○ご挨拶より

安曇村木挽助役
安曇村木挽助役のご挨拶
 安曇村は、非常に広大な面積を持っています。401.50平方キロメートルという大きな面積を抱えておりまして、大町市、長野市に続いて3番目の面積を保有しています。その98%が山林で占められています。わずか2%のところにちょこちょこと宅地らしきものがありまして、生活をさせていただいているという山の村です。

 村の57%が国立公園に指定されており、自然公園法で厳しい規制の中で環境を守りながら生きています。そして、観光に生きる者が相当ありまして、就業構造率を見ても80%弱が第3次産業です。ほとんど農地というものは無く、3000m以上の高い山が九つあります。全国でもめずらしい村かなと思います。槍、穂高をはじめとする山岳の村としても、アルニピストのメッカとして非常に皆さんから愛されています。
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 ご存じのように上高地と白骨温泉、乗鞍高原という3大観光地を持っています。入っていただけるお客さんも、昔は380万人ということでしたが、近年、経済事情などから非常にお客さんも減ってきて、今は、上高地はだいたい年間180万人から200万人で定着しています。
 白骨温泉は不思議に人気がありまして、だいたい40万人が通例でしたが50万人を超したのではないかという程、特に若い人に人気があります。
 乗鞍高原はずっと冬のスキーが減退してきて、だいたい100万人以上はおいでになっていただいたわけですが、せいぜい70万人ぐらいかなということです。これでも少し増えた数字です。というのは、乗鞍高原にエコーラインとスカイラインがありますが、スカイラインが来年からはマイカー規制になります。マイカーで入れるのは今年だけだということで、毎日ものすごい渋滞でした。その関係でお客さんが増えたかなということです。
 本年度は330万人から350万人のお客さんにおいでになっていただけるという村です。
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 観光が主体の村では、特に景観に気をつけております。私どもは景観条例の制定をして、新淵橋を渡ってからずっと、看板や古い家を撤去して、環境に配慮してきました。ようやく皆さんから理解をいただきまして、電柱の看板を100%撤去いたしました。廃屋もほとんどなくなりまして、目につく廃屋は補助金を出し撤去しました。
 皆様のご協力、あるいは促進する会の活躍によりまして、観光地のごみがほとんどなくなりました。これを先だって鉄道の登山大会で私が自慢に話したところ、観光の係がいて、「あんまり自慢するな」と。「なぜだ」と言ったら「尾瀬はもっときれいだよ」と言われました。(笑)ああ、そうか。尾瀬に負けないように、もっともっときれいにしてもらいたいということで、またお力をお貸しいただければと思う次第です。
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 さて、そのような、いいことばかりではありません。非常に心配の種もあります。いちばん心配なのが、まず河床上昇です。一目瞭然です。もし仮に連続で300mmの雨が降ったら、上高地は全部流れてしまいはしないかということで心配しています。これはずっと、昭和50年代から歴代の村長も心配してきて、国へお願いしてきました。ようやく手をつけていただいて、河床上昇を防いでいただいています。しかもお客さんが年間200万人も入っていただける訳ですから、重機が置いてあれば投書があったりしますので、お客さんが入らない時期に工事をしていただき、シーズン中は止めていただいているのが現状です。

 昭和20年に村内の島々というところでは未曾有の大水害を受けまして、死者も出ました。ほとんどのところが半分ぐらい流れてしまったというような災害があり、砂防について本当に真剣にやらなければいけないと、昭和20年代からお願いをしてきました。今ではほとんど大きな災害の起こらない村になっていますが、さらに安全を願って砂防関係者の皆様に、お世話になりながら守っていただいているという現状です。
 村民はそういう願いを抱きながら、観光事業を進めているということです。

 それから環境省の関係です。こちらも自然保護法の関係でお世話になっていますが、平成7年から「緑のダイヤモンド構想」ということで、着々と施設整備の改良をしていただいています。まず、河童橋の架け替えをはじめに、非常にお金をかけていただきました。平成14年ぐらいまでには100億円という計画があったようですが、それまではかけられなかったようです。それでも立派な、あちこちの遊歩道、橋の類、ビジターセンターが完成しました。

 もう一つ林野の関係、特に治山です。沢から押し寄せてくる土石流が溜まって大きな災害が起きる心配が出ます。それは林野にお願いして逐次やっていただいています。
 このように国に大変お世話になり、国立公園である上高地を守っていただいているのが現状です。

 私ども安曇村は2300人という少ない人口ですが、村民一丸となって、この上高地を守り抜かなければならないという意気込みでやっています。どうぞひとつ、皆様方も安曇村をご贔屓(ひいき)いただきますようにお願い申し上げたいと思います。
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 それから、皆様、せっかくの雨で心を痛めているだろうということで、振興課長が村でつくったバッジを持ってきました。それぞれ皆様にお詫びを申し上げ、上高地、乗鞍、白骨温泉を嫌いにならないように、いつまでも愛していただけるようお願い申し上げまして、私のご挨拶とさせていただきます。