危険な建設現場の無人化施工を目指して
〜無人ラフテレーンクレーン(50t吊り)を開発〜
■ 参考資料(1) ■


  1. ラフテレーンクレーンの無人化技術開発の経緯
  2. 無人ラフテレーンクレーンの概要
  3. 参考資料
  4. 無人ラフテレーンクレーンの運用にあたっての留意事項

1.ラフテレーンクレーンの無人化技術開発の経緯

 北陸地方整備局では、落石・土砂崩れが起こりやすい砂防工事現場や災害復旧現場における作業の安全を確保するため、各種建設機械の無人化(ラジコン化)技術の開発を行ってきました。
 金沢河川国道事務所管内の砂防工事には非常に危険な現場があるため、既存の無人化システム(油圧ショベル等)で工事を行っていましたが、これらの建設機械では離れた場所に資材を迅速に移動することは難しいため、完全な無人化を行うことができませんでした。
 北陸地方整備局ではこれを解決するため、平成14年度及び平成15年度にわたり委員会(無人化施工技術検討委員会・委員長 北陸地方整備局 河川部地域河川調整官)において検討を進めてきました。この結果、作業範囲の広さや施工効率などの優位性、災害時における回送などのための一般公道走行の必要性などから、大型クレーンによる無人化施工が最適であるとの結論を得、無人ラフテレーンクレーンによる無人化技術を開発することを決定し、このほど当該機が完成しました。
 この無人ラフテレーンクレーンは危険が伴う砂防工事現場の他、災害復旧現場等の危険箇所での広域的な活用が予定されています。
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2.無人ラフテレーンクレーンの概要
(1)使用目的
  <1> 落石等の危険がある砂防工事現場での無人化施工
   (型枠ブロックの設置、コンクリートの打設等)
  <2> 斜面崩壊等の道路災害や堤防の決壊等災害時の応急復旧
   (土嚢、ブロックの運搬及び設置等)

(2)概要と特徴
  <1> 遠隔での操作が可能な50t吊りラフテレーンクレーン(日本初)。なお、遠隔操作には走行(ただし「作業姿勢」)を含みます。
  <2> 遠隔操作時の操作有効距離は150m。
  <3> 一般のラフテレーンクレーンと同様に、一般公道を走行することが可能。建設現場等において作業姿勢としたとき、走行を含むクレーン作業(作業姿勢での走行、アウトリガの張り出し(自動水平装置付)旋回等)を遠隔操作することができます。
  <4> 災害復旧工事に不可欠な吊り荷走行が可能。(定格荷重は有人時の70%)
  <5> 送信機は走行用、作業用の2台を使用(クレーンは操作項目が多いため)。なお、送信機は建設機械で実績のある無線免許が不要な特定小電力無線を採用。但し、機械を操作するには、厚生労働省が認可する「移動式クレーン運転士免許」が必要です。
  <6> 有人の一般機と同じく過負荷防止装置を装備(転倒防止の設計配慮)。なお、過負荷防止装置(モーメントリミッター)の状況は遠隔モニタ装置で確認することが可能。
  <7> 車載カメラ等の映像支援装置を装備。

(3)無人ラフテレーンクレーンの効果
  クレーンを無人化することにより、危険な作業領域にクレーンを設置できることから、
 
  • 作業の安全性の向上が期待されます。
  • 迂回路や安全対策工を軽減することが可能となり、コスト縮減・工期短縮が期待されます。

(4)主な仕様
  <1> クレーン容量(アウトリガ最大張出し時)
  定格総荷重   作業半径
ブーム長さ9.8m 50t × 3.0m
ブーム長さ16.4m 30t × 4.5m
ブーム長さ23.1m 20t × 5.0m
ブーム長さ29.7m 12t × 8.0m
ブーム長さ36.3m 11t × 7.0m
ブーム長さ43.0m 7t × 10.0m
2tのブロックを約23m、1tのブロックを約29m先まで設置できます。
  <2> 全長 11,940o
  <3> 全幅 2,980o
  <4> 全高 3,660o
  <5> 車両総重量 37,990s
  <8> 最高車速 49q/h(遠隔操作時 10q/h)
  <9> エンジン定格出力 261kW(355PS)
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3.参考資料


(1)白山砂防の歴史と甚之助谷と万才谷の合流点付近の重要性

 白山砂防の直轄砂防事業は昭和2年に着手し、甚之助谷においては高さ5m前後の堰堤を階段状に施工しています。この階段式堰堤群は荒廃渓流を治める工法としてわが国で初めて試みられたものです。
 甚之助谷と万才谷の合流点付近は、当初、両岸に岩盤が露出しており比較的安定していましたが、昭和60年に右岸が、続いて平成4年に左岸が崩壊し、その後の施設下流側の河床低下と相まって、左岸側は未だに安定せず、斜面崩壊の恐れが高まっています。また、ここは甚之助谷地すべりブロック末端部に位置することから、移動土塊の応力が集中する場所であると推定されており、河床低下が進行した場合には両岸崩壊により、地すべり活動を促進することが考えられます。
 よって、この区間は河床勾配を安定させ、両岸の崩壊を抑止すると共に、地すべり土塊の急激な滑動の抑制を図る必要性が高い場所です。

(2)現場作業の無人化の必要性

 甚之助谷を挟んで左岸側に地すべりの左岸ブロック、右岸側に中間尾根ブロックが存在し、1年間に10p程度地表面が移動しています。また、甚之助谷は両岸にわたり渓岸や山腹が著しく荒廃しており、河床勾配も急(河床勾配1/2〜1/3)で、土石流発生の危険性があり、流域面積が小さいため降雨による出水は短時間で発生します。さらに、甚之助谷と万才谷との合流点左岸は山腹崩壊が進行し、大規模な斜面崩壊の発生する恐れがあります。
 こうしたことから、河床内から左岸に人が立ち入り施工することは著しく危険であり、安全対策を講じることが困難であるため、当該工事現場では無人化施工による対策工事が必要となります。

遠隔操作室 無人化施工区域  
有人施工区域 無人化施工区域  

 

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4.無人ラフテレーンクレーンの運用にあたっての留意事項


(1)オペレータ教育

 有人でのクレーン操作がオペレータの感覚によるものが多いことから、かなりのトレーニングが遠隔操作するオペレータのために必要です。

(2)無人ラフテレンクレーンの作業効率等の把握と支援策

 遠隔操作での作業効率や安全性、稼働サイクル等に関して十分な現場調査及び検討を行い、映像支援装

(3)緊急時への対応

 災害の場合に迅速に現場に急行し、活躍することが期待されますが、厳しい災害現場状況での使用条件等

(4)今後の改良

 オペレータからのヒアリングなどによって問題点を抽出し、ラジコン装置の改良などより一層の安全対策を図ることが必要です。

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