
やがて大津屋に美人がいるという評判がたち、お店はにぎわいました。

 そんなある日、1人のお金持ちがやって来て、2人をぜひうちにいただきたいと言いました。そして大津屋の主人がびっくりすような大金を出し、2人を連れていったのです。
 これはもうかったとよろこんだ大津屋の主人でしたが、跡でお金を調べてみるとすべて木の葉になっていました。
 白狐が化かしたというわけです。

 すまよはその後、山形(やまがた)の商人三郎助(さぶろすけ)と夫婦になり、平和にくらしていました。
 そんなある日、2人で大桜峠(おおざくらとうげ)を通ると盗賊(とうぞく)たちが現れて、三郎助をしばりつけました。そしてすまよをさらって逃げようとしているところへ通りかかったのが、村上城主(むかかみじょうしゅ)本庄繁長(ほんじょうしげなが)の行列です。

 行列の武士たちは盗賊どもをしばりあげ、2人を助け出しました。しかし、行列が通りすぎたあとで盗賊たちは、自分たちが藤蔓(ふじづる)の中にいるだけでしばられていないことに気づきました。
 またしても白狐が化かしたのでした。
 その後、すまよと狐の女を大津屋に紹介して百両をもらった与五郎は大金持ちになりました。
 これも白狐のおかげだと、神社をたてて白狐をまつり、稲荷大明神(いなりだいみょうじん)とうやまって毎日おまいりを欠かさなかったということです。

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