自分を育ててくれた大切なおじいさんとおばあさんをなくしてしまった小太郎(こたろう)。その悲しみを知った犀竜(さいりゅう)は、自分勝手な考えで、ひどいことをしてしまった私をゆるしておくれとわびると、「お前はやっぱり人間の子。おじいさんの言いつけどおり世のため、人のために生きておくれ。わたしも力になります」と、小太郎を自分の背に乗せて、天高く舞い上がりました。
 そして、湖をつっきり、屏風のような山清路(さんせいじ)の巨岩をぶちやぶり、白竜王(はくりゅうおう)と一緒に次々と山をくずし、越後(えちご)のむこうまで川道を作りました。湖の水は、海にむかってながれこみ、ついに底があらわれ、ここに広い安曇平(あずみだいら)が生まれました。
 湖がなくなり、すむ場所がなくなった犀竜(さいりゅう)と白竜(はくりゅう)は、残った力をみんな小太郎(こたろう)にさずけ、「わたしたちはいつまでもお前とこの土地の人々を守っていますよ」と言い残し、松本平(まつもとだいら)をひとめで見わたせる仏崎(ほとけざき)の岩穴に姿を消してしまいました。
 山をもくずす力をもらった小太郎(こたろう)は、有明山(ありあけやま)のふもとに家をつくり、湖の底を平らにならして、田んぼをつくりました。それ以来、安曇野(あずみの)の里ではたくさんのお米がとれるようになり、村人は犀竜と小太郎(こたろう)のおかげで豊かな土地になったことを喜び、小太郎(こたろう)もいつまでも幸せにくらしました。
ーおしまいー
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