金沢の自転車施策は、これまで大きな災害や戦災を免れてきた城下町特有の狭い道路空間を活かし、「歩行者・自転車・クルマのそれぞれが、安全に安心して通行できる“人中心” の道路交通環境の創出」を基本理念として進められてきました。この10年のあゆみを3つの時期にわけて振り返ります。
歩行者を守る視点から自転車通行空間整備に着手し、多様な関係者の連携、合意 形成手法を試み確立
「まちのり」の導入や「ガイドライン」及び「ネットワーク」の策定を通じて、自転車利用環境の基盤を構築
まちなかでの実績をもとに、広域的な観点での自転車通行空間整備やルール・マナーの広報・周知等をさらに推進
10 年間にわたる自転車利用環境整備を通じて、継続的・効果的な自転車施策の展開に欠かせないキーワードとして、①連携、②勉強会、③調査、④ガイドライン、⑤ネットワーク、⑥フォローアップの6つが挙げられます。これらのキーワードについて、重要なポイントを解説します。
既存の道路に自転車通行空間整備をするには、継続的な検討体制が必要です。あらゆる立場の関係者が参加し、現状・課題の共有、整備内容に関する関係者の合意形成とそのプロセスが重要になります。
勉強会の目的は、国・県・市・警察による一年間の取り組みを発表し、その経験を共有することにあります。勉強会は新たに自転車施策にかかわる担当者の学びの場でもあります。
歩行者・自転車・バス・クルマ等それぞれの立場での一方的な思い込みや、固定的・画一的な見方になることがあります。客観的データが得られることで課題が明らかになり、説得力のある合意形成が行えます。
自転車通行空間整備に関する共通ルールを設けることで、統一的な整備ができます。2013年8月には国道・県道・市道の統一基準となる「金沢自転車通行空間整備ガイドライン」を策定しました。
協議会では、「広域的な自転車ネットワーク候補路線」を選定し、市民や道路管理者が将来像を共有することにより、整備促進に前向きな姿勢が生まれます。
ハード整備の効果を高めるためには、協働で進めるソフト対策(街頭指導など)が重要になります。協議会では、整備前後の事故件数を分析するなど、常に改善策を提示できる態勢で臨んでいます。
国道359 号(浅野川大橋~山の上間)における自転車走行指導帯整備後の12 時間交通量調査結果(実施主体:金沢自転車ネットワーク協議会、実施時期:2015 年度、実施時間:7 ~ 19 時)
一般県道倉部金沢線及び一般県道窪野々市線における自転車走行指導帯整備後のアンケート調査結果合計値(実施主体:石川県、実施期間:2015 ~ 2016 年度)