千曲川には現在60種の魚が生息確認されている。しかしこの内訳は在来魚26種、移入魚34種と約6割の魚が人の手により移入された魚である。この移入された魚には外来種が多く含まれており、13種にまで増加している。このように千曲川水系の淡水魚は今や年々変転している状況にある。
千曲川で実際にスキューバ潜水を行い、千曲川に生息するこれら多くの魚がどのような環境を好んで生息しているか、魚類のビオトープについて追跡調査を実施している。その結果、とかく忘れがちなワンド、タマリが生息魚にとっては大変重要な生息域となっていることが判明した。特にタマリは洪水時の避難場所であると同時に避難した魚が取り残される生息場所、子稚魚の生息場所、さらに止水域を好む魚の生息場所となっている。しかし、このタマリに湧水場所の存在の有無により残留魚類の生存に支障をきたす。つまり水温上昇による酸欠、泥土堆積等による水質の悪化など、タマリの水環境の変化に伴い、次の洪水まで魚類にとって生き続けられるとは保障がないのである。
今までの水中潜水追跡調査から湧水の多いタマリでは多種、多様の魚が多くの年齢構成まで生息していることがわかった。また生息魚は水中構造物を生活場所の重要な生息空間に位置付けていることが判明した。
例えば多種の魚が生活の場に取り入れている構造物としては自然構造物では水中倒木、沈木、水中植物(抽水、沈水、浮葉植物)、水際で水面に大きくオーバーハングしている水際植物、転石群があげられ、人口構造物では木工沈床、蛇籠を利用して生活している魚が多い。また、木工沈床でも河床から上部にいくにつれ、階層で生息魚は種や年齢構成を異なっている場合も多くみられ、魚種によっては木工沈床の奥部までの利用が異なっていることも判った。さらに木工沈床も隠れ場、ねぐら場など魚種によってその利用目的も異なっている。
これと同じように水面にオーバーハングした水際植物の下や水中倒木の下でも魚種、年齢構成で利用位置がある程度異なっており、さらに夏と冬の利用方法も異なっている場合が多いことが判明した。
これらの詳細については下記に木工沈床と生息魚の使い分けとして例を示したので参照されたい。 |