香りへの意識と”香り環境”について考える〜アロマセラピーのすすめ〜

松本砂防事務所 環境対策課   輪湖 恵美

●アロマセラピーとは
・「アロマセラピー」(aromatherapy)とは、ハーブなどの芳香植物から抽出された100%天然の精油(エッセンシャルオイル)を使って、美容や、心身の病気を治療する方法。アロマ(aroma)はギリシャ語で“香り”、セラピー(therapy)(フランス語ではテラピー)は、“治療”と言う意味。日本では「芳香療法」と訳されている。日本人になじみの深い漢方薬と同様、植物療法のひとつ。
・精油の放つ香りには、花の様なフローラルなもの、森林の様なウッディーなもの、柑橘系の果物の様なフルーティーなものから、薬品そのものと言っていいような刺激臭まで多種多様。香りのもととなるものは、アルコール、ケトン、エステル、フェノールなどの揮発性の高い芳香物質。精油には数十種類から数百種類もの芳香物質が含まれており、各成分には薬理作用がある。
・アロマセラピーの方法は、芳香浴、入浴 吸入、マッサージ、湿布、うがい、などで精油の芳香成分を体内に取り入れる。揮発した精油の芳香分子が鼻や肺胞から芳香分子が体内に入り、血液に混ざって神経系や臓器に作用。鼻から入った芳香成分は電気信号として脳へ伝達され、神経物質を出させる作用をする。マッサージにより皮膚に塗布した場合、精油成分は皮膚の結合組織に混ざりやすい性質があり、皮膚の真皮から血液に入る。

精油使用上の注意点
・100%天然成分とはいえ精油は化学物質。天然成分でも副作用があるため、乱用は避ける。
・植物の成分が非常に高濃度で凝縮されているので、必ず希釈して使用。原液を直接肌に塗布すると炎症を起こす危険性もある。
・要アレルギーテスト。妊婦や乳幼児、高血圧者など体質や体調により使用できない精油あり。
・薬理効果を得ようとしても、嫌いな香りの精油はストレスとなり、良い効果は期待できない。
・使用目的に応じ、精油の構成成分や含有量を考慮し、信頼できるメーカーの精油を選ぶ。

医療現場でのアロマセラピー
・ヨーロッパ諸国では医療行為として徹底したメディカルアロマセラピーの道を歩んでいるが、日本では医療行為としては認められていない。精油も医薬品とは認められていない。しかし、現在日本でも医師などによって医療現場にアロマセラピーを取り入れ、補助医療としての広がりを見せている。
(新聞記事参照)

●香りへの意識と環境
環境省のかおり風景100選と松本市かおり環境都市モデル事業
・環境省、松本市などの行政機関が「香り環境」に関する事業に取り組みを見せる。香りが良好な環境を保つための重要な要素である事が認められ始めたのではないか。
・環境省では「かおり風景100選」の選定。松本大名町通りのシナノキのかおりが100選のうちに選ばれる。
・松本市は環境省より「かおり環境モデル都市」に指定され、環境省の委託事業として、かおり環境の保全と創造、悪臭低減、松本市かおりポイントマップの作成などの事業を行っている。
(環境省、松本市ホームページ参照)

オフィスでの香り環境について
 オフィスに「香り空調システム」を導入する動きが見られる。香りを空間装飾の1つと考えているだけでなく、仕事の能率アップ、快適性や健康を考えた環境づくりと言う事にねらいを置いていると考えられる。

仕事の能率と香り
 オフィスによる香りと環境について研究されている、空気調和・衛生工学会の岩崎基行先生の「香りの効果実験」のデータを参考。(別紙資料参照)

松本砂防事務所での香り環境は?
松本砂防事務所のオフィスの香り環境はどうか?。
・1日のうちで様々なにおいが発生するが、一番強く感じるにおいは煙草のにおいである。
・現状は、外から入ってきた瞬間から常時感じられ、庁舎内に1日いたとき体中に煙草のにおいが付着する。
・多くの人々が働く場所として、全ての人が健康で快適に過ごすことが出来る環境とは言えない。
 原因として、@空調・換気設備も機能不充分で換気が十分にされない。
         A快適で機能的だと感じられる喫煙スペースが十分確保できない。
         B分煙化されていない為、いつでもどこででも自由に喫煙が出来る状態にある。
 などが挙げられる。

オフィスでの香りの注意点
・喫煙者にとって、ストレスの解消、仕事の能率アップ、リラックスのできる煙草も、非喫煙者にとって煙草のにおいは、非常にストレスを感じ、仕事の能率も落ち、体に悪影響を与える公害である。逆に良い香りとされる植物の精油、香水、芳香剤なども用法用量を守れば良い効果が期待できるが、香りが強すぎたり、誤った使用をしたり、嫌いな香りの場合、それは悪臭であり、ストレスとなり体に悪影響を与える。
・多くの人々が働くオフィスでは、全ての人がにおいに対してストレスや不快感を感じないように、快適で健康を保てるような環境づくりがされなければならない。
・オフィスに、ゴミは落ちていないか、整理整頓しているか、ということと同様に、空間に漂う香りもオフィスの印象を決める要因である。悪い香り環境は改善に努めたい。

●まとめ
 近年の都市化に伴い、私達は公害化した様々なにおいにさらされている。また人間の嗅覚の鈍化により、かおり・悪臭の識別感覚の減退を起こし、さらに周囲のにおい環境に対する無関心から悪臭問題が引き起こされている事も考えられている。その中で、「香り環境」という新しい考え方を取り入れ、身近にある良いかおりに気付くことを通して、身の回りの悪い香り環境の改善につなげ、かおりある自然や文化・質の高い生活環境づくりがされることが望ましい。





GoLive CyberStudio 3 にようこそ(http://www.fsinet.or.jp/より参照)


香りと環境

岩崎 基行著(空気調和・衛生工学会編)

本の概要
私達が快適性と健康を保った過ごしやすい環境とは、自然界特に森林のような環境であると著者は考えている。この本では、香りのもつ性質や香りが人に与える影響について説明。加えて、人に好ましいと言える森林のような環境を作り出すための香りシステムについてや、香りシステムの設置方法がオフィスに絞った研究内容で書かれている。

においが人に与える影響について

良いにおいの空間:深く深呼吸する傾向が出て、血液中の酸素濃度が高まり健康によい。

悪いにおいの空間:忌避反応のため呼吸が浅くなり、必要な酸素摂取量が下がり、血液中の酸素濃度が低下する。その結果、血液中のpHが酸性に傾いて、様様な病気にかかりやすくなる。

自然はなぜ人間の身体によいのか?例:森林浴

能動的効果(肉体面):
歩くことで、普段使わない筋肉を軽く汗をかくくらいに使い、その結果全身の血行をよくし、身体各所の疲労度のバランスをとる。また現代人に不足しがちな歩行量を補い老化を防止する。
a.視覚→光の波長を含む木々の緑を眺め、同時に近くの枝葉から遠くの山々を眺めることにより、毛様筋の弛緩・緊張を行い目のつかれをとる。
受動的効果(精神面):
b.聴覚→小鳥のさえずり、小川のせせらぎ、高い枝を抜ける風の音や虫の音などが適度な刺激となって心身の疲れを癒してくれる。特に風による葉ずれ音は、鉄筋コンクリートの室内では含まれていない6000Hz以上の高周波成分を含み、詩人病を予防し、老化現象を防止する効果がある。
c.触覚→さまざまな方向から吹くそよ風が、歩行により火照った皮膚を冷やし、生理的・心理的心地よさを与える。
d.臭覚→木々や草花の発する香り成分が、心理的・生理的にリラクゼーション効果を促す。