「松川流路工」竣工
◆ 福 島 信 行 *

 例年にない早い降雪を見、既に冬のスキーシーズンが到来しはじめた平成14年12月2日に「松川流路工竣工式典」(主催・北陸地方整備局松本砂防事務所)が、松川流路工現地において挙行されました。
松川流路工の概要

 流域面積 58.2ku
 計画対象流量 1/100年確率,920m3/sec
 現河床勾配 1/32〜1/37
 計画河床勾配 1/40〜1/65
 流路工延長 4,550m
 主要施設 床固工16基,帯工9基
        護岸工6,430m,(右岸)3,300m
                  (左岸)3,130m
 事業期間 昭和63年度〜平成14年度
 松川は、白馬三山を源として白馬村の中心部を流れ、多量の土砂流出を伴って広大な扇状地を形成し、過去幾多の土砂災害を発し村民生活に脅威を与え続けてきました。しかしその一方、四季の変化に富む松川の豊かな自然を求めて、多くの人々がこの地を訪れています。
 松川流路工は、地域の人々の暮らしを土砂災害から守るため計画され、昭和63年から事業に着手されました。平成2年に北陸地方建設局の景観モデル事業に認定され、流路工と自然環境の保全の両立を目指し、積極的に松川の景観・親水性・生態系に配慮して事業が進められ、平成14年12月に竣工を迎えたものです。
竣工式典

白馬大橋より上流を望む
 式典当日は、村井、山口両国会議員、国土交通省岡本砂防部長、北陸地方整備局鬼頭局長はじめ県議会議員、長野県、白馬村、地元関係者、用地協力者、施工業者等約250名が出席し、式典並びに松川流路工の竣工を記念し建立された記念碑の除幕と白馬村の村木である「コブシ」の記念植樹等が行われました。
 式典では、長井松本砂防事務所長の式辞、続いて岡本国土交通省砂防部長の挨拶、鬼頭北陸地方整備局長の挨拶をいただき、そのあと村井、山口衆議院議員、長野県土木部長代理平沢姫川砂防事務所長等のご来賓の方々から祝辞をいただきました。
 松川流路工の竣工を村も沿線住民も長年にわたり切望してきました。大雨の度に出水に見舞われ、土砂の流出により河床は高さを増し、濁流の中で火花を発しながらぶつかる石の音は大きく、消防団を始とする地域住民は警戒や復旧作業に走り回る日々の繰り返しでありました。中でも昭和34年のの伊勢湾台風による被害は甚大で、浸水家屋114戸を数え、あふれた水は旧役場のあった村の中心部で胸まで達し、国の災害救助法の適用を受けたものでした。
記念植樹
 しかし、このような荒れ川であった松川も直轄砂防事業が導入され、40周年の節目の年に流路工の竣工を迎え、長年の土石流災害から開放されることとなりました。
 正面にそびえる白馬三山を背に流れる松川の風景は、白馬村が誇りとする景観であり、世界にも誇れる景色であると思っております。この景観と水や緑の自然に溶け込んだ自然石での親水護岸、魚の昇りやすい全断面魚道など、河川環境に配慮され、水とのふれあいを大切にした親しみの持てる流路工に仕上げていただきました。グリーンシーズンには多くの人々が訪れており、豊かな自然を求める観光客の憩いの場となっております。
 また、記憶に新しく忘れられない災害として、平成7年の梅雨前線による災害があります。最大時間雨量59ミリ、連続雨量601ミリに達し、白馬岳大雪渓上部より大土石流が発生しましたが、砂防堰堤と松川流路工はその威力を発揮し、大量の流れに負ける事なく、砂防事業の効果を目の当たりにすることとなりました。白馬村がスキーの村として発展して参りましたのも、山腹が砂防を守ってくれているお陰でありますし、平成10年のナガノ冬季オリンピック、アルペン・ジャンプ・クロスカントリーの会場地でありました当村にとりまして、松川沿岸はシャトルバスの発着場及び駐車場として、大きな役割を果たしてくれました。

記念碑除幕
 思い起こせば今日がありますのも、時の建設大臣・河野一郎代議士や赤木博士の来村の契機をつくられました唐澤俊樹代議士から始まり、前全国治水砂防協会長・唐澤俊二郎代議士、村井仁代議士に至までの中信地区出身の先生方の熱心なお取り組みによるところが大きいと思うのであります。
 流路工は竣工いたしましても、この地における砂防事業の重要性はまだまだ高いものがありますので、引き続き北アルプスを守る砂防事業が、より環境と自然を守る事業として、世界に誇れる展開をなされていくことを望みます。
 郷土を守る、豊かな自然を守る、土砂災害から地域住民を守る砂防事業に今日まで携わってこられた関係の皆様には改めて感謝を申し上げますと共に、今後とも関係者の皆様方のご支援とご協力をお願いいたします。

*Nobuyuki Fukushima 長野県北安曇郡白馬村村長