「実践を読んで−ホタルの飼育で地域理解と豊かな人間形成」
岐阜大学教育学部教授 北 俊夫

 糸魚川市立大野小学校の富岳理恵子先生と学級の子どもたちが取り組んだ、総合的な学習「下大野川をホタルの里に」の実践を読ませていただいた。ホタルの飼育に取り組んでいる学校は全国に数多くあるが、本実践から特に次のことを学ぶことができる。  一つは、地域で『ホタルの里』づくりを行っている有志の方から知識と知恵を授かりながら、問題を解決するだけでなく、活動の成果を新聞やポスターにまとめて地域に発信・啓発していることである。「地域に学び、成果を地域に還元する」という、学校と地域との双方向のかかわり合いがつくられていることがすばらしい。子どもたちが地域のさまざまな人たちの温かい支えの中で、生き生きと学び、地域の理解を深めている様子が伝わってくる。  もう一つは、ホタルを育て、地域をホタルが飛びかう里にするために、餌になるカワニナを育て、ホタルを増やすだけでなく、カワニナの育つ川(環境)にすることの大切さを視野に入れて実践していることである。カワニナやホタルの生息地は下大野川にある。そこは地域の人々の安全な生活を守るために改修工事が行われた場所である。人間の命や財産を守る取り組みと、ホタルの生息地の確保という問題、すなわち人間と環境の共生という課題について真剣に考える子どもたちが育っている。  大野小学校では、「自立(ひとりで)」と「共生(みんなと)」と「挑戦(さらに)」の姿が育つ子どもたちを目指しており、このことが本実践の中で着実に実現しているように思う。


 この付近はホタルがすむ川が多くて子どもたちにもなじみが深いテーマです。ホタルがいない川にホタルを復活させようと、子どもたちも幼虫の飼育から成虫、そしてそのペアリングまでのサイクルに挑んでいます。幸い専門家の協力が得られ、子どもたちの活動を支援、見守ってくださいます。

 ホタルが成虫となって光を放ち、飛び回る夏が楽しみですね。さらに調べた川の上流や、ホタルが数多く生息している川の探検活動、またホタルが飛び回る季節の観察会なども学習のクライマックスとして考えられます。
 川の中にすむ生きものの種類によって、その地点の水質を知ることができます。生き物の種類によって、きれいな水、少し汚い水、汚い水、たいへん汚い水の4段階で判定します。この水質の目安になる生き物を「指標生物」といいます。誰でも水質を比較的簡単に調べられるように、指標生物には水に敏感なものが選ばれ、また目で見ることができ、さらに日本全国に広く分布しているものがあげられています。

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