用地の事務(権利関係)について

発表者 : 用地課  羽賀 洋
 (補償技術者)

1.はじめに

〜用地課とは?
 主に公共事業に必要な土地を買収等により取得する。また、それに関連する一連の業務(測量、補償金額の算定、交渉、契約、取得した土地の管理等)を 行う部署。

〜今日のテーマは?
 一般の方達にも関係がでてきそうな権利関係について。


2.権利関係(土地)について
    
   イ.真の所有者は誰?

     土地の所有者を確定する基本は登記簿を調べること。
     しかし、登記簿に記載されている所有者と契約しても、必ずしも本当の
    (真の)所有者とはなれないこともある。
(別紙1参照)
 ○登記簿の所有者と契約しても真の所有者になれないこともある場合の例
       ・偽造により所有者となった者と契約した場合  
      ・相手方の錯誤による売買等で所有者となった者と契約した場合
       ・脅迫により所有者となった者と契約した場合         ・・・etc
             
       日本の登記簿には
       「公示力(周りに誰が所有者であるか示す力)」はあっても
       「公信力(それを絶対と信じてよいという力)」はない。
   
      ※公共事業による土地売買だけでなく、一般の土地売買でも同様。
        注意が必要。


   ロ.あの人は今?
 
     登記簿に記載されている所有者が亡くなっていることもあり。
     松本砂防事務所の用地業務では特に頻出。
     亡くなっている場合は相続人を追う(探す)。
     相続の権利を持つ人は誰か。どのように決まるか。

      ○基本的な相続関係の例(別紙2参照)
       ・旧民法の場合は家督相続あり
       ・現行民法の場合
         第一順位( 子 :直系卑属)の例
         第二順位(父母:直系尊属)の例
         第三順位(兄弟: 傍系 )の例


ハ.子沢山は大変?

    用地業務に携わる人間としては相続人が少ない方が「ありがたい」のが本音?

  ○相続関係の整理(放棄等)の例
・遺言状(満15歳に達したものは作成可)
       ・家庭裁判所への相続放棄の申述(亡くなってから3ヶ月以内)
       ・相続分不存在証明書(民法第903条の2項に該当する旨の証明書)
        の例(別紙3参照)
・遺産分割協議書の例(別紙4参照)


3.最後に

 松本砂防事務所の用地では相続の問題で用地買収が困難になることも。
(親族間でのしがらみ等。法律うんぬんではなく日頃の人間関係も大切)
 死後の事を考えるのは縁起が悪い?かもしれないが、是非一度相続について考えてみていただければ・・・。


[ 資 料 1 ]

  〜 契約及び登記をしても所有権を取得できないことがある場合の例 〜


1.偽造の場合

・BがAの知らないうちに書類等を偽造してAの土地をB名義に登記した後、BがCに土地を売り渡した場合


※Cが登記簿を見てBの土地であると判断して、Bと契約・登記をC名義にしてもCは所有権を取得できない。
 (但し、Aがこの事実を知りながら長期間放置しておくとCは所有権を取得できる)

2.錯誤の場合

・Aの錯誤(勘違い)によりBと契約、B名義に登記した後、BがCに土地を売り渡した場合


※Cが登記簿を見てBの土地であると判断して、Bと契約、登記をC名義にしてもAB間の契約が無効なためCは所有権を取得できない。
 (但し、Aが無効を主張しないとダメ)

3.脅迫の場合

・BがAを脅迫して契約、B名義に登記した後、BがCに土地を売り渡した場合


※Cが登記簿を見てBの土地であると判断して、Bと契約、登記をC名義にしてもAが取消をすれば、Cは所有権を取得できない。
 (Aが取消をしない限り、AB間の契約は有効)


  ・・・その他、公序良俗違反等の例あり

[ 資 料 2 ]

〜 相続の例:現行民法(昭和56年1月1日以降)による場合 〜

  ○旧民法(昭和22年5月2日まで)の相続の場合は家督相続制度あり
  ○昭和22年5月3日〜昭和55年12月31日間の民法では途中改正により法定相続分は現行と異なる
  ○配偶者は常に相続人となる

1.第一順位

・配偶者と子(直系卑属)しかいない場合。
 配偶者の法定相続分は1/2
 子の法定相続分は残り1/2を頭数割り



2.第二順位

・配偶者はいても子がいない場合で、父母(直系尊属)が健在な場合
 配偶者の法定相続分は2/3
 父母の法定相続分は残り1/3を頭数割り



3.第三順位

・配偶者はいても子、父母がいない場合で、兄弟姉妹(傍系)が健在な場合
 配偶者の法定相続分は3/4
 兄弟の法定相続分は残り1/4を頭数割り


[ 資 料 3 ]
   

[ 資 料 4 ]