大断層線が走っている姫川流域は、大地の変動が激しかったために、地質が複雑に入り組んでいる。そして姫川をはさんで西側と東側では、はっきりと特徴がわかれるんだ。
 西側に多く分布する火山堆積物は、水を通しやすく、もろくてくずれやすい性質を持っている。しかも、この地域は地下水が豊かだし、山の斜面は急。だから、大規模な山くずれが起きやすいわけだね。代表的なものは浦川上流にある稗田山の大崩壊だ。
 一方、フォッサ・マグナの北部に位置する東側は、砂岩や泥岩が重なった第三紀のあたらしい地層からなっている。この地層は、地下水が多いと粘土化して、比較的ゆるい斜面でも地すべりを発生しやすく、特に断層に沿った地帯では大きな地すべりを起こしている。小谷村の清水山のようにね。なお、西側の一部でも来馬層の砂岩や泥岩が分布している所では地すべりがみられるよ。
 こうして姫川の流域では山くずれや地すべりによって多くの被害をこうむってきた。しかも、こうした災害によって生み出された新しい土砂が下流に運ばれると、今度は下流で洪水などの災害を引き起こすことにもなりかねないんだよ。