中学生の部 銅賞作品 「岡田川とぼく」 林部 翔平 長野市立篠ノ井西中学校1年
岡田川は、篠ノ井を流れているおだやかな川だ。この岡田川はぼくの家のすぐ近くを流れている。
 ぼくはこの川で何回も遊んだのを覚えている。
 毎年夏になって暑い時、サンダルのまま、とうめいな川の中に入った。夏の岡田川はとても冷たくて、その冷たさが足の裏から体、顔へと伝わってぶるっとふるえる。
 このぶるっが来ると夏が来たなぁっという感じになる。
 その冷たい川の中で網を片手に、フナやザリガニ。そしてナマズや名前も知らないような大きな魚。こういうやつらを捕まえては顔を見合わせ笑っていた。
 そしてそんな大きな魚をとった後は、真っ赤なスイカをごちそうになって種飛ばし大会をやった。
 そんな楽しい夏の日を過ごしていたある日。ぼくは自転車に乗って全速力で友達の家へと向かっていた。
 そのとちゅう、岡田川にかかっている橋を通ると一台の車が止まっている。中に乗っていたのは、今風の暗いジャンパーを着たロン毛の男の人だった。
 その男の人は、なんと車の中にあったゴミを岡田川にどさっと捨てて、さっさと車に乗りどこかへ行ってしまいました。
 ぼくは、ぼう然としたがすぐ岡田川の様子を見てみた。男の人が落としていったビニールぶくろやたばこ。それにおかしの紙やコンビニ弁当の空箱が川にういていた。
 それと、そうとう重い物を落としたのか川の底の砂が、もんもんと巻き上がっていて水が茶色くなっていた。
 ぼくはまだボー然としたまま流れているゴミを追って、橋の反対側にうつり川をのぞき込んだ。
 川の中では太陽の光に反射してにじ色に輝いている魚が群れをなして、すずしそうにゆったり泳いでいた。
 しかし、そこへ男に人が捨てていったゴミと、ゴミの重さでまい上がった砂が押しよせてきた。
 魚たちは必死に泳いでゴミからにげていました。ぼくはそれを見て友達の家に行くのをわすれて魚の後を追った。
 ゴミからにげていた魚たちは、ついに捕まりゴミの中に消えていった。
 それを見ていたぼくは今まで何にも考えられなかった頭で、くやいし、と思った。今考えてみると、なんでくやしいと思ったんだろうと自分でも不思議だ。普通は魚たちがかわいそうだなぁとか、ゴミの中に入ってしまって心配だなぁとか考えると思う。
 でもぼくは、自分がいじめられているようにくやしかった。
 今の自分なりに理由を考えてみると、ぼくは岡田川に深い思い入れがあったんじゃないかなぁと思う。
 毎日夏の日には遊ばせてもらって、自然のめぐみというのを、たくさん感じさせてもらった。だからぼくはこの岡田川を友達のように感じていたんだと思う。
 その大事な友達を、いためつけられたような気がして妙におこっていたんじゃないかなぁと考えてみた。
 実際そうだったのかは分からないけど、その後友達の家に行ってもとてもむしゃくしゃしていた。
 そんないやな出来事があってから、また数日たったある日。今度はお店に行ってお菓子を買おうと岡田川にかかった橋を通ると、今度は川の岸にはほっかぶりをしたおばさんが一人でゴミをひろっていた。
 ぼくはなんだが、よく言われてる「このごろの若いやつはだめだなぁ」というのが理解できたような気がしてとてもさびしくなった。
 ぼくはその日から色々と考えてみて一つ思いついたのが、ボランティアで岡田川の上流から下流までゴミひろいをしながら歩いて行くということだ。その考えはもちろん今のぼくでも賛成だ。ゴミひろいをすれば岡田川に親しみがわいて川へのポイ捨ても少なくなるんじゃないかと思う。
 ぼくは篠ノ井に生まれたからには岡田川を大事にしていきたいと思う。すごく思い出深い川だから。
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