平成19年3月26日(火)13:30〜15:30
ホテルアクア黒部 2F「ロイヤルシンフォーニー」
1.平成19年度連携排砂計画(案)について
2.平成19年度連携排砂に伴う環境調査計画(案)について



評価委員会





第27回黒部川ダム排砂評価委員会における評価
 平成19年度連携排砂計画(案)及び連携排砂に伴う環境調査計画(案)については、了承する。
 なお、連携排砂及び環境調査の実施にあたっては、各委員から出された意見を踏まえ、実施すること。

○平成19年度連携排砂計画(案)について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−1 平成19年度連携排砂計画(案)について
 
[主な意見]
(委員A) 今回出し平ダムの目標排砂量が非常に少なくなっているが、堆砂縦断形状図からは貯水池の中においてもかなり土砂の移動があるように見られる。まずどの高さまでを堆砂量という形で定義されているのかを確認したい。また、標高343mより高い上流の黒部川第二発電所放水口付近については、目標排砂量の0.3万mに含まれているのか。
(事務局) この堆砂量の数値については、満水位である標高343mより以下の範囲を堆砂量と定義している。猫又地区の黒部川第二発電所放水口及び新黒部川第二発電所放水口付近については、標高343mより上の範囲(縦断形状図全ての範囲)についても含まれている。
(委員A) 今回宇奈月ダムにおいて、場合によっては完全に貯水位を下げずに、貯水池をある高さのところで維持し、排砂ゲートをあけた状態で土砂を通過させる操作は、今まで具体的に実施されてなく、ある意味では新しい試みであると思う。今後、このような操作を実施し、下流にどのような水質が流れていくのかという点を評価していくことになる。宇奈月ダムにおいて、完全に自然流下にさせず、貯水位を確保した形で土砂を通過させることで、ある程度濁りのピークを抑えることができるのではないか。今回、試験的に操作を行い、データを蓄積することにより、目標排砂量が少ない場合においての排砂方法が検討できるのではないかと思っている。
(事務局) データをしっかり蓄積し、きちんと分析していきたいと考えている。
(委員A) そのような操作を行えば、宇奈月ダムからは複数の放流設備から水が放流されることになる。それぞれの放流箇所から、どのような濃度の水が流れ出たのかを調査することも検討できないか。今後、そのような点も視野に入れてシミュレーションでも検討していただきたい。
(委員長) 目標排砂量については、今後5月までの堆砂量が過去3年間の平均値である9万mと想定しているが、過去にも平成15年に9万mを排砂したことがあり、そのときのSS等の状況が参考になるのではないか。
(委員B) 出し平ダムにおいて8月の堆砂測線と12月の堆砂測線を比べると、少し下流に土砂が移動しているようであり、同じように宇奈月ダムにおいても、土砂が少し移動している印象がある。この要因は8月から12月の間に出水等が発生したためなのか、それとも水位の低下があったためなのか、土砂が移動した理由を教えていただきたい。
(事務局) 出し平ダムについては、猫又付近は非常に土砂がたまりやすく、発電所放水口の機能維持のために人工的に掘削をしている。掘削した土砂については川岸に移動させたり、少し下流のほうへ運搬している。出し平ダムより1km付近において堆積している部分については、ダムの水位を低く運用していたことにより土砂が移動したものと考えている。
(事務局) 宇奈月ダムについては、昨年9月の末から11月の末にかけて尾ノ沼地区の左岸側において護岸の復旧工事を実施する関係で、貯水位を標高232mまで下げて工事を行っていた。このため、ダムから2km付近が湛水池の上流端となっていたことから、秋口の出水により、その付近の土砂が下流に移動したものと考えている。
(委員C) SSの予測値で、来年度、排砂量として9万mを行ったときの予測値と、過去に9万mを排砂した平成15年度時の予測値とでは値が大分違うように感じる。この違いは予測モデルの精度が上がったからなのか、それとも、それぞれのダムの堆積傾向を反映しているということなのか。
(事務局) 実際のダムの堆砂形状等も影響しているものと考えている。必ずしも土砂の堆積量だけではないと考えている。
(委員C) ダムからの土砂の出方が変化して、予測値が高めになってきているのか。
(事務局) 全体的な傾向として土砂の出方が変化して値が高くなったものではないと考えている。
(委員長) 平成19年度については、河川横断面の堆積状況も考慮してシミュレーションを行っており、さらに精度は高まるのではないか。
(委員D) シミュレーションの精度を上げるというのは、どのくらいの精度を目指しているのか。現状のシミュレーション精度がどのくらいで、それをどのように改善しようと考えているのか。
(事務局) 精度を定量的に何%改善するとかといったようなことは、非常に難しい問題であると考えている。実績を踏まえながら、実際の洪水との乖離をなるべく少なくしていくことが重要と考えている。
(委員D) 排砂が終わった後に、当初の予測値とどの程度違ったかを示してもらえば、精度が上がってきているのかどうかは確認できると思う。
(事務局) 排砂量の予測値と実測値は、その都度示している。また、SSの予測値と実測値についても比較をしており、予測値の中に収まるような形での精度は確保していると考えている。
(委員B) 堆砂量の測量は200mピッチで測っており、そのところで1つの誤差があると思われる。10mピッチで測量すれば良くなるかもしれないが、そういう精度であり、ある程度の誤差は仕方ないという感覚である。粗いものだということを理解する必要がある。
(委員D) そのように皆さんが共通認識していれば良いと思う。しかし、数字が一人歩きする恐れがあるため、シミュレーションの精度は元々そういうものであるという認識が必要であると思われる。
(委員A) シミュレーションの目的には、排砂量というボリュームとしての精度を上げるという議論と、水質においてSSや濁度のピーク値を予測するという、2つの目的がある。排砂量なり土砂収支としてのバランスをとるためのシミュレーションの精度向上においては、今後、土砂が移動する範囲をシミュレーションの中でどのように定義づけるのかを考慮していく必要がある。SS濃度の予測については、量だけではなくて、排出される土砂の中にどのくらい細かいものが含まれるのかということと、貯水池内において土砂がどのように巻き上がるのかといったことをシミュレーションで解明していくことが、精度の向上につながると考える。
(委員長) 今後のシミュレーションにおいては、実測値を入れながら検証し、修正していくという努力が必要である。
(委員A) 定期的に貯水池を空にして土砂を排出する操作は、宇奈月ダムや出し平ダムが日本の先頭に立っている。今回宇奈月ダムで想定しているような途中まで貯水位を下げて、完全に貯水池を空にしないという操作は他のダムでも事例があるが、完全に貯水池を空にするという場合は細かい土砂がかなり排出されるので、このような事例は非常に限られてくる。シミュレーションと現地観測により検証し精度を上げていくことが、今後同じような操作を行うダムが出てきた場合の重要な基礎データになるだろうと考えている。
(委員長) このような排砂方法がベースとなり、全国的なものに波及していくことも考えられるため、今後の課題として検討していただきたい。
 
○平成19年度連携排砂に伴う環境調査計画(案)について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−2 平成19年度連携排砂に伴う環境調査計画(案)について
 
[主な意見]
(委員E) セジメントトラップ調査は、海域にどのようなものが流れ出ているのかを把握するという面では、非常に画期的なことであると思っていた。中止する大きな理由の1つが、C地点において設置を維持するのが困難ということが最も大きな要因になっている。この点に関しては技術的な面でもあり、やむを得ないものと考えている。ただ、海域にどのようなものが流出しているのかといった影響の範囲や程度については、今後も観測していかなければならないと思う。また、平成18年度と違い、特に宇奈月ダムにおいては、自然流下状態にいたらない場合があることから、このような排砂方法を行うことになると、ダムから一部の水だけが流れ出ることとなり、DOの問題についても関心を持たざるを得ない。ダムでの排砂方法によってはDOへの影響も変化することから、測定する水深の層についても、DO等の現状が反映できる形での測定をお願いしたい。
(委員F) セジメントトラップを3年間実施して、どのような成果があったのか、またなぜ中止するのか、もし調査を継続するのであれば、どのような条件なら続けられるのかといったことをもう少し詳しくまとめられれば、今後の参考になると思う。
(事務局) セジメントトラップの件については、採取方法をいろいろ工夫して実施してみたが、技術的に難しいという問題が残った。平成16年から調査しているが、排砂通砂時及び出水時のデータや、底層・中層・表層といった水深別のデータを計測した結果、大きな差異が認められなかったことから、出水時と排砂時にかかわるデータ、成果が得られたと考えている。また、調査地点については、現在のC点がトラップする上で一番よい場所ではあるが、海底の傾斜が非常に急勾配なため、アンカーを設置しても流されてしまう。さらに沖合いに設置しようとした場合、船の出入り等にも影響することから、この地点での設置は困難と考えている。排砂通砂時には、従来から水質調査のための採水を実施しており、表層、中層、底層における調査を今後とも実施していく考えでいる。
(委員長) これまでのデータを踏まえて、完全に中止するというよりも、一時期中止をするということがよいのではないか、効果的な方法が考えられれば調査を実施するということで、当面はSSの垂直分布を観測することと、それに付随するDO等の水質分析項目を実施することにより、セジメントトラップ調査に代わる調査となるのではないか。
(委員E) 技術的に無理であれば、もう少しほかの箇所において影響の範囲を押さえることが重要である。SSを含めて、トラップによりものを捕捉するということは、例えば漁業への影響の有無を評価する上でも非常に有効なデータになるだろうと思う。
(委員長) 宇奈月ダムにおいて、自然流下状態にいたらない場合の排砂操作について詳しく説明を願いたい。
(事務局) 自然流下にいたらない場合は、ダムの一部の水しか流れ出ないのではないかということであるが、それに関して2点ほど説明させていただく。まず黒部川と宇奈月ダムの特性において、年間の流出量をダムの貯水容量で割った回転率という指標があり、この回転率が宇奈月ダムではおおよそ60となっている。これは年間60回ダムの水が入れ替わっているということを意味するものであり、宇奈月ダムでは水が滞留している状態にはないということが1点目として挙げられる。もう1点は、宇奈月ダムの放流設備は、高さ別にクレストゲート、常用洪水吐ゲート、水位低下用ゲート、排砂ゲートが設置されており、各高さから放流ができるようになっている。自然流下にいたらなくても、一番下の排砂ゲートを開けることにより、水位が低下している状態においても、ダムの水はほとんど全部流し出せると考えている。
(委員E) 特定のものが流れ出るということは考慮しなくてもよいのか。
(事務局) 考慮しなくてもよいと考えている。
(委員D) 海域の調査については、気象条件が厳しい場合での調査が多く、相当苦労されていると感じている。事務局とも相談したいと考えているが、水産試験場では160トン規模の調査船「立山丸」を保有していることから、調査場所や調査のタイミング等、調査船使用の調整は必要であるが、調査への協力が可能と考えている。海域に流れ出る土砂の影響を、まだ十分に把握できていないと感じているため、黒部川河口直下におけるSS状況の把握は必要と考えている。
(事務局) 調査のタイミングはあるが、今後、調査船使用に関して水産試験場と調整させていただきたい。
(委員長) セジメントトラップは中止とするが、それにかわる調査、例えばSS等の垂直分布調査の実施を検討していただきたい。
(事務局) 代替案については考えていく。
(委員B) アユの濁りに対する抵抗性を調査するということであれば、もっと別の調査方法もあるのではないか。
(委員G) 同様の調査は昨年、黒部川内水面漁業協同組合が実施をしている。このようなやり方にはいろいろと問題はあるのだが、排砂時の状況におけるアユの影響を把握する上では、例えば室内実験みたいな形での再現は、あまり現実的ではないと考えている。その意味で、排砂の影響をアユがどのように受けているかを把握するためには、やはり黒部川の中に何らかの形でアユを入れてみるのが一番妥当なのではないか。ただし、調査の実施においては条件等が比較整理されるよう工夫する必要がある。
(委員D) 抵抗力を把握するという目的であるが、その抵抗力を何の指標であらわすのか、お聞きしたい。
(事務局) 具体的にどの指標の数値であらわすのかは、難しいことと考えている。現在、アユの斃死数により判断をしたいと考えているが、斃死した原因すべてが排砂の影響であるのかを整理する必要もあるため、どの要因が影響を与えたのかを比較検討できるように調査していきたいと考えている。例えば水温、SS、DO、流速、濁度といった物理環境データの計測も考えている。また平常時、静水時においても同様の調査を実施したいと考えている。現時点においては、まだ検討中であるため、最終的には水産試験場、専門家の方々のご意見等も伺いながら計画を立案していく。
(委員D) アユは濁りで必ず何らかのストレスは受けているのだから、斃死数の調査だけではなく水の濁りが元に戻ったときにどのように回復するのかというところまでも、把握しておく必要があるのではないか。客観的にデータを計測する必要があり、単なるカゴの中にアユを収容して忌避できない状況の中で斃死数を調査するだけでは、あまりにも客観性が乏しいのではないか。今回、試験フィールドにおいても調査を実施するが、当然、そちらの方がより自然に黒部川の排砂時の環境を再現することができると感じている。より客観的にアユが排砂によって抵抗力的にどのような影響を受けたのかを数値化できる努力はしなければならないと思う。
(委員E) アユ調査の本来の目的は、河川にアユが根づけるような状況をつくり、一時的な排砂でアユがその後生息できなくなるような状態にはさせないということである。斃死数の指標も大事ではあるが、この試験後、生存しているアユがいれば、ある一定の期間、飼育を続け、その後の成長や摂餌に関する影響までを把握していく必要があると考えている。
(委員G) 排砂時にアユ自身がどこへ逃げ込み、排砂後にまた戻ってくるのかといった調査も、同時並行的に調べていく必要がある。
(委員B) アユが待避できる場所を構造的に川の中や霞堤などにつくっていく方向に向かえばと期待している。
(委員G) やすらぎ水路については、水さえ確保できれば十分機能すると思うが、どのようにして水を水路に残すのかということについては、課題があるように思われる。
(委員D) 黒部川河口直下の海底状況の変動については大変関心を持っている。水中テレビカメラの装置などにより、機会があれば海底の状況を撮影していただきたい。
(事務局) 水中テレビカメラ装置は保有しているが、経費も非常にかかることから、装置の使用についてはあまり現実的ではないと考えている。
(委員D) 装置の購入目的は、ダム湖の中の状況を把握するためなのか。
(事務局) 連携排砂が始まる頃に北陸地方整備局にて導入しており、導入の目的は、宇奈月ダムや出し平ダムにおけるダム貯水池の湖底調査と、海岸事業の関係において、海岸線の調査等にも使用できるようにと工夫してつくられている。当初想定していたよりもかなり経費がかかり、十分には活用し切れていないが、装置を有効に使用していきたいと考えている。
(委員D) 環境調査計画とは別に単独での調査をお願いしたい。調査の実施にあたっては河口海域も調査地点とされるよう考慮していただきたい。
(事務局) 平成13年度頃に、一度宇奈月ダムの湖底を調査したが、透視度が悪いために、あまり望ましい画像は得られなかった。使い方についてはいろいろと考えているところである。
−以 上−


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