黒部川Field Reports No.030
黒部川上流崩壊進む!−上流の崩壊地ヘリで調査−


  黒部工事事務所では6月4日、雪解けを迎えた黒部川水系上流の崩壊地をヘリで現地調査しました。黒部川河口近くから出発し、北アルプス中央部に位置する源流の鷲羽岳まで延長約85qを往復し調査しました。黒部峡谷の欅平の西にある小黒部谷で崩壊斜面が広がっていたほか、釣鐘温泉東側の不帰谷では雪渓上に岩や土砂が崩れ、今後の雪解け時に崩壊する危険が高まっていることなどが確認されました。
小黒部谷の崩壊写真
 黒部峡谷の欅平の西にある小黒部谷では、大きな崩壊斜面の中腹が比較的白く、最近の土砂崩れであることをを示していました。沢に土砂が積もり、さらに奥の沢が崩れている可能性も考えられます。
 
上流の硫黄沢の崩壊写真
  欅平に東側から流れ込む祖母谷は、上流の硫黄沢の崩壊が若干進んでいました。9基の砂防ダムでせき止めていますが、崩れた土砂が広がり河原の中を細い水流が走る状態でした。
祖父谷の大崩壊写真

 

  平成7年の豪雨で約32fで地滑りを起こし、土砂が谷を埋めたままの祖父谷は水がせき止められて天然ダムができており、水の威力が増せば土石流になり、欅平を直撃する危険があります。
不帰谷の崩壊写真
柳又谷の崩壊写真
  不帰谷は黒部川本流とほぼ直角に合流するため、流れ出た土砂が度々本流をせき止めますが、今春も谷間の残雪が土砂で汚れ、雪解け時に崩れていたことが分かりました。不帰谷は流域面積の約28%崩壊地となっており、8年から砂防ダム建設に向け調査を行っています。
  黒薙川上流の柳又谷の山肌は全体的に荒れ、崩落の兆候を見せていました。
  黒部川水系では7カ所の大崩壊地が確認されているほか、狭い谷で新たな崩壊個所が増え、定期的に調査しています。
北アルプス中央部に位置する源流の鷲羽岳(2,924m)
  黒部川は、3,000m級の級の山岳を源としており、山地の侵食作用が著しく、加えて基盤が風化を受けやすい花崗岩類により構成されているので、山地崩壊面積の比率が約5%にも及び、我が国有数の比率です。そのため、ひとたび大崩壊が起これば多量の土砂が流出し、下流部一帯に大きな被害を与えてきました。
  しかし、これまでの砂防事業により現在まで計16基の砂防ダムが完成、黒部峡谷の自然に配慮しながら下流域を災害の危険から守っています。現在も祖母谷と黒薙川の2カ所で砂防ダムの建設を行っています。
01/06/15
報告 : 調査課 K . I