金沢河川国道事務所

 第4回活動--令和7年8月26日(火)〜27日(水)

 令和7年度第4回活動は、手取川源流域調査を実施しました。第21期(令和5年度)以来2年ぶりの開催となりました。「手取川の始まりとなる源流域を調査すること」「甚之助谷地すべり対策事業として地すべりブロックへの地下水浸透を防ぐことを目的に整備された『万才谷排水トンネル』について学ぶこと」を目的に実施しました。
 砂防新道を進みながら、砂防新道がかつて工事用の道として利用されていたことを学び、かつての工事の大変さに思いを馳せました。
 また、砂防新道に生息する高山植物を学び、万才谷排水トンネルまでの道中も充実した時間を過ごしました。

 白山の奥地にて、建設機械や資材の運搬が困難な中でも立派な施設が整備されていることに、特派員の皆さんは感慨深い表情で熱心に学んでいました。
 実際に自分の目で地すべり対策施設を見ることにより、資料などで見ていた以上に白山砂防や甚之助谷地すべり事業への理解を深めることができた2日間となりました。
   
調査ルート
      
《万才谷排水トンネル》
 平成21年3月に工事を開始し、約13年半かけて令和4年10月に完成した排水トンネルです。
 万才谷排水トンネルは、地すべりの原因となる地下水が甚之助谷地すべりブロックに浸透する前に取水し、地すべりブロックの反対側に位置する赤谷へ導水することにより、地すべりの動きを抑制することを目的として設置されました。
万才谷排水トンネル位置図
万才谷排水トンネル断面図
 
呑口(取水側)   吐口(排水側)
   
★参加人数★
   3名

  • 第4回活動状況
★26日(火)★
 11:45 調査開始(砂防新道にて)
 12:55 休憩(甚之助避難小屋)
     (南竜〜エコーライン分岐経由)
 14:25 南竜山荘 着
 15:05 万才谷排水トンネル 見学

   
調査開始!   険しい登山道を
登ります
  南竜山荘が
見えてきました
万才谷排水トンネル吐口にて
   
万才谷排水トンネル
に向かいます
  万才谷排水トンネル
吐口に到着!
  取水施設を
観察する特派員
   
排水トンネル内部を
観察する特派員
  口立杭の解説を
受ける特派員
 
★25日(金)★
  7:30 南竜現場事務所見学
 10:00 下山開始
 10:50 休憩(甚之助避難小屋)
 12:30 調査終了

   
南竜現場事務所の
解説を受ける特派員
  霧に包まれながらの
下山となりました
  避難小屋での
雨宿りの様子
   
   
   
   
活動報告  特派員の代表的な感想
    
【M.M】
8月26日から27日にかけて、白山砂防現場見学会に参加しました。  初日は、南竜山荘から工事用登山道を通り、万才谷排水トンネルの吐口側のある赤谷へ移動しました。完成したトンネルの中はとても涼しくきれいで、気温計は9℃くらいだったと思います。そのまま歩いて奥まで進むと水が集まって落ちてくる所へたどり着きました。何本ものホースから水が排出されていました。ずいぶん歩いたような気がしましたが、全長は385メートルでした。  次はトンネルの呑口側へ移動です。トンネルの上の工事用登山道を通って、呑口のある万才谷へ移動しました。万才谷では、鉄板が川にスノコのように設置されており、その間から流れ落ちた川の水がトンネルを通って赤谷の方へ流れるようになっていました。  トンネルの呑口側と吐口側の両方を実際に見学できて、机上での勉強会よりも理解することができました。  南竜へ戻る時、ケビンの前辺りからはお花畑が広がっていて、工事の現場責任者の方が季節ごとの花についても、お話してくださいました。10年間も雪解け後から積雪期までの限られた季節を、白山と共に歩んで来られたのだなあと痛感しました。  2日目は、DVDで1期から4期までの工事のドキュメンタリーを拝見しました。工事の資材を運ぶロープウェイは、すでにケーブルが撤去されており、間もなくケーブルを支えていた鉄塔2基も撤去されるそうです。現在は、工事完了に伴い、解体作業が進められています。  山の厳しい環境下で、工事のための準備?撤去作業など今まで無事故でこられたのが何より、という言葉にはとても重みがありました。
 
【T.M】
初日は万才谷排水トンネルの呑口、吐口および内部の見学。 2日目は工事の全容をまとめた「もう一つの白山」の映像を視聴した。 トンネルは全長387メートルで発破による堀削が行われた。岩盤が固い所だと1回の発破で90センチしか進まず、1日に3回ほどとのこと。完成に3年を要した。内部の天井 は現場の状況を考慮して矢板工法で行われた。工事は山岳地帯のため降雪期には施行が不可能であり、また天候不良時にはヘリコプターによる資材(生コンなど)運搬が中止されるなど、自然条件に大きく左右されていた。作業員は週5日現場事務所に寝泊まりしながら従事していた。ピーク時には夜間も作業を行っていた。 トンネル内部は気温9度と低く、外気との差も大きく感じられた。厳しい環境下で工事が進められたことを実感した。また現場周辺は国立公園内にあり高山植物の群生地でもある。環境に十分配慮した工事が行われていた。機材や資材搬入のために設置された索道の撤去作業も見学することができ、工事終了後は環境を元に戻す取り組みがなされていることも理解した。 今回の見学を通じて、地すべり対策工事が長期にわたって計画的に進められること、 また自然環境と共存しながら施工が行われていることを学んだ。特に、天候や地形と いった自然条件に左右されながらも地域の安全を守るために多くの労力が注がれている点が印象的であった。 私自身、白山登山の際に目にした砂防堰堤や索道設備を見て、「この長期にわたる工事は何をしているのだろう」と疑問を抱いたことが、砂防特派員を志すきっかけと なっている。今回の見学によりその背景や目的を直接理解できたことは大きな収穫であり、今後の活動に活かしていきたい。

【T.S】
昨年度は悪天候のため、行けなかった白山南竜山荘宿泊での手取川源流調査の活動。今年度 も開催予定日前後は晴れの予報になっていたが、当日は不安定な天気との予報で直前まで催行できるかどうか心配だった。しかしながら、初日はなんとか大丈夫そうとのことで行く ことが出来た。 今年はことのほか気温も高く、体力的に不安な登山だった。中飯場の工事現場駐車場まで行き、そこからいよいよ登山開始。薄曇りの天気だったが、やはり歩き出したら蒸し暑くて汗だくになった。登りながら見かける植物等(ダケカンバ、ハクサンカメバヒキオキシ、ミズキ、 センジュガンピ、サンショウウオのオタマジャクシ等)を説明してくれたので、上がっていた息も多少落ち着いた。甚之助避難小屋は登山客が休憩をして賑わっており、 私たちも軽食をとってから南竜山荘に向けてさらに歩みを進めた。標高2100m 付近の分 岐地点からの水平道は、下からの風が吹き抜けており、前回転倒してしまった道でもあるので、特に注意深く歩いた。道すがらの斜面に咲いている高山植物の花々を見ながら、南竜山 荘の赤い屋根が見えた時は、素直に無事に到着出来て嬉しかった。明日の天候への懸念から、 予定を繰り上げて、夕食前に現場研修に行くことになり、すぐに飛島建設の日谷さんの先導で、万才谷排水トンネルの吐口のある赤谷へ。一般登山客が入れない管理用通路を進み、 急な傾斜の階段状の道を下る。今回は385mのトンネル内を集水溝まで歩いて見学させていただけた。トンネル内の温度計は10℃で、とても涼しく感じた。8本の管から水が集められ、排水されている様子を実際にこの目で見ることができ、貴重な体験だった。その後、現在進行形の4期工事である索道撤去工事現場を見学。徐々に解体される索道と支柱はなんだか哀愁を帯びた建築物に見えた。長期間にわたる大工事を無事にやり終えて欲しいと 願うばかりだ。吐口を見学した後は、トンネルの上にあたる地上を歩いて呑口へ。左右両側 は笹が生い茂る中を歩き、風で葉が擦れる音を感じ、遠くに役目を終えた索道の支柱のシルエットが見える、なんとも言えない光景だった。取水堰堤付近の地形も間近で見ることが出 来た。南竜山荘への帰り道では、名残惜しげに咲くクロユリやハクサンコザクラ、ミヤマダ イモンジソウ、花が終わったチングルマも見ることができた。山荘に着くとすでに夕食時間で、バタバタと荷物を置き食堂へ。皆さんと共に楽しい食事時間を過ごせた。 翌朝は予報通り天気は悪く、外は濃霧。朝食後、南竜山荘の下にある現場事務所にて、「プロジェクトX」並みのドキュメンタリー映像「もう一つの白山(通水編)」を視聴させても らった。当時の工事の状況が克明に記録されていて、とても見応えのある資料だと思ったの と同時に、自然の偉大さと、それと共存する工事関係者への畏敬の念を再認識した。日谷さんの長年にわたる工事の実体験の話は大変興味深く、聞き入った。天気も下り坂となり、下山することとなったが、ますます雨足が強くなり、雷雨の中、山を歩いたのは初めてだった。 これも貴重な経験として印象に残るであろう。下山の時に毎回思う。「昨日こんな大変な道を登ってきたのか?」と。雨も激しいので、より慎重に歩かねばと必死だった。全身ずぶ濡れ、荷物や資料も濡れてしまったが、なんとか無事に家路につけて本当によかった。そして、 午前中の雨は、一体何だったのだろうか?というほどに、夕方近くには、すっかり晴れたの は驚いた。今回この活動に関わった皆様と特派員の皆さんのおかげで、大変実りある手取川源流調査となったと思う。お疲れ様でした、そして、本当にありがとうございました。