中学生の部 銅賞作品 「犀川との出会い」 野口 愛生 塩尻市立広陵中学校

 この夏、私は、生まれて初めてのちょっとした冒険体験をしました。それはラフティング。
 感想から言うと、こんなに楽しくスリルを味わえる遊びは経験したことなく、九十分という川下りがあっと言う間でした。場所は犀川、川幅は広く水の色は太陽に照らされてエメラルドグリーンにキラキラ輝き吸い込まれそうでした。その日はボート八隻が午前の部にスタートします。私は家族と友達の家族三人とガイドさん一人の計七人で一隻のボートに乗り込むのですが、その前にぬれても良い様にウェットスーツ、その上に救命衣に着替えてヘルメットをかぶり、オールを持ち、姿形だけみるとそれはまるでプロの様でした。
 そして、事前講習は十五分程ですが、水の中に落ちた時の対応の仕方、ボートの中への引き上げ方、泳ぎ方等教えてくれましたが、私は落ちる事はまず無いだろうと、ぬれても水しぶきがかかるだけだろうと、万が一落ちたらなどという事さえも考えていませんでした。そんな気持ちの中でのスタートです。まず自分達の乗るボートを川の渕まで運び、少し勢いをつけ全員が乗り込みます。それからです私の初体験川落とし。
 皆で声をかけ合い、オールをこぐのですがガイドさんが水の流れのゆるやかな場所に来てはボートをゆらしたり傾けたりしてくるのです。私はあわててオールを離しボートの端につかまると、オールを離してペナルティ一点、それが貯まるとバツゲーム、他のボートに移って水をかけられる。そんな事を繰り返すうちにとうとう自分をささえきれず水の中へドボン。しかし救命衣のおかげでしずまないのが嬉しい。私は間違って落ちたと思ったら私達のボート全員ドボンドボンと水の中。他のボートはボートごとひっくり返る始末。でも皆笑ってそれはそれで楽しんでいる様でした。この時です講習の大切な意味を知ったのは。そしてラフティングの醍醐味を知ったのです。川の水は淀みがなくきれい。でも川の中、しかも長野県北部を流れる犀川ですから水は冷たいだろうと思っていたら、ほどよい冷たさでここち良く、水面から先を見ると魚までもが水辺をはねていました。それだけで私は感動し、何か自然と一体になれた気がしました。
 そして途中上陸して岩の上からダイビングも合わせてゴールまでの間に計四回も水のここち良さを味わわせてもらいました。ラフティング中、所々にテトラポットがあり、そこはだいぶ深い所だとガイドさんが言っていました。そして上陸した場所は地層が出来ていて、よく探せば貝の化石も見つけることが出来るとの事。まるで海のようでした。しかも川なのに波があり、その波の上に乗るとボートが大きくゆれ、思わず声をあげてしまうスリルです。川幅も広いので所々に大きな岩があり、そこに故意にぶつかったり、水の深い所では、川底に岩があっても水面まで顔を出していないので岩の上にボートが乗り上がったりして、そこから脱出するのに悪戦苦闘したり、川の水でぬれているのか汗でぬれているのかわからないほどでした。
 その日のボートも八隻無事生還し、皆でバンザイしました。このラフティングはなかなかハードですが、過去に事故は一度もないそうです。これもしっかり免許を持ったガイドさんが指導をしてくれる事と、犀川の水流とラフティングの条件が合っているからだと思います。
 犀川は信州松本および安曇野を中心として長野県北部を流れる川。松本市街を過ぎたあたりで田川、薄川、女鳥羽川と合流し、最後は高瀬川と合流し、水量の多い川となり、日本海の大うなばらへと変わっていきます。昔は雨の量が多く時にあばれ川となった犀川ですが、現在はダムで調整されていて被害は聞かれません。
 魚とイワナ、ヤマメ、ニジマスなどが放流されていて、中では明科から逃げてきた魚もいるという話です。犀川は蛇行を繰り返しながら流れており、カーブが多い事からここの魚は身がしまって味が良いと言われています。
 アルプスの清流を集める犀川ラフティング。日本の風景の中を下るさわやかさ、照りつける満足感、この気持ちを皆に味わってもらうには地球環境を良くしていかなければならない。ゴミを無くし、水辺を清潔に保ち、どの川にも魚が泳げるような環境作りが大切だと思います。
 ぜひ一度ラフティングを体験し、犀川のすばらしさを自分自身で感じてもらえたらと思いました。
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