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不動産におけるISM工法の試験実施について
松本砂防事務所 工務課雪渓係 小泉
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1.工事の概要
不動沢は高瀬川本川左支川で、高瀬ダムの直上流にある渓流である。不動沢の上流域はかなり荒廃しており、風化した花崗岩のため、雨とともに大量の土砂が流下している。このため、不動沢を緑化しようとしても風化した花崗岩では通常の緑化は困難である。そこで、不動沢の堆積地において健全な植物の育成のための緑化試験の試験地を造成する工事を行った。
この試験地造成工事の中で、今後不動沢において、砂防ダムや護岸などを施工する際に現地堆積物を利用した工法の基礎資料を得るため、ISM工法(床堀省力化工法)で擁壁工を行ったものである。 |
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2.ISM工法の特徴
ISMとはIn Situ Mixingの略で、ISM工法の特徴としては以下の通りである。
@床堀の減少、型枠と足場の組立解体やコンクリート打設などの人力作業が無い。
A作業内容の簡素化と機械化による急速施工などにより、工期短縮が図られる。
B現地発生土を利用してISM混合体を形成するため、建設残土が減少する。
C施工の省力化、工期短縮、建設副産物の軽減などが図られるコスト縮減工法である。 |
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3.ISM工法の施工方法
セメントと水と混和剤を混合してセメントミルクを製造し圧送するプラントを組立る。30mm以上の石を取り除けるスケルトンバケットをつけたバックホウで1層目の土砂をほぐす。石を取り除いた土砂にプラントから圧送されるセメントミルクを攪拌混合機をつけたバックホウにより攪拌し混ぜ合わせる。
1層目がある程度固まったら(人が載っても沈まない程度)、2層目の厚さ分(今工事は80cm)だけ土砂を埋戻し、土砂とセメントミルクを攪拌混合機で攪拌し混ぜ合わせる。3層目も2層目と同様に施工を行う。 |
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4.ISM工法の結果
今回のISM工法の試験施工に用いた単位セメント量は、200、250、300及び350kg/m3の4種類で行った。現地の堆積土砂の約65%は粒径5mm以下の細粒分で構成されている。ISM工法で行われている他の工事に比べると、この現場は細粒分の多い構成である。単位セメント量が200kg/m3の時の圧縮強度(4週間)では18N/mm2と砂防ダムや帯工などで使用できるような強度(18N/mm2)を発揮した。 |
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5.ISM工法の評価
不動沢におけるISM工法をまとめると以下の通りである。
@地質が細粒分の多い風化した花崗岩(マサ)でも、ISM工法が適用されることが検証できた。
A標高約1300mで施工時期が11月の寒い時期でも施工ができ、所定の品質が確保された。
B1日の打設量が74m3/日と通常のコンクリート打設より打設量が多くできた。
C単位セメント量が少ない200kg/m3でも所定の強度が出ていることから、砂防ダムでも適用される目途がたった。
D工事用道路が4t車しか入れないような箇所でも、施工現場にプラントを設置できるスペースがあれば施工が可能であった。 |
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6.今後の課題
ISM工法を今後使用するにあたっての課題としては、次の通りである。
@施工機械が全国に数台と少ないため、機械調達に苦労した。
A今回の工事のように簡単な単断面であれば打ち継ぎ面処理も少なく施工量を多くできるが、複雑な断面の場合には打ち継ぎ面処理が多くなるため施工ブロック割に苦慮する。
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写真-1 バックホウによる混合 |

写真-2 攪拌混合機 |

図-2 IMS工法の模式図
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