平成19年1月16日(火)14:00〜17:00
ボルファートとやま 4F「珊瑚の間」
1.平成18年7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
2.平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について



評価委員会





第26回黒部川ダム排砂評価委員会における評価
 今年度は、5月に黒薙川北又谷の内山ハゲで山腹崩壊が発見され、その後出水のたびに黒部川では濁りが発生した。また、7月には黒部川流域で1月間に1000ミリを超える降水量を記録し、この間に連携排砂および本年度からはじめて実施した連携試験通砂、そして2回の連携通砂を実施 した。なお、排砂通砂の年4回の実施はこれまでの最高回数であった。
 
 このような状況で、出し平ダムにおいては目標排砂量に対し実績排砂量が相当量超過したが、水質、底質および生物相の環境調査結果をみる限り、連携排砂・通砂により一時的な環境の変化はあるものの、洪水時と比較しても大きな影響を及ぼしたとは考えられない。
 
 なお、今後の連携排砂および連携通砂については、以下の点に留意しつつ、実施すべきである。
@ 環境調査については、調査の種類や項目を取捨選択するなど、十分に吟味し、重点的、効果的かつ効率的な調査の実施を図ること。
A 河口直下の海のベントスの把握や、排砂によるアユの生態への影響についての調査を継続すること。
B 出し平ダムにおいて、目標排砂量に対し実績排砂量が相当量超過したことに鑑み、土砂量の把握精度をさらに向上するよう努めること。
C 試験通砂については、来年度も継続して実施し、その効果について確実に把握するよう努めること。

○平成18年7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−1 平成18年7月連携排砂及び連携通砂の実施経過について
 
[主な意見]
(委員A) 出し平ダムにおける今年の土砂の出方は例年と違う結果であったが、これは、宇奈月ダムで今後さらに土砂が貯まっていき、排砂でどのように土砂が出ていくのかについて予測するためにも極めて重要な情報であり、よく検証すべきと思う。
  今年の出し平ダムの排砂量がなぜ予測と違ったのかという点については、これまでの通砂時には、上流から入ってくる土砂量と下流へ出ていく土砂量のバランスがとれており、貯水池内では新たな土砂の浸食は生じないという想定のもとに実施していた。しかし、今年は上流から入ってくる土砂量が例年に比べて少なかったため、通砂時の流量によって、いつもは侵食されない貯水池内の堆積土砂が横断方向に浸食されて、予測よりもダム下流へ出て行く土砂量が多くなったのではないかと考えられる。
  川がある程度落ち着いてくると、大きな石の下には細かい土砂が潜り、なかなか流量が増えても細かい土砂が出ていかないということがよくある。出し平ダム上流の河道では、今年に関しては昨年とは異なり、200m/sから300m/s程度では土砂はあまり流下しない状況になっていたのではないか。
  今後は、上流の河道の状態についても把握し、上流河道からダムへ流入する土砂量の予測精度を高めることが極めて重要である。
(委員B) 今後のシミュレーションにおいて、今回、側岸浸食があったという状況をシミュレーションで反映していくのか。
(事務局) 過去の実績との整合性も考慮し、シミュレーション上の河床変動幅の変更等を考えている。
(委員長) これまでシミュレーションで設定していた川幅よりも、今回の浸食幅は広くなっている。今年の結果から見ると、土砂がある程度堆積すると、ある時点で崩れる方向になるのかもしれないが、このような現象をどの程度シミュレーションで予測できるものかさらに検討していただきたい。
(委員C) 今年側岸浸食が起きた箇所は、排砂中にヘリによる写真やビデオ等で確認はできるのか。
(事務局) ヘリコプターの運行が可能な天候であれば、上空から確認はできる。
(委員D) 出し平ダムの平成18年5月の河床高の測量日はいつか。先ほどの説明で、融雪期に600m/sぐらいの出水があったということであるが、これらを反映したものとなっているのか。
(事務局) 5月の堆砂測量は連休明けに実施している。したがって、その後の出水をとらえることはできていない。
(委員D) 出し平ダムの堆砂形状をみると、平成6年12月河床高にかなり近づいている。今までに、このような状況になったことはあったのか。
(事務局) 平成10年にかなり近づいたことがある。
(委員D) 出し平ダムにおいて、実績排砂量が多くなった点については、排砂通砂の回数4回と自然流下時間がトータル40時間という、その2つの兼ね合いがあったのではないかという気がする。
(委員C) 地域住民や漁業者にとって、計画排砂量と実績排砂量との違いが、大きな関心事であると思う。これまでに相当回数の排砂を実施してきているが、そういった中で、実績排砂量とシミュレーション結果をある程度近づけていかないと、地域住民や漁業者の排砂に対する理解が薄れるのではないかと危惧している。
(事務局) シミュレーションについては、今後、各委員の方々ともご相談しながら、精度の高いシミュレーションを確立していけるよう努力したい。
(委員E) 今の排砂量の考え方は、ダム湖内にストックされた土砂を対象にして、これがどれだけ減ったかということを示しているが、環境へのインパクトを考えると、洪水とともに流下するフローとしての土砂量を示す方が適切と思われる。特に、今回のように排砂通砂の回数が多い場合、フローとして出し平ダムからはどれだけ土砂を排出したかを示す必要がある。フローとしての土砂量を示すことは、河床での堆積状況等を検討する際に指標にもなる。
(事務局) SSによる流砂量ということで、ダムからのインプット、アウトプットを計算しているが、このほかに、掃流砂なども含まれることから、現状では、フローの土砂量を示すことについては精度上困難と考えている。
 
○平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
詳しくは以下の資料をご覧下さい
資料−2−@1/3 平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
資料−2−@2/3 平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
資料−2−@3/3 平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
 
[主な意見]
(委員F) 資料2−@の3−24ページの海域の底質追加調査の分析項目に泥色があるが、泥色の判定に際しては色名帳を使うことを勧めたい。
(事務局) 色名帳に準じた記載とするようにしたい。
(委員F) 底質追加調査結果における地形による分析結果の比較については、海底地形と各指標との関係はみられなかったとのことであるが、一方では概ね水深が深い地点ほどCOD、強熱減量等は高く、ORPは低い値を示しているとしており、両者は矛盾する。
(事務局) ご指摘のとおり、海底地形と底質の各指標との関係がみられなかったとすると、水深との関係とは矛盾するような文章表現であるため、尾根と谷で比較した結果違いはみられなかったというような表現が適切であった。
(委員C) 排砂実施機関による底質追加調査結果では12年と18年のCOD値を比較すると18年の方が低めであるという結果であるが、富山県水産試験場の調査で13年と18年を比較した場合、実施機関の調査結果とは逆に18年の方がやや高めであった。年度の違いもあるが、参考までに報告する。
(委員G) 底質追加調査における12年と18年の全窒素を比較すると、18年の方が高めとなっている。にもかかわらずCODは低めになっているが、このような傾向については、富山県水産試験場の結果とあわせながら、今後よくみていく必要があると思われる。
  なお、このような現象は、陸域からの負荷量といった視点も含めて、富山湾全体の問題としてとらえる必要がある。
(委員長) 全りんと全窒素については、以前は全りんが高く全窒素は少なめであったが、今回の調査においては全りんが少なく全窒素が多い。その辺の原因について、事務局側でさらに検討されたい。
(委員G) 海域Dでは多様度指数が高く、個体数も種類数も多いことから、生物にとっては良好な環境にあると考えられるが、河口から少し沖側の海域Bでは問題のない濃度であるが、窒素が高めな環境にある。海域Bでは水深が深いため、水の動きが弱く窒素分が溜まりやすい環境にあることも考えられる。ただし、海域Bがこのような状況にあることについては黒部川だけの影響ではないと思う。
  長崎大学の石坂先生が、リモートセンシングによる富山湾の生産量についての研究成果を海洋学会誌に発表されているので参考にされたい。
(委員C) 海域の底質については、水産用水基準を超える数値がこの海域で出ているということに着目して、きちんと今後も検討しておくべきである。
  底生生物と項目間の相関には、それぞれの数値の有意差もきちんと出したほうが結果を評価しやすいのではないか。
  海域の底生動物の種類数等について、水産試験場の調査結果と比較しているが、調査年数が多いと種類数は当然多くなることにも留意していただきたい。また、個体数がゼロとか湿重量がゼロになるということは、餌となる生物等が全くいないということであることから、大きな問題である。
(事務局) 底生動物の有意差検定については、次回の委員会までに計算し、ご報告したい。
(委員B) 海域底質の追加調査における、臭気についてはどのように調査しているのか。12年と18年と比べると、全体として臭気が増しているのではないか。
(事務局) 平成12年に底質の土臭をどのように分類していたのかこの場では分からない。
(委員H) 試験サンプル採取方法の違いによる分析値の比較においては、水深の影響のみで考察しきれるものか疑問が残る。
  今後も継続して、セジメントトラップによる調査を実施するのであれば、確実にデータが取れるように改善していただきたい。
(事務局) セジメントトラップについては、これまで何回か改良しているが、地形的に急勾配の箇所に設置している関係で、洪水時に流されてしまい、十分な成果を得ることができなかった。
(委員I) 用水路の土砂堆積調査については、この程度の量であれば、一般的な用水路とは大きな違いはないと考える。
  今年度は、排砂の回数も多くなり、それに伴い排砂に要する時間が非常に長くなっていることから、利水者にとっては相当なストレスとなったものと思われる。このため、排砂操作については、全体時間を短くするような方策を検討すべきである。
(委員J) 今年のアユの調査結果から、アユは8月初め頃まで藻類をあまり摂餌していないためかほとんど成長していない。アユの餌として藻類以外では落下昆虫が考えられるが、絶対量としては非常に少ない。
  藻類がほとんどない中で、アユは本当に死んでいないものかどうか。もしかしたら、アユは餌不足から衰弱死し、調査で採捕しているアユの多くは新たに海から遡上してきているものかもしれない。
  黒部川において、付着藻類が生えない原因として、洪水によって礫表面から藻類が剥がれていく頻度が多いことだけではなく、今回の調査にあるような起源のよくわからない有機物が礫表面に付着しているため、藻類が侵入しにくい状況があるのかもしれない。そのあたりのメカニズムはこれから調べていく必要があるのではないか。
(委員長) 黒部川では、洪水や排砂によって礫の表面が洗われる頻度が多いことから、恒常的にアユの餌が少ない状況にあると考えられるが、アユは藻類がなくても他の有機物を摂餌することによって成長していることも考えられる。
(委員A) 評価委員会の目的として、1点目として、排砂や通砂のシステムがある程度確立してきている中で、排砂後の措置や試験通砂などの補助的な操作に関する取り組みについての評価や改善措置に関するアイデアなどについて議論することがあげられる。
  2点目としては、膨大なデータの蓄積がある中で、データの項目ごとに過去からの傾向に対して外れていない安全な範囲に入っているかどうかといった傾向管理をしていくという点がある。
  排砂後の措置の試行については、土砂の堆積調査の結果から、当年1回目の排砂である連携排砂によって有機物を含む細かい土砂がたくさん排出され、それを洗い流すという意味では効果を発揮しているのではないか思う。
  通砂後の措置の試行については、連携通砂時に排出される土砂が貯水池の中がだいぶ洗われたあとの砂なりシルト分といった比較的粗めのものであることから、そういうものを洗い流すことが本当に必要かどうか。調査結果ではあまり変化が見られないという報告であり、必ずしも必要ではないのかもしれない。
  排砂時には、貯水池の水位を下げることで土砂が急激に動くことがこれまでにも確認されているが、試験通砂を導入したことによって水位を下げる回数が増加し、その分だけダム下流へ多くの土砂が出たのではないかという解釈もできる。
  できるだけ排砂操作に必要なトータル時間を短くすることは、生態系や利水者に対する影響からしても大切なポイントである。排砂や通砂の回数とトータル時間についてはよく検討すべきである。
 
○第26回黒部川ダム排砂評価委員会評価について
   [評価(案)について委員長より説明]
(委員長) 配布した第26回評価委員会の評価案について、ご意見を伺いたい。
(顧 問) 評価案の内容については、おおむね問題ないものと思われる。
(委員G) 海域での底生生物への影響が、一時的に出水及び排砂時に出ていることも考えられることから、「河口直下の海のベントスの状態をしっかり把握しておくべき」というような文言を追加していただきたい。
(委員J) アユに関しては、ずっとこれまでも一貫して調査を実施してきているが、解決していない部分が多いため「排砂によるアユの生態への影響に関する調査を継続すること」というような文言を盛り込んでいただきたい。
(委員長) 「河口直下の海のベントスの状態を把握していくこと」及び「排砂によるアユの生態への影響について調査の継続」について、評価に盛り込むことにする。
 
○その他
[連携排砂・連携通砂直後に開催している評価委員会について]
(委員長)  これまで、連携排砂や連携通砂の実施直後に、環境調査の速報値についての中間報告のための評価委員会を実施し、その後、データが全部出そろった段階で本日のような評価委員会を実施している。
 しかし、速報値の段階では、生物調査関係はほとんど結果が出ていない状況もあり、中間報告の評価委員会を開く意義があるものかと感じている。
 異常なデータが出た場合は開催せざるを得ないが、そうでなければ、最終的なデータが出そろった段階で開催することとし、中間報告の評価委員会については開催しない方向としたい。
〔異議なし〕
−以 上−


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資料−2−@ 平成18年7月連携排砂及び連携通砂に伴う環境調査結果について
 
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