このマップは、焼岳で過去に発生した最新のマグマ噴火である中尾火砕流と同程度の噴火がおこった場合、特に注意を要する「噴石」、「火砕流・火砕サージ」、「融雪による火山泥流」、「土石流」の危険区域を示しています。また、水蒸気爆発も発生します。
 焼岳で想定されるこれ以外の現象にも注意しましょう。 

【噴火の種類】──┬─■水蒸気爆発:マグマの近くにある地下水が熱せられ、大量の水蒸気が急速に生成され
         
        て爆発を起こします。新しいマグマの噴出はないが、火口周辺の岩が砕
         
        けて噴石や火山灰として周辺に飛び散ります。爆風も起こります。同時
         
        に、火山泥流も発生し河川を堰き止める場合もあります。
         
└─■マグマ噴火:マグマが噴出します。マグマ噴火では溶岩流や火砕流が発生します。
                  マグマ噴火に先立って、水蒸気爆発が発生する場合があります。

1962年焼岳
■降灰/噴石
 噴火により火口付近には石や灰が降ってきます。また、火口から離れるにつれて細かな灰が降ってきます。昭和37年の噴石では、火口付近に降った石で2人が負傷しました。火口から離れた上高地付近でも数cmの灰が積もりました。
【噴石到達範囲:マップに記載】

1991年雲仙普賢岳
(尾関信幸)
■火砕流/火砕サージ
 高温の溶岩片、火山灰、火山ガスなどが混ざりあって高速で流れ下る現象を火砕流、溶岩片が少ない高温の砂あらし(爆風)を火砕サージといいます。
【火砕流/火砕サージ到達範囲:マップに記載】

1986年伊豆大島
(白尾元理)
■溶岩流/溶岩ドーム
 火口から出てきたマグマがゆっくりと流れ下る現象を溶岩流、粘性の大きいマグマが火口からゆっくりと盛り上がってつくられた地形を溶岩ドームといいます。

1974年鳥海山
(宇井忠英)
■融雪による火砕泥流
 冬期の噴火により積雪が急速に溶けて土砂や流木をとりこみながら高速で流れ下る融雪による現象です。焼岳では火砕流の発生に伴う融雪による火山泥流を想定しています。
【融雪による火山泥流到達範囲:マップに記載】

上々堀沢の土石流
■土石流
 噴火により斜面に火山灰が降り積もるとわずかな雨でも土石流が発生します。噴火活動後の降雨により発生する現象です。
【土石流到達範囲:マップに記載】

大正池
■天然ダム
 火砕流、融雪による火山泥流、土石流などにより、河川に多量の土砂がたまると天然ダムとなり上流に水がたまることがあります。また、天然ダムが決壊すると下流域に洪水となって押し寄せる可能性もあります
【天然ダムによる水没予想区域:マップに記載】
■その他

・岩屑(がんせつ)なだれ
 噴火によって火山体斜面の一部が大規模に崩れ、多量の土砂、岩石が流れ下る現象です。
・火山ガス
 普段でも噴煙・噴気には、有害な火山ガスが含まれており火口近くの登山道や噴気地帯、温泉でも中毒を起こすことがあります。
・地震/空振(くうしん)
 火山噴火に伴う地震や空気の震えである空振(くうしん)により、建物や窓ガラスに被害が出ることもあります。
・地殻変動
 マグマが地面を突き上げて地面が大きく変形することがあります。