中学生の部 金賞作品 「百々川の音」 中田 悠喜 須坂市立墨坂中学校

 わたしは今、十四歳です。わたしは、この町で十四年間のときを過ごしてきました。その生活の中でわたしが毎日聞いている"音"があります。家族の声、工場の音、車の音、電車の音など、わたしの周りにはたくさんの"音"があります。しかし、その中でもわたしが一番良い音だ、と思うのは、川の"音"です。
 その川の名前は「百々川」です。名前からして、とてもインパクトのある川ですが、わたしはこの川がとても好きです。わたしの通う墨坂中学校は、この川のすぐ近くにある学校です。この墨坂中学校の校歌の二番では、百々川について歌われています。校歌の二番はこうです。
 川の瀬音の絶え間なく
 遙かに望む飛騨の雪
 重き使命 心ひろびろ
 われら励む
 ああ墨坂 われらが母校
この二番の始めの部分で、"川の瀬音"という言葉が出てきます。この"川の瀬音"とは百々川の流れる音のことです。確かに、川沿いの墨坂中学校では、休み時間や授業中、部活動のときなど、いつでも百々川の「ドー…」という音が聞こえています。暑い夏のクーラーのない教室での授業のとき、この音を聞くと、とてもいやされます。
 わたしがこの"音"を聞くのは、学校だけではありません。わたしは家でも、このかすかな「ドー…」という音を聞いています。わたしの家は、百々川から直線距離で三百メートル程しか離れていません。なので、いつも北風に乗ってやってくる川の音を聞くことができます。わたしの家は米持町の工業団地の真ん中にあるので、いつも鉄と鉄がぶつかる音、「キーン」というけずれる音などがよく聞こえてきますが、遠くでかすかに鳴っている、「ドー…」という川の音を聞くと、とてもホッとします。他にも、わたしは学校に通う際、百々川にかかる橋を渡っているので、わたしは本当に川に密着した生活を送っている、ということになります。
 中学生となった今ではさすがにしていませんが、小学生の頃、よく友達と一緒に百々川で遊んでいました。主な遊びとしては、サンダルで川底を歩いたり、深さを調べたり、水のかけあいっこをしたりと、とても楽しくやっていたことを覚えています。これは百々川の隣りに流れている鮎川の話になってしまいますが、この川では、男子がよく魚釣りに来ていました。中学生になった今でも、鮎川の上流の上八町の方で、釣りをしている人がいるそうです。
 こんなに楽しく、さわやかな川との生活はとても幸せです。しかし、今、大きな問題となっているものがあります。それは、水害と水質汚染です。
 まず水害についてです。つい先月には大雨が降り、川が増水しました。それで、わたしの住む中流の地域に影響はありませんでしたが、急激に川幅が狭くなっている下流の地域では、避難勧告が出されました。その時の百々川と千曲川の増水の程度にはとても驚き、わたしが「うちもまずいのではないか」と思ったくらいでした。改めて、水の恐ろしさ、というものを感じました。
 また、水質汚染、つまりゴミです。わたしは犬を飼っていて、よく百々川の河川敷で散歩をするのですが、この時期、花火大会の客が捨てていったお弁当のカラ、ペットボトル、お菓子の袋や花火の燃えかすなんかも落ちています。しかも、ペットボトルなどのそういうゴミを、テトラポットのすきまとか、見えにくい所に落としていったりしています。本当に悪質な行為だと思います。このままにしていたら川はゴミだらけになってしまうでしょう。しかも、川は海につながっていることを考えると、とても悲しい気持ちになります。
 このようなゴミを減らすには、須坂市で川をきれいにするイベントをやって、地域の人の川への意識を高めたりしていくことが大切だと思います。わたしは、もしそのようなイベントをするようなことがあるならば、積極的に参加したい、と考えています。
 今のこの美しい川のせせらぎを、十年後、そして百年後の世代にも聞いてもらいたいです。そのために、今から動いていくことが大切だと思います。この、川に囲まれた幸せな生活を続けていくために。
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