食器の小判
 むかし、村松浜(むらまつはま)に三平(さんぺい)という猟師が住んでしました。三平は貧しい暮らしをしていましたが、とても信心ぶかい男でした。「一生に一度でいいからお伊勢(いせ)まいりをしてみたい」と口ぐせのように言っていたのも、その信心ぶかさのあらわれです。

 お伊勢まいりに行けるようにと、三平は毎日海へ出て、漁をした売上から少しずつお金をためていました。そのかいあってようやく伊勢へ行けるお金ができたので、ある日、家のことを奥さんにたのんで出発しました。

 伊勢に着いた三平は、とある神主(かんぬし)の家に泊まり、さっそく大神宮(だいじんぐう)へ参拝(さんぱい)しました。
 すると、参拝者のほとんどが、太々神楽(だいだいかぐら)を奉納(ほうのう)しています。三平はせっかく伊勢まで来たのだから自分もと思い、奉納料を聞いてみたところ七両二分という話です。三平にとってはたいへんなお金で、とてもはらえる額(がく)ではありません。

 仕方がないので、すごすごと宿へもどり、このことを神主に話しました。すると神主は「ことしの秋までならかしてあげましょう」と言ってくれました。

 三平はぜひとも奉納したかったので、後で返す苦労(くろう)も考えずに借金(しゃっきん)をしました。そして太々神楽を奉納し、心ゆくまで伊勢参りを楽しんで帰ったということです。
 家に帰った三平は前と同じように海へ出て漁をしていましたが、いつのまにか借金のことを忘れていました。そのうち秋がやってきました。

 そしてある日、三平にお金をかした伊勢の神主がはるばるたずねてきたのです。神主はまず庄屋(しょうや)の家に行き、三平にお金をかしたことを話しました。それを聞いた庄屋はすぐに三平を呼びつけて、返すように言いつけました。

 三平は神主の顔を見て、ようやく借金のことを思い出したのですが、七両はおろか一分のお金も手もとにありませんでした。
 こまってしまった三平は、「こんや、庄屋さんといっしょに家に来て下さい。その時お返しします。」とてきとうな言いのがれをして家にもどってきました。

 それから三平はいろいろ考えたのですが、「借金を返せないような男は生きている価値(かち)がない。2人にはごちそうして、自分は海へ出て死んでおわびをしよう」と決め、奥さんに夕食のしたくをするように言いつけて海へ出ました。

 沖まで来たところで、三平は海へ飛び込みました。しかし重りをつけていなかったので、しばらくして浮かび上がってしまいました。

 ところが海の底までしずんだ時、苦しまぎれに何かをつかんできました。
 見ると、重い物が入っているふくろです。月明かりでひもをといてみると、中には小判がぎっしりと入っていました。三平はよろこんでこれを持ち帰りました。

 その夜、神主は庄屋とともに三平の家をおとずれました。そして目の前に出された夕食を食べようとおわんのふたを取ってみると、中にピカピカ光る小判が入っていました。2人は夕食を食べ、礼を言って帰っていきました。

 その後、三平は大金持ちになって「村松浜の長者(ちょうじゃ)」といわれ、村人から尊敬されるようになりました。
 人々は、三平が日ごろから信心ぶかかったことから、伊勢の神様がお金をめぐんでくださったとうわさをしたということです。

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