
黒部川は、コアジサシが毎年繁殖する県内唯一の繁殖地として注目されています。
国土交通省黒部工事事務所では、このコアジサシの生息状況の調査を毎年行っており、平成13年度も調査を実施しました。
(コアジサシは、環境省のレッドリストで絶滅の危険が増大している鳥類)
●5月調査 〜河口部で繁殖を確認〜
5月末から調査を行い、河口の左岸側から中央まで伸びた細長い砂州の上と、右岸側の河川内の砂州の上で集団行動をしているコアジサシを確認しました。
また、左岸側の砂州の上では産卵し、繁殖を始めたのが確認できました。
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【河口部コアジサシ営巣状況】 |
【河口部コアジサシ産卵状況(2卵)】 |
●6月調査 〜コロニーの流失〜
6月に入って黒部川では洪水があり、それにあわせて6月19日から連携排砂、6月30日からは連携通砂を実施しました。
5月に繁殖が確認されていた河口の左岸側の砂州は、排砂および通砂実施前の増水により流失し、コアジサシも36羽程度しか確認できませんでした。しかし、上流の国道8号線橋梁の下流の中州で、雛を育てている状況や巣立ちをしている幼鳥を確認しました。
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【洪水前の河口部の状況】
(平成13年6月4日撮影)
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【洪水後の河口部の状況】
(平成13年7月4日撮影)
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平成13年6月20日14時撮影
(流量:毎秒約500立法メートル) |
平成13年6月21日10時撮影
(流量:毎秒約300立法メートル) |
【連携排砂実施中の河口部の状況】 |
※排砂及び通砂は洪水のピーク後に実施しており、河川の流量をより大きくはしていません。
※排砂・通砂前の最大流量:排砂前は毎秒約540立方メートル、通砂前は毎秒約570立方メートル |
●7月・8月調査 〜2回目の再営巣を確認!!〜
増水により数の減った河口部でのコアジサシも再び増え始め、右岸側の河川内の砂州で集団行動をし、産卵や雛を育てているなど、2回目の再営巣を確認しました。
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【水面から飛び立つコアジサシ】 |
【浅瀬で水浴びをするコアジサシ】 |
●調査結果一覧表
調査場所 |
調査対象 |
調査日 |
確認した数 |
備考 |
河口部 |
個体数の確認 |
5月26日 |
130羽 |
1回目の繁殖 |
産卵巣の確認 |
6月1日 |
16巣 |
個体数の確認 |
6月23日 |
36羽 |
コロニー流失 |
6月30日 |
84羽 |
新たなコロニーの形成 |
7月8日 |
87羽 |
7月27日 |
203羽(16羽) |
2回目の繁殖 |
8月5日 |
147羽(21羽) |
国道8号線 橋梁下流 |
個体数の確認 |
6月30日 |
108羽(46羽) |
確認数が減っているのは、繁殖活動を終了し、次の渡り地である南方へ移動したものと考えられる |
7月8日 |
20羽(12羽) |
7月27日 |
29羽(2羽) |
8月5日 |
11羽(3羽) |
※個体数は、調査日における最大確認数。
※( )書きは、内書きで幼鳥の確認数。 |
調査結果によれば、今年も順調な繁殖が確認されています。特に河口部では洪水により、左岸側砂州のコロニーは消失してしまいましたが、右岸側で新たに再営巣し、コロニーがつくられ、雛が巣立っているのが注目されます。
本来、コアジサシは、このような不安定な水辺の河原や砂州のような草の茂っていない砂礫の上で繁殖し生活しており、洪水に対するリスクを背負って生きています。このような洪水が、また逆に良好なコアジサシの生息環境を守ったり生み出しています。このように、自然の営みの繰り返しの中で、コアジサシの種の保続が図られています。 |
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