金沢河川国道事務所

 第4回活動--令和5年8月24日(木)〜25日(金)

 令和5年度第4回活動は、手取川源流域調査を実施しました。第17期(令和元年度)以来4年ぶりの開催となりました。「手取川の始まりとなる源流域を調査すること」「甚之助谷地すべり対策事業として地すべりブロックへの地下水浸透を防ぐことを目的に整備された『万才谷排水トンネル』について学ぶこと」を目的に実施しました。
 砂防新道を進みながら、砂防新道がかつて工事用の道として利用されていたことを学び、かつての工事の大変さに思いを馳せました。
 また、地すべりブロックの中に砂防新道があることを学び、大地が動いている上を歩いている壮大さを感じました。

 活動初日は小雨が降ったり止んだりと雨ガッパが必須の天候でしたが、比較的涼しく、景色を楽しみながら調査することができました。また、宿泊先の南竜山荘からは、虹を見ることができました。
 2日目は朝から雨でしたが、万才谷排水トンネル見学中は晴天に恵まれ、雄大な白山の景色はこの世のものとは思えないほどの絶景でした。

 白山の奥地にて、建設機械や資材の運搬が困難な中でも立派な施設が整備されていることに、特派員の皆さんは感慨深い表情で熱心に学んでいました。
 実際に自分の目で地すべり対策施設を見ることにより、資料などで見ていた以上に白山砂防や甚之助谷地すべり事業への理解を深めることができた2日間となりました。
   
調査ルート
      
《万才谷排水トンネル》
 平成21年3月に工事を開始し、約13年半かけて令和4年10月に完成した排水トンネルです。
 万才谷排水トンネルは、地すべりの原因となる地下水が甚之助谷地すべりブロックに浸透する前に取水し、地すべりブロックの反対側に位置する赤谷へ導水することにより、地すべりの動きを抑制することを目的として設置されました。
万才谷排水トンネル位置図
万才谷排水トンネル断面図
 
呑口(取水側)   吐口(排水側)
   
★参加人数★
   8名

  • 第4回活動状況
★24日(木)★
 11:40 調査開始(砂防新道にて)
 13:40 休憩(甚之助避難小屋)
     (南竜〜エコーライン分岐経由)
 15:40 南竜山荘 着
 16:15 南竜ヶ馬場野営場 見学

   
調査開始!   険しい登山道を
登ります
  別当覗で小休憩
まだまだ余裕です!
甚之助避難小屋にて
   
地すべり地形に
圧倒される特派員
  手取川の源流域を
流れる川
  南竜山荘が
見えてきました
   
南竜山荘に到着!   地すべり対策について
解説を受ける特派員
  南竜山荘付近には
至るところに火山弾が!

★25日(金)★
  7:15 万才谷排水トンネル(呑口・吐口)見学
 10:00 下山開始
 12:00 休憩(甚之助避難小屋)
 13:30 調査終了

   
万才谷排水トンネル
呑口に向かいます
  呑口立坑の
解説を受ける特派員
  取水施設の
解説を受ける特派員
   
万才谷排水トンネル
吐口に向かいます
  万才谷排水トンネル
吐口に到着!
  万才谷排水トンネルの
解説を受ける特派員
   
排水トンネル内部も
見学しました
    2日目の朝は
晴天に恵まれました


活動報告  女性特派員の代表的な感想
    
【A.K】
 今回は2日間の手取川源流域調査に参加させていただきました。登山をするのが久しぶりで皆さんの足を引っ張らないか不安でしたが登山ガイドさんや女性特派員の明るく楽しい先輩方達、金沢河川国道事務所の職員の方々のおかげで無事に南竜山荘まで登山し、辿り着くことができました。本当にありがとうございました。
 翌日の朝、万才谷排水トンネル見学へ向かいました。工事作業員の方が使用した通路を辿り、万才谷排水トンネル呑口へ歩きます。南竜山荘から万才谷排水トンネル呑口側への道は長く険しい道でしたので、作業員の方が毎日この道を往復し工事作業されたことを考えると身体的にも精神的にも大変なご苦労をされた工事だったのだろうなと感じました。
 呑口側では地すべりを誘発させる原因とされている水が地中に浸透するのを防ぐため万才谷の水をトンネルで赤谷へ流す工夫を説明していただきました。石と水を分別できるような仕組みになっており、この仕組みのおかげで地すべりを抑制できることを学びました。
 次の吐口側では急な斜面を降り、トンネルを見学しました。トンネルの中へ入り頭がぶつからないように少ししゃがむような姿勢で歩きました。トンネルの中は寒く、水もとても冷たかったです。改めてこの環境での工事の大変さを感じ、工事に関わる方々のご苦労を感じました。
 国立公園内での工事ということでさまざまなご苦労があったのだと思います。下流域の住民が安全で安心して暮らせる毎日はこの工事のおかげであることを感じ学ばせていただいた活動でした。
 
【R.K】
 24日(木)は一日中小雨で、カッパを脱いだり着たり。太陽が照りつけないぶん、疲労感もなく登れた。
 25日(金)朝食後、今回の現場見学、万才谷排水トンネル。そこまでの道作りも難儀だったことだろう。
 こんな所に呑口と吐口を作るなんてなんと言う考え。これを作るための資材運びの索道作り。何から何まで大変だ。
 自然の力はなかなか止めれないが、どうぞ地すべりや崩落がこれ以上進まない事を祈ります。

【T.S】
 白山登山を始めてからずっと気になっていた砂防風景のひとつがこの、南竜水平道から見える「万才谷」での工事風景でした。初めは、谷の名前さえわからず、何度も白山を歩くことで理解に努めました。御舎利へ行く途中の坂から赤谷を見下ろし、油坂を下りたところで下流に見える建屋の屋根にときめき、いつかその場所へ行けると信じてきました。夢叶ってこんなに嬉しいことはありません。
 排水トンネルの呑口側、吐口側、索道支柱がそびえる山頂の風景、その両方を行き来して感じたことは、この工事に関わった人たちは、なんと凄いことを成し遂げたのだろう、ということでした。
 高山ですよ、ヘリと索道施設しか輸送手段のない奥地で、これほど完成度の高い施設に出会うとは…。じつは、以前、飛島建設さんがつくられた映像(youtube)「もうひとつの白山(通水編)」を、見ていました。今回再び見直して、やはりこの「万才谷排水トンネル工事」は、世界に自慢できる偉業だ、と感じました。完成に掛ける思いも、職人魂もカッコいい!
 ひとつだけ残念だったのは、その工事中の現場を見ることが叶わなかったこと。コロナがなければな…と少し恨み節(笑)。こんな高地で施工されたとは思えないほど、端正で美しかった。
 甚之助避難小屋で休憩するひとは多いけれど、目の前に広がる崩落斜面が何を意味するのかを知るひとはそう多くはないと思います。標高2,000mの高地で(人知れず)「いい仕事してる」砂防施設とその建設に全力を注いだ人たちのこと、自分なりに伝えていきたいと思いました。
 「お花だけじゃないよ、白山は」と言いたいですね♪
 
【T.N】
 第4回目の活動は、待ちに待った手取川源流域調査。昨年度も楽しみにしていましたが、昨年度は残念ながら天候の影響で中止になりました。また、7月8月の2回の活動を体調不良で欠席したため、やっとやっと満を持しての参加となりました。
 お天気はまたもや雨で(体調不良でお休みした2回は晴天だったので、やはり雨女は自分ではないかという)、雨具をつけると蒸し暑かったけれど、足場の石や岩は濡れて模様がよく見えていました。途中までは、礫岩の中に大好きなオーソコーツァイトなどがたくさん含まれており、目を奪われました。白山登山(砂防新道)は初めてだったので、植物、生き物や地形など興味津々でした。
 南竜山荘付近では水の恵みを感じました。手取川の源流域は、こんなにも水が豊かなのかと。南竜庭園を通り、現場へ続く秘密?ルートへ。管理用道路とのことでしたが、継続的に施設の管理をするために、もちろん通行道も維持管理が必要で、少しほっておくと笹だらけになるとのこと。砂防という事業自体が大規模なものですが、そもそもの施工場所がとても山奥なので、施工のための調査から、施工するための準備、施工、施工後の管理、とにかく現地へ向かう。現地で作業するまでに時間と手間がかかるものだと改めて実感しました。
 白山の景観とも関わることか思いますが、火山の石が多く、クラック(割れ目)がたくさん入っています。水はクラックから下へ染み込んでいく。不動滝も水量が少なめのときは、上と下のほうは水があっても中間部は伏流水のような形になり、水がないときがあるそうです。そのようにクラックから地中に染み込んだ水は、恵みの水であるとともに、流れる方向によっては地すべりを引き起こすため、地すべりブロックとは別の谷に流すというわけです。大規模な地すべりブロックを排水等で数値管理して監視しているというのは、ほんの1年前までは全く知らなかったことなので、やはり何回聞いてもすごいなと思います。
 地すべりを引き起こす水を抜くという作業、パイプを通して地下の水を抜く、すべり面にパイプを乗せると、地すべりとともにパイプも滑るなどということは、昨年教えていただきました。今回は、地表を流れる水も選択的排水するという現場(とその施工の為の準備と管理も)を見せてもらいました。水の呑み口(取水するところ)と吐き口(別の谷に排出するところ)も実際に見学。地表を流れている水を排水するという考え方は先進的斬新なアイディアということでした。呑み口は、登山道から下の方に見える施設ですが、普段は入ることができないので、実際に見学できて何のための施設かや仕組みが分かり、感激しました。
 帰路、職員の方に、南竜分岐から別当谷方面の風景を見ながら、地すべり、土砂崩れなど地形の解説を受けました。「馬蹄形」という地形もキーワードかなと感じました。甚之助避難小屋付近も動いているので、動きを計測して、動きが危険水準を超えると小屋も使えなくなる可能性があるとのことでいた。
 昨年、初めて甚之助谷を見て、単純に何だかとてもすごいと思ったけれども、今回は実際に歩いて、間近で見て、少しずつ知識もつながってきて、「ゆりかごから墓場まで」ではないですが、地すべり発生地点から河口までを国や県市町村の職員の皆さんが誇りと愛情を持って砂防事業を行っていることをより一層感じました。
 特派員仲間に、南竜庭園から室堂付近に見える溶岩堤防という言葉を教えてもらいました。家に帰って登山ルートの本で調べると確かに用語として記載があるのですが、目の前にして、言葉で説明してもらうともう忘れないと思います。また、植生に詳しい仲間からは植物の名前(オオカメノキ、ハクサンカメバヒキオコシなど)たくさん教えていただきました。また、ハクサントリカブトの青紫色がとてもきれいでした。雨上がりには虹も出て、地域の恵みもまた感じました。
 砂防新道を歩荷(昔歩いて資材を運んでいた)さんに思いを馳せながら歩き、現在からこれからにかけての砂防の取り組みから、下流域の市井の暮らし、白山観光、下流のジオパーク一帯の観光資源との関わりなども、また考えるきっかけとなりました。
 
【S.N】
 今回のコースを歩いていると、これまでの活動で訪れた場所(砂防堰堤群とか無人化建機の現場など)を俯瞰できる。
 降ったり止んだりの小雨の中、自然観察大好きな私は学び見聞したことを反芻しながら『あつ そうか』とか『?』とブラタモリ風に地層の観察ポイントや甚之助谷の崩壊地形、万才谷排水トンネル呑口方面の風景を楽しみながら登山しました。
 2日目、朝方の雨音は小雨に、歩いているうちに雨も上がった。万才谷側にある呑口と赤谷側にある吐口を見学しました。歩いているこの下に長い年月をかけて完成した万才谷排水トンネルがある。融雪水や集中豪雨で呑口が岩石で埋め尽くされることがないように、排水トンネルが埋め尽くされることがないように、吐口周辺の崖崩れが起きないようにと思いつつ、工事関係者の方々のご苦労に思いをはせました。
 帰宅後、『白山砂防通信』を再読、ユーチューブで『もう一つの白山』を見ることによって更によく理解することができました。
 下山後、市ノ瀬砂防堰堤を滝のように流れる涼しげな景観に癒やされました。
 
【Y.B】
 昨年度は悪天候のため、行けなかった白山南竜山荘宿泊での手取川源流域調査の活動。天候を心配しつつ、砂防科学館へ集合した。久しぶりの白山登山で、気温も高い時期なので不安があった。中飯場の工事現場は先日見学したところだったので、記憶に新しかった。
 そこからいよいよ登山開始。すでに小雨が降っていたので、すぐに雨具を着用して出発となった。天候は降ったり止んだりの曇天ではあるものの、比較的歩きやすい気温だったと思うが、やはり歩き出したら蒸し暑かった。登山ガイドさんの先導で、とても登りやすく感じた。
 砂防新道を、仕事として利用し重い荷物を持って行き来していた先人達に思いを馳せながら、一歩一歩進む。登山道沿いの植物に目を向けたり、雨だからこそ出会えたハクサンマイマイに歓喜しながら歩みを進め、ようやく甚之助避難小屋へ。ここからの砂防堰堤の景色も相変わらず圧巻だった。風は結構強く、汗をかいていた身体がすぐに冷えそうだったので小屋の中で昼食を取る。甚之助避難小屋から上を見上げると黒ボコ岩が小さく見える。今回のルートではないので立ち寄らないが、またいつか行きたいと思った。
 標高2100m 付近の分岐地点からの南竜道は初めて歩く道。下からのやや強めの風が吹いていた。オオシラビソや、高山植物の花々の名前を同行したメンバーに教えてもらいながらの山歩きはとても楽しかった。天気もそれほど崩れることなく南竜山荘に到着し、夕食前に散策へ。工事現場に通っていた方々が使っていた建屋はそのまま残っていて、窓ガラスから中を見ることができた。ここから毎日、雨の日も風の日も、現場に通っていたと思うと本当に頭が下がる。南竜山荘はとても快適で、夕食後、薄い雲から太陽の光で、空がピンクに染まり、そこに虹が現れて、とても幻想的な光景で、それだけで来て良かったと感じた。
 翌日の天気もあまり芳しくなく、早朝は雨音がしていた。天気が良かったらご来光を拝みにアルプス展望台へ行きましょう!と言っていたが、断念することになった。朝食後はいよいよ現場見学へ。一般登山客が入れない管理用の登山道を案内してもらう。工事のために作業員の方が毎日使っていた道だと思うと、感慨深い。笹の原っぱをずんずんと進み、万才谷排水トンネルの呑口へ。こんな大変なところに、堰堤とトンネルを造っていたとは、本当に驚きばかりだった。それは地すべりを防ぐためにしている事業で何年もかけての工事ということも、恥ずかしながら砂防特派員になってから、教えていただいて知ったことだった。実際にこの目で見ることができて、とても良い機会だった。
 呑口を見学した後は、吐口のある赤谷へ。急な作業用の階段も崩れがちで恐る恐る下り、完成したばかりのトンネル出口へ。トンネル内に入ってみると意外と大きいと感じた、ちゃんと排水機能も確認できた。まだまだこの事業が終わりではないということを思い知らされた。
 南竜山荘への帰り道では、天気が急速に回復してきて、青空が見えてとても綺麗な景色だった。池塘が点在し、花が咲く白山は、本当に自然が豊かな山だと感じた。と同時に山に目を向けると、溶岩堤防がくっきりとわかる。下からの風で笹の葉がザワザワと山を登っていく光景は、本当に上り龍のようで美しかった。青空と、緑と、南竜山荘の赤い屋根がとても印象に残った。
 砂防新道を下りながら、昨日こんな大変な道を登ってきたのか?と思うほど、険しく感じた。国交省の担当職員の方々と砂防女性特派員の皆さんのおかげで、実りある手取川源流域調査活動でした。ありがとうございました。
 
【N.Y】
 新型コロナウイルスの影響や悪天候による中止などで、令和元年以来の源流域調査活動となりました。ここ数年山らしいところへは行っていなかったので、出発前は不安しかありませんでした。
 天候も最初から雨模様となり、カッパを着たり脱いだりの登山となりましたが、そのおかげで熱中症の心配が減り、「暑い、暑い」と言わなくても良い登山となったような気がします。
 翌日も雨模様で、残念ながら展望台でのご来光を見ることはできませんでしたが、天候は回復傾向で万才谷排水トンネルへ無事に行くことができました。工事中に見学したときはもちろん大勢の関係者の方々がいらっしゃり、盤台や階段、通路など多くの仮設施設がありましたが、通路以外はなく、呑口、吐口の構造物のみとなっていました。素人目には結構水量があるように思われましたが、どうだったのでしょうか。排水トンネルの働きについては、今後も何らかの形で追跡されるでしょうし、排水パイプや排水トンネルのメンテナンスもあると思われますので、これからもわかる範囲で注目していきたいと思います。
 寝食を共にし、和気あいあいのうちに終了した源流域調査。登山ガイドさんをはじめ、職員の皆さん、特派員の皆さんのおかげで筋肉痛もほとんどない状態で帰ってこられました。貴重な有意義な時間を共有することができ、皆さんに心から感謝申し上げたいと思います。

【A.Y】
 新型コロナ感染防止や台風の影響で延期となっていた手取川源流域調査活動が、小雨が降る中、8月24日〜25日に行われました。
 砂防新道を通り白山登山をする際、遠くから見え、いつも気になっていた甚之助谷地区地すべり対策工事。前回見学した時は工事中で、現場の方のお話や工事中の現場を見学したことを思い出しました。今回、万才谷排水トンネル工事が完成し、地下水が排水トンネルによって排水されることにより地すべりが抑制されていることを改めて理解しました。また、甚之助谷の地すべりが白山の自然を破壊し、また石川県民の水源である手取川ダムにも影響があることも教えていただきました。
 久しぶりの白山登山。少しの不安はありましたが、たくさんのお花や雄大な景観、すばらしい夕日などと白山を堪能することができました。職員・スタッフの皆様ありがとうございました。