黒部川Field Reports No.222
 
 

黒部河川事務所進藤所長と夏期実習生の高櫻琢也君

 8月4日(月)から8月8日(金)までの1週間夏期実習生として、富山県立桜井高校土木科の2年生、高櫻琢也君が黒部河川事務所にやって来ました。実習期間中には、河川・砂防・ダム・海岸の各事業の現場見学や流量観測、採水などの作業に携わってもらいました。
 高櫻君は短い実習期間でしたが、何事にも積極的な姿勢で参加してくれました。ここでの体験を生かし、将来は北陸、しいては日本を担う優秀な土木技術者になってもらいたいと思います。また、黒部河川事務所でも、実習中に出された若く新鮮な意見やアイデアを今後の事業へ取り込んでいこうと思います。
 
 《自己紹介》

 高櫻 琢也(たかざくら たくや) 桜井高校2年
 5日間と去年よりも実習期間が短くなり、気が付けば実習が終わっていました。しかし、そのうち4日間は現場に出かけて、とても密度の濃い実習になりました。黒部河川事務所への実習生は私一人だけなので緊張していましたが、皆さん優しく接してくれたので実習に集中することができました。とてもいい経験になったと思います。
 
 《実習スケジュール》
  8/4(月) 5(火) 6(水) 7(木) 8(金)
AM ・河川現場 ・砂防現場 ・採水作業 ・流量観測作業 ・フィールドレポート
とりまとめ
PM ・ダム現場
・砂防・採水講習
・砂防現場 ・採水講義
・流量観測講習
・海岸現場 ・フィールドレポート
とりまとめ
 
 《活動報告》
 ●1日目(河川現場〜ダム)

黒部川下流のピストル水制 堤防を侵食から守る縦工

 黒部川では、洪水などの被害を食い止める工夫がたくさん見られました。川の流れが直接堤防にぶつからないようにする「水制」や、堤防や高水敷を侵食から守るための「縦工」などが見られました。ピストル水制の大きさには驚きました。

たくさんの水を貯められる宇奈月ダム

 宇奈月ダムでは、洪水時に水を貯め込み、安全な水量に調整して下流に放流しています。荒廃が激しく、地盤が崩れやすい黒部川では、ダムに多量の土砂が貯まってしまうため、出し平ダムと全国初となる連携排砂を実施しています。ダムに貯められた水の量の多さと、間近で見た時のダムの高さや大きさはとても迫力がありました。
   
 ●2日目(砂防現場)

祖母谷の砂防堰堤

 黒部川は今までたくさんの土砂災害に遭っていて、付近の住民の生命を脅かし、水田や漁業にも多大な被害を与えていました。砂防事業はその災害を抑えるために行われていて、砂防堰堤は大切な役割を果たしています。

砂防堰堤の役割

 砂防堰堤の働きは、まず上流から流れてきた土砂を貯め込みます。これにより川の勾配がゆるやかになり、流れのスピードを落とします。そして洪水時にも大きな岩や土砂を止め、大洪水や土石流のエネルギーを小さく押さえ込みます。祖母谷という谷には9つもの砂防堰堤が連なり、土砂や水の流れをコントロールしていました。
 トロッコに乗って行った黒部峡谷はすごく険しい所で、実際に洪水が起きたところをその場で想像するのが恐いくらいでしたが、それ以上に砂防施設が立派だったので安心できました。
   
 ●3日目(採水作業)

黒部川での採水作業

 採水作業の現場では実際に水をくみ上げて、現地でできる簡単な作業の手伝いをしました。橋の上からバケツで水をくみ上げたり、気温や水温、水の色やにおいなどの調査を手伝いました。
 細かい成分などは水を持ち帰って詳しく分析するそうです。
 川の水質には規定の数値が決まっていて、水質や景観、生態系等の河川環境を整備することによりきれいな水質を保っているのです。

下黒部橋の作業も終わりました

 黒部は名水の里と呼ばれており、全国でも有名な水のきれいな土地です。採水作業が黒部の名水を支えているのかもしれないと思いました。
    
 ●4日目AM(流量観測)
 流量観測実習は、ウエットスーツとライフジャケットを着て、実際に川に入っての観測をしました。私が測定した所はそんなに深くなく、膝よりも下の深さでしたが、それでも随分流れが強く感じました。
 流量観測は初めてだったけど、いろいろアドバイスをもらいながらも、しっかり数値をとることができました。学校でもやったことのない分野だったのですごく新鮮に感じました。

吊篭による観測

 私の観測が終わった後に、関電興業の人たちの吊篭を使った観測を見学させてもらいました。すごく不安定そうだったのに、スムーズに観測を続ける様子は素直にすごいと思いました。
   
 ●4日目PM(海岸現場)

侵食の進む海岸線

 下新川海岸は侵食が進み、美しい海岸線が失われつつあります。今では砂浜がなく、堤防に直接波が打ち寄せている海岸がたくさんありました。そのため、今以上に侵食を進ませないためにいろんな計画があります。みんながテトラポットと呼ぶ離岸堤は、より効果的な形が考え出されています。でも私は海岸線を見て回って、ゴミの多さにとても悲しくなりました。いくら侵食を食い止めても、その浜でゴミを捨てていく人がいては意味がないのではないかと思いました。

離岸堤

  

03/08/12
報告 : 夏期実習生 高櫻 琢也