大正池の浚渫作業を始めます。

 
 
暖かい日が続いております。
 松本砂防事務所の、民間で言うところの本店(北陸地方整備局)がある新潟市で、1月に雪が積もらなかったのは実に104年ぶりだそうです。長野県下でも今冬は真冬日を記録したのが軽井沢の1日だけだとか。
 しかし、それでも上高地では、ピーク時で−18℃台まで気温が下がり、厳しい環境の中、梓川本川帯工工事が進められています。


 
 1月31日(水)は雪で、明神岳は雪に隠れていました。寒さが伝わるでしょうか?
 雪が降っているので寒そうですが、この日は午前10時で気温は−5.6℃。工事現場付近でも今年はまだ−20℃になった日はなく、例年に比べれば暖かいです。
 でも、暖かいから好都合かというと、そうでもないのです。

 むかし、むかし、東野英治郎さんが水戸黄門を演じていた頃、兵庫県かどこかの造り酒屋にお世話になる話がありました。
「今朝は暖かくていいですね」
 と、水戸光圀が杜氏に声をかけると、杜氏は、
「杜氏にそんなこと言ったら、ぶん殴られるぜ、じいさん」
 と、相手が天下の副将軍だなどと知りませんから粗野な口調で、あまり暖かくなると日本酒が仕込めないことを説明していました。
 それを聞いて、水戸光圀が
「知らぬこことは申せ、悪いことを申しました」
 と恐縮していました。

 昔の水戸黄門は、印籠と由美かおるさんの入浴だけじゃなくて、こういう場面もあったんですね。
 話がわき道にそれてしまいましたが、砂防の場合、暖かいとどういうことがあるかというと、雪崩や融雪による土砂災害などが起きる可能性があります。
 このようなことが起きないように、あまりに暖かかくなると工事を中断するのです。そうなると、工事が予定通りに進みません。
 寒いのは大変ですが、暖かくてもまた困る……自然が相手なので、人間の思うように事は運びません。
 そんな中で、梓川本川帯工工事は、現場の方々の努力の甲斐あって、事故もなく、着々と進んでいます。

    

 今年は比較的暖かいとはいえ、工事現場の地面はカチカチに凍っていました。普通の工事現場だと、重たい建設機械が走り回って締め固められていたとしても足跡くらいつくものですが、この現場の地面はまるでコンクリートのようでした。
 厳しい環境の一端をかいま見ることができました。

                       
         
 
 工事が無事終わり、今春の開山後、皆様が訪れた際には、これまでと変わらぬ姿で、より安全になった上高地にお目にかかることができると思います。