水源から河口まで水系一貫で川を治める-手取川-

 霊峰白山を水源とし、日本海までそそぐ延長およそ72キロの手取川。豊かな清流で流域の人々に恵みをもたらす反面、その急勾配と天井川という特性ゆえに、たびたび洪水を起こす「荒ぶる川」でもありました。とりわけ被害の大きかった昭和9年の大洪水をきっかけとして、その年の12月から直轄事業として河川改修に着手しました。

 それに加えて、源流部では昭和2年から上流崩壊地の土砂生産抑制を図るため砂防事業を、昭和37年からは地すべり対策事業を行っています。また、源流からおよそ32kmの地点では、昭和55年に洪水調節を主目的とした手取川ダムが完成しました。さらに、河口にあたる石川海岸では、昭和36年から侵食を抑制する海岸事業を行っています。このように、手取川では、上流から河口までを含めた水系一貫の治水事業を行っているのです。

手取川流域図
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河川改修の経緯~昭和9年の大洪水が契機に~

 手取川の河川改修事業は、明治24~29年におきた大水害を契機に、明治29年~35年にかけて石川県により着手されたのが最初です。その後、昭和9年の大洪水を受けて新たな改修計画をたて、直轄改修事業として着手し、破堤箇所の復旧と旧堤の補強を進めると共に、昭和9年の出水規模と同じ4,500m³/Sを計画高水流量として抜本的な改修を展開してきました。

 昭和41年には、基本高水流量6,000m³/s、計画高水流量も5,000m³/sと改訂し、上流ダム群による洪水調節流量1,000m³/sとして計画が見直され現在に至っています。

 

※基本高水流量というのは、洪水防御計画の基本となる洪水の流量です。これを合理的に河道、洪水調整ダム等に配分して、これらの計画の基本となるよう決定した流量を計画高水流量といいます。

濁流によって落橋寸前の手取川鉄橋 流木で家屋がなぎ倒された白峰村桑島
濁流によって落橋寸前の手取川鉄橋   流木で家屋がなぎ倒された白峰村桑島

<昭和9年の手取川大水害>

 昭和9年7月10、11日、活発な梅雨前線の活動による記録的な豪雨に加え、例年にない大量の融雪が加わり、手取川の流域は未曾有の被害に襲われました。死者・行方不明者は112名、流出・倒壊家屋約240戸を数え、土砂流出・堤防切断による氾濫浸水や河床の上昇(白峰村・風嵐地区で7m上昇)等、洪水の爪痕が後々まで残りました。

事業の現況~整備率はほぼ9割、急流河川対策と河口部の閉塞が課題~

 手取川の現在の堤防整備率は94.6%(霞堤の重複分を含むと80.3%)となっており、河川部を除いてほぼ計画高水流量の流下能力を確保しています。

 しかし手取川は、水源から河口までの平均勾配は約1/27、直轄管理区間(17.3km区間)での平均勾配は1/130~1/200と我が国有数の急流河川であり、さらに中流部(国道8号から辰口橋付近)は天井川区間となっているため、一旦破堤した場合には被害は甚大なものとなります。また、冬期波浪による河口部の閉塞が課題となっています。

整備方針~急流河川対策と豊かな自然環境の保全~

手取川流域

 手取川は急流河川であることから洪水エネルギーが強く、局所的な河床洗掘や河岸侵食により、護岸の破損や破堤につながる危険性があります。このことは、特に、天井川区間での洪水氾濫による被害の拡大を助長することとなります。

 対応策については、急流河川対策として、十分な研究を行った上で、堤防補強対策を実施していきます。

 また、整備にあたっては、豊かな自然環境の保全と創造に配慮した工法を選定し、実施していきます。

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