平成14年10月5日(土曜日)震度Y強の地震により立山町七郎地先において大規模崩壊が発生し天然ダムを形成し崩壊地上流で湛水しダムアップし、下流の水位も低下したという想定のもとで、この天然ダムの決壊による大土石流を想定した防災訓練が富山防災センター、大川寺境内、現地において広域的にわたって行われました。
訓練は、被災情報の収集・調査、初期状況の情報伝達、一次災害に関する避難・救助として水谷地区の作業員とけが人を消防ヘリコプターでの救出、天然ダム災害を想定した災害対策現地本部を設置し対策工事として上流部のダムアップ部では、湛水低下対策、中流部で土石流の堆砂地確保、下流部で堤防補強、消防団による土嚢積み等の対策の訓練が実践さながらに行われました。黒部市の桜井高校土木科も土嚢積み訓練に参加しました。今回、天然ダムの決壊時期、氾濫範囲区域予測情報等の伝達や避難勧告の発令と各市町村の住民の避難(富山防災センター、大川寺境内)も合わせて実施されました。近年、東海豪雨等に見られる異常気象により数千年に1回起こりうる確率の現象も起こりうる事より安政5年(1858年4月)の飛越地震から144年近く経過している事もあり同様な事がいつ起こるか分かりません。黒部工事事務所の管内でも昭和26年4月に右岸百貫山の露岸が風化して大崩壊を起こして本川を堰き止めてロックヒルダムの如き観を呈したり、近年には、平成7年に祖母谷支川祖父谷において1,000万m3の崩壊により自然ダムの形成、平成10年に黒部川上流の下の廊下(金作谷の崩壊)で自然ダムの形成、平成11年に不帰谷からの流出土砂で本川を閉塞し自然ダムの形成、平成12年には、祖母谷支川名剣沢からの流出土砂で祖母谷本川を閉塞、平成13年には、小黒部谷で崩壊土砂による小黒部谷本川の閉塞、平成14年8月には、またも不帰谷からの20,000m3の流出土砂で本川を閉塞し100,000m3の湛水し自然ダム化するなど大事には、至っていないものの毎年のように黒部川流域で自然ダムを形成する現象が起きています。今回、立山砂防工事事務所管内で自然ダムを想定した防災訓練が行われましたが黒部工事事務所管内でもこれ以上の自然ダムの形成も考えられないことはありません。日頃から黒部川流域でも起こりうる自然ダムの決壊による被害に備えて訓練や対応策などの有事に備えるようにしていきたいものです。
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●黒部工事事務所において毎年のように繰り返される天然ダム
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平成7年7月
祖母谷支川祖父谷に自然ダム
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平成10年8月
金作谷の土砂流出による自然ダム
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平成11年9月
不帰谷からの土砂流出で自然ダム
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平成12年
名剣沢からの流出土砂で閉塞
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平成13年7月
小黒部谷の崩壊で小黒部谷を閉塞
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●今回の平成の鳶崩れに備える防災訓練
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防災訓練を見る一般見学者
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水防を知らせる常願太鼓の披露
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広域的に被害状況を把握する
防災ヘリコプター
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自衛隊のヘリコプター
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救助用防災ヘリコプターで救急人を搬送
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大型画像にて訓練の様子を放映
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荷物をヘリコプターでの輸送訓練
(スーパーピューマー)
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災害対策車等の展示
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地震体験装置で体験する一般見学者
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無人のバックホゥの実演
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天然ダム災害対策現地本部
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消防団による土嚢積み訓練
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●あとがき
今回の防災訓練を見学してみて近年の東海豪雨、阿武隈川の被害の際の異常気象の状況を見ると、いつ安政5年の飛越地震のような事が黒部川でも起きるかも知れないし、黒部工事事務所の管内でも生じている自然ダムの形成となる土砂崩壊、土砂流出の現象が大事には至らない小規模で済んでいるが頻発しており大規模災害につながる可能性も有ることより日頃より有事に備えた訓練の必要性を痛感しました。
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