梓川と高瀬川の流域では、むかしからたびたび山やがけがくずれたり、川があふれたりして、人々の生活をおびやかしてきた。いつもはきれいでやさしい自然なのにね。
 なぜ、山や川は暴れんぼうに変身するのかな。その原因をさぐってみよう。
 北アルプスの急な斜面を流れ下る梓川や高瀬川、その支流は流れがきつく、川岸や川底をけずる力、土砂や石を運ぶ力が強いんだ。その力といったら、びっくりするほど。ひとたび大雨がふると、人間の数十倍はあるような巨大な石だって流してしまうような暴れ川になるからこわいね。
・高瀬川観音橋付近(大町市)
 

 川沿いの道を自動車で走っていると、土がむきだしになっている山とか、土砂を押し出しているがけをよく見かけるよね。それに落石注意の道路標識も多い。これは地質が複雑になっていて、くずれやすいからなんだよ。

・奈川 保平付近(奈川村)

 北アルプスと重なるように走っている乗鞍火山帯。そこにある焼岳はむかしから何回も大噴火し、今もたえず白い噴煙をあげている活火山だ。白骨温泉や中ノ湯温泉、葛温泉などはこの火山帯によるものだ。
 焼岳の噴火により、山の一部がくずれ、その土砂が梓川をせきとめてできたのが大正池。もし、押し出された土砂が一気に下流へ流されたりしたら、災害になりやすいよね。
 また、梓川と高瀬川の流域には、火山が噴出した火山れきや火山灰などが広く堆積している。これらの堆積物は水を通しやすく、くずれやすいんだ。そのうえ、火山特有の熱水、蒸気、ガスなどの影響をうけて、とても弱い地盤となっているよ。

・昭和37年(1962)6月16日
北アルプス焼岳が30年ぶりに大爆発(噴火直後、上高地から撮影)
・焼岳の山肌を深くきざむ沢