異常に暑い日が続いた今年の夏もやっとひと段落、朝夕はめっきり涼しくなりました。
皆さんの中にはこの休み、山へ上った人も多いことでしょう。
そこで次の写真のような謎の物体を目にしたことはありませんか?
これはロボット雨量観測所といいます。
ロボットと言っても変形合体してミサイルやレーザー光線を出したりするわけではありません。(^^; これ自体がミサイルみたいですが…
春から秋の洪水の起きるシーズンに人知れず、山奥で雨量を観測しつづけています。
洪水では山地で一般的に降雨が多く、また山地で降った雨が流れてくるので自然とこのような箇所での観測が必要になっています。
このような山奥での観測ですから、バッテリーで駆動されています。
また、観測結果も電話回線や電波で送信することが出来ないのでほぼ3箇月毎に記録紙の回収のために山に登って取って来るしかありません。
冬場は雪で潰れてしまうので観測所ごと山から下ろしてきてまた次の年の春、担いで上らなければなりません。 これは大変な重労働です。
黒部の観測所は次の様にどれも深い山間地にあります。
赤の丸印が雨量観測所です。(観測所配置図)
よほどの登山のエキスパートでなければ行けないような場所ばかりです。
私などは高校時代、学校行事の登山(997m)もかったるくてサボったようなぬるい人間ですから(^^;、作業をしていただいている業者の方々には足を向けて眠れませんね。
また、重労働もさることながら自然の中の作業なので危険がいっぱいです。
昨年は朴ノ木谷という宇奈月町の東側の山間地にある観測所でロボットが破壊され欠測(データが取れなかったこと)になってしまいました。
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破壊したのは状況から考えると月の輪熊のようです…(おそらく)。
スチール製の観測所がボコボコにされ、そのうえ爪で切り裂かれていました…ヒエ〜
まさに、この作業は自然との闘いと言っても過言ではありません。
かつて、黒部川ではありませんが、急激な天候の悪化で何日も下山できないことなどもあったそうです。
このように危険なうえに労力もかかる作業を継続しているのはひとえに河川の計画に絶対に必要だからに他なりません。
現在の黒部川の計画はダム・堤防も含めてこのような過去の洪水の降雨・流量などのデータ(水文データといいます)によって導き出された100年に一度起きる可能性がある洪水に対応しています。
黒部では昭和20年代終わり頃からこのようにしてデータを取りつづけていますが、せいぜい4〜50年です。(でもこれだって人間の人生からみればたいした年月だ)
この期間から100年に1度の洪水を統計的手法で想定するのですからホンマかいな?といわれることもあるかも知れませんね。
また、温室効果や太陽黒点活動の異常などによってこれまでの観測の傾向が変わってきていることが判明するかも知れません。
だから、今後もずっと観測は続けていく必要があります。
秋雨、台風シーズンも終わると今年もそろそろ雨量ロボットの下山の時期です。
今年は幸いなことに目立った洪水はありませんでしたが、これもこういう年もあるということで重要なデータです。
ちなみにこうして集められたデータは以下のサイトで参照できます。
水文・水質データベース http://wdb-hr.river.or.jp/
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