関川流域委員会「第1回環境専門分科会」 議事要旨
日時 : 平成15年8月18日(月) 10:30〜12:30
場所 : ホテル センチュリーイカヤ
1.概要
 住民意識調査の具体的な内容、調査対象世帯抽出方法及び事前広報等のワーキンググループ案について議論し、第7回関川流域委員会に向けた作業手順等について合意した。

2. 住民意識調査について
心理プロセスに関するアンケート項目案(資料−9)について
( 1 ) 本質問項目は、流域住民の関川という環境に関する心理プロセスが、地域あるいは水害を経験した・経験していないというような過去の履歴によってどのように違うのか、あるいは全体としてはどのような傾向にあるかということを把握しようというものである。
( 2 ) これまでの研究により、心理プロセスのうち、水害に関してはリスク(危険)の認識が一番大きく関与していることが分かってきている。また、河川の整備については、責任の帰属(責任が自分たちにあるということ)が比較的関心・動機等と高い相関を持っており、生態系の保全については対処有効性(やったことが有効であるかどうか)が効いていると言われている。なお、水害に対するリスク(危険)の認知度合いには、顕著な地域差が認められている。
( 3 ) これまでの研究により、地域差を明らかにして、地域差があることを十分に知り、何らかの方法でそのギャップ(隔たり)を埋めようとしない限り、合意形成になかなかつながらないことが分かってきている。
( 4 ) 治水関連と河川環境関連だけで調査すると、他の環境に関する心理的なプロセスとの違い等が分からないので、「環境全般」についても質問項目として取り上げている。
( 5 ) 最初に「知識」について問うと後の「関心」「動機」等が影響を受けてしまうので、一般的に「知識」については後の方で問う。
( 6 ) これまでの研究により、環境問題に非常に関心を持っている人ほど、当該環境問題について「あまり知らない」と答える傾向があることが分かっており、単に「詳しく知っている」か聞くだけでは誤差が生れやすいと思われる。(「行動」についても同様の傾向があり、意識の高い人の方が控えめに回答する傾向がある。)

現状の評価に関するアンケート項目案(資料−10)について

( 7 ) 本質問項目は、上流から下流までの人々がどのように河川を評価しているのか、その構造を明らかにすることを目的としている。
( 8 ) 「好き」「嫌い」、「親しみがある」「親しみがない」といった比較的抽象的で主観的な部分というのは、今回のようなアンケート調査ではなかなか探りにくいものである。
( 9 ) 主観的で抽象的な概念は、より具体的で客観的なものが重なり合ってできていると考えている。このような階層的なモデルの中身を知るのに「パーソナルコンストラクト理論」があり、これは対になった形容詞的な言葉で評価するものである。本理論により「評価」「判断」「外的環境を一次的に感じ取る部分」などを調査すると、流域のぞれぞれの地区の住民がどういう構造で自分たちの環境を評価しているかが分かる。なお、河川整備を通して扱えるのは、外的環境を一次的に感じ取る部分である。
(10) 川岸の植生とか、あるいは川の中にヌルヌルしたものがあるから気持ちが悪いというような意識についても調査した方がよいと思う。
(11) 河畔林の問題を考える必要がある。
(12) 美化・治安等の観点から、河岸に草が生い茂ることが良いのか悪いのか意識調査してはどうか。(「自然的である」「季節感がある」といった質問項目でも補えるとは思うが。)
(13) 河川敷の草本と、川の中に入っている抽水植物とは役割が違うので、専門家に相談して質問項目を検討してはどうか。
(14) 河岸地の植生について、植生があることの自然性・快適性などに関する質問項目を入れたい。

クイズ案(資料−11)について
(15) クイズは、心理プロセスにおける「知識」の度合いを調べるために行うものである。(心理プロセスにおける「知識」に関する回答(「詳しく知っている」等)とクイズの正答率を地域間で相対的に評価することができるであろう。)

調査対象自治会の抽出について
(16) 調査対象自治会の抽出に当たっては、左右岸をある程度意識している。
(17) これまでの研究から、大体1自治会当たり50から60ぐらいの世帯に回答してもらえれば、統計的に有意な結果が得られることが分かっている。
(18) 災害を受けたことのある自治会と受けたことのない自治会を対にして選ぶ場合、両自治会があまり離れていると、離れている効果の方が大きくて、被災有無による効果が見えにくくなる恐れがあるので、比較的近い自治会を選んでいる。
(19) 近年被災がない市町村では、お互いに離れた自治会を選ぶようにしている。
(20) 集水域で分ける考え方もあるが、調査が煩雑になることから、自治会単位でその地域を代表せざるを得ないと思う。

回答者の属性について
(21) 河川改修が行われたため、年齢的に古い人たちは川の災害そのものが違う場所であったというように見ているようなので、留意する必要があろう。
(22) 回答者の居住期間を書いてもらう必要があろう。
(23) 性別の差が違いとして出てくることが考えられるので、性別を書いてもらうべきであろう。
(24) 家族で相談して記入する場合を考えると、性別を書いてもらっても意味がないのではないか。
(25) このようなアンケートの場合には大体主人が自分の考えを書いて、家族で相談することはあまりないと思う。

その他
(26) 直江津地区等の関川下流部に、関川ではなく「荒川」という呼称が残っているが、今回の調査では「関川」で通した方が良いと思う。

3.今後の予定について
( 1 ) アンケート調査票における質問項目の順番等について事務局で議論し、調査票(事務局案)を作成し、これに基づき次回委員会で議論したい。
( 2 ) 浸水実績と河川管理主体について整理した図面を次回委員会で配付してほしい。

4.その他
( 1 ) 「川向う」という言葉がある(川には市町村・集落の区切りなどがあると思う)が、川の対岸を見る場合と自分の側を見る場合とでは意識が違うのであれば、例えば放水路により区切られてしまうと、環境的に大きな隔たりを生んでしまうと思う。
( 2 ) 川というのは一定流量で一定の流速で流れるというのは大体本来間違いで、ちょっとした出水によるフラッシュ(出水による河床の洗い流し)などがあってしかるべきで、それでなければ川としての機能は果たしていないと思う。
( 3 ) 川岸の植生として、選択するよりは、とりあえず外国の木が生えても構わないのではないかと思っている。(基本的に長生きせず、更新していくため。)
( 4 ) 河畔に植物がない場所が決壊し、耕作したり河畔林が生えているところはずっと助かっている事例がある。(町ぐるみで河畔林を保全している事例がある。)
( 5 ) 左岸と右岸で意見が違うということはあまり聞いていないが、上・下流で意見が違う事例はある。ある河岸の木について、水の流れが悪くなるから切るべきだと言う人がいる一方、木の根で護岸を押さえているのだから切るべきではないと言う人がいて、討論に時間がかかった事例がある。
( 6 ) 防災と環境の関連について検討する必要はないか。
( 7 ) 個別の具体的な事項については利害関係があってなかなか合意できないが、できるだけ一般的・根元的なところでまず合意し、それから具体的な事項に踏み込んでいけば、そう悲観する必要はないのではないか。
( 8 ) 以前、子供達が水遊びできる一角を造る計画が浮上したことがあったが、賛成意見がある一方、子供達が危険ではないかとの反対意見があり、結論が出なかったことがある。(その後当該施設は造成されなかった。)
( 9 ) 比較的河川に関心があるのは下流の方の人たちで、どちらかというと関川では右岸側の人がより関心が強いように思う。なお、災害は左岸の方が住宅が多いことなどから多いが、面積的には右岸の方が多かった。また、歴史的に見た場合、特に保倉川については改修により蛇行の傾向が変わってしまったため、戦後生まれの人たちは以前のことは全然分からない。
(10) 以前、水害経験者と水害を知らない若い人の座談会の発言を取りまとめたことがあるが、非常に苦労した。
(11) 昭和39、40年頃の水害時には、城北中学校周辺は海のような状況であった。
(12) 排水がうまくいかないのは、実際に流れる方向とは違う方向に川、排水溝が計画されて造られているからであろう。
 
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