掲載日:2019年2月28日

第28回技術研究発表会開催

2月12日(火)、高田河川国道事務所工事安全対策協議会主催の「第28回技術研究発表会」が糸魚川市の「ビーチホールまがたま」にて、約160名の参加で開催されました。
本技術研究発表会は、現場を担当する技術者の皆さんが、日頃の業務を通じて得た新しい建設技術の活用や改良及び、施工管理の工夫や安全対策の取り組み事例などを情報発信することで、建設事業に携わる現場技術者の技術力の向上を図るとともに、良質な社会資本整備に寄与することを目的として平成元年度から行っています。

 

会場の様子

梅本副会長開会あいさつ

高田河川国道事務所工事安全対策協議会の遠藤会長(高田河川国道事務所長)が所用のため、会長に代わり、梅本副会長(高田河川国道事務所 副所長)より開会の挨拶が行われました。
「本日の技術研究発表会には、新技術・ICT、コスト縮減などの各分野に、「43社」から「62編」の論文の応募がありました。本日参加された皆様には、優れた事例「10編」の事例発表のほか、応募のあった他の52事例のノウハウについても共有していただき、より良い施工に取り組まれることと、現在施工中の工事が無事故で完了していただくよう、お願いいたします。」

梅本副会長による開会あいさつ

優れた事例「10編」を発表

今年度も62編と多数の論文応募がありました。論文を執筆された皆様には、工事施工のお忙しいなか大変ありがとうございました。テーマ別内訳は下記の通りです。

これらの論文のなかから、優れた事例「10編」を選定し、発表が行われました。また、発注者側から特別発表として、調査第一課より1編の発表を行いました。

長谷川副会長講評

長谷川副会長による講評

発表論文の審査委員を代表して、長谷川副会長(高田河川国道事務所 副所長)が講評を行いました。
「論文を発表された10名の皆様におかれては、大変お疲れ様でございました。発表の事前準備など、ご苦労されたと思いますが、本日の発表は、どれも大変すばらしいものでした。
62編の応募論文から、各現場における課題を解決するために、多方面から検討し、独自の工夫や改良等の対策を講じて、高い成果を上げられた、10編の論文を選定し、本日、発表いただきました。
それでは、テーマごとに講評させていただきます。」

①「新技術・ICT」のテーマからは、1編の発表がありました。

橋梁の掛替道路改良工事での、バックホウにセンサー等を取り付けるマシンガイダンスを使用する事例報告であり、「施工前準備」「実際の施工」に際し、導入効果、活用上の留意点、課題が整理されていました。
建設業の生産性向上に向けて、3次元データの活用やICTの導入は、避けて通れない技術であり、活用を検討する他の現場で、多いに参考となる論文であったと思います。

 

②「コスト縮減」のテーマからは、旧橋の撤去工事における桁撤去時の吊り穴孔数を減らす工夫に関して、1編の報告がありました。

下請け施工業者の方々と施工費縮減、施工時間短縮に向け施工会議を行い、吊り治具(じぐ)の設置、専用の吊りチェーンを使用するなど、工夫によってコスト縮減や施工の効率化を図ったもので、その発想、着眼点は、他工事においても、多いに参考にしていただきたいと思います。

 

③「施工計画・施工管理」のテーマからは、2編の発表がありました。

壁高欄(かべこうらん)ハンチ部の空気あばた対策として、型枠に透水性シートを貼り付けて良質なコンクリート面を形成することが出来た事例紹介でした。
もう一件は、橋梁下部工の基礎工として、ニューマチックケーソン工法という特殊な工法を用いた工事における課題とその対策、施工計画に関する工夫等についての報告がありました。
どちらも、それぞれの課題に対し、独自の工夫による対策、取り組みについての報告であり、他工事の参考となるものと思われます。

 

④「安全計画・安全管理」のテーマからは、河川工事で発生する土砂の運搬時における安全運行管理に関する1編の発表がありました。

運搬距離が約16kmと長く、運搬時期が冬期間となるため、道路除雪管理支援システム「みちレコ」を使用し、車両運行状況を管理したり、ドライブレコーダーの装備、巡視を行うなど、安全管理に努められました。
安全確保のための数々の工夫、対策、取り組みについての報告であり、他工事の参考となるものと思われます。

 

⑤「施工事例」のテーマからは、道路の維持管理作業において、1編の発表がありました。

締め固められた路肩の土砂、草根の撤去方法について、小型トラクターショベルに専用のツメを装着し、路面清掃車による吸引を行うことにより、作業員の負担の軽減、作業効率の向上を図った事例報告を行っていただきました。
現地状況を踏まえた独自の工夫による数々の対策、取り組みについての報告であり、他工事の参考となるものと思われます。

 

⑥「設計・計画」のテーマからは、海岸防災工事における施工方法の変更提案について、1編の発表がありました。

厳しい現場環境の中で、施工断面、工事用道路材等の変更について、現地状況を踏まえて適切な提案等が実施され、工期内に無事完工しており、他工事の参考となるものと思われます。

 

⑦「コミュニケーション」のテーマからは、橋梁掛替工事において、地域貢献への取り組みについて、1編の発表がありました。

現場は多くの観光施設等有する地区の重要地域であり、地域のまつりへの協力、清掃、幼稚園の遠足に協力等、
積極的な取り組みにより、地域に貢献する取り組み手法として、今後の参考となるものと思われます。

 

⑧「創意工夫」のテーマからは、2編の発表がありました。

一つ目は、橋梁補修工事として実施する、橋脚の断面補修工により発生するはつり殻の回収方法について、簡易シューターを設置することによりコスト縮減、工程短縮、安全管理の面で創意工夫を行った事例紹介でした。
もう一件は、道路の排水構造物として2次製品の側溝を設置する際に、専用の吊具を作成し、作業効率の向上を図った事例についての報告がありました。
どちらも、独自の創意工夫による取り組みについての報告であり、他工事の参考となるものと思われます。

「以上、10編について、講評を述べさせていただきましたが、いずれの発表も、図、写真等を用い、わかりやすく説明いただきました。
また、現場での課題認識とその解決プロセス、そして結果として効果が得られたこと、これらの実施内容は、同種工事への汎用性につながるものと思われます。
良質な社会資本を整備していくためには、本日お集まりの皆様の技術力の研鑽、向上が大変重要です。
皆様におかれましては、本日発表されなかった論文にも、目を通していただき、今後の工事で役立つ事例などは、大いに参考としていただければ幸いです。」

優秀賞に3編を選定

発表された10編の中から審査の結果、優秀賞3編と奨励賞7編を選定し、遠藤会長より賞状の授与が行われました。優秀賞は以下の皆様です。

優秀賞

桁及び橋脚撤去方法の工夫
歌高架橋旧橋撤去その2工事
株式会社伊藤建設  金井 寿樹 氏

ニューマチックケーソン基礎工事における施工計画について
妙高大橋架替下部その4工事
清水建設株式会社  中野 貴公 氏

路面清掃車を併用した路肩清掃作業について
高田管内道路維持作業
北陸パブリックメンテナンス株式会社  内山 岳人 氏

受注者の皆さんからの日頃のご協力に感謝

賞状授与の後に、遠藤会長より受注者の皆さんからの日頃のご協力に感謝が述べられました。
「今日、発表を聞くとそれぞれ切磋琢磨して些細なことでも、みなさんの参考になるという点では、非常にいい取り組み、研究会だったかなとおもいます。
それから私ども、発注者の立場からしますと、今日発表いただいたなかで冬期の施工であるとか、現場での設計変更における工夫などは本来であれば発注者としてそのような工夫が生じないように計画しなければいけないところではございます。そこについては受注者の皆さんから日頃、いろんな意味でご迷惑をおかけしつつもカバー、ご協力いただいていることもあるのだなとこの場をもって感じた次第でございます。この研究会が開催できましたことを本当にうれしく思います。本日はありがとうございました。」

受賞者の皆さん

荊木副会長閉会あいさつ

閉会にあたり、荊木副会長(株式会社上越商会 取締役社長)よりご挨拶をいただきました。

「今日は国土交通省高田河川国道事務所工事安全対策協議会の第28回技術研究発表会に足元の悪い中、大勢の皆さんからお集まりをいただきました。大変ありがとうございました。

最初に只今受賞されました優秀賞、それから奨励賞、10名の皆さん、受賞誠におめでとうございました。これを契機になお一層研鑽を積まれて、他の模範となるようご期待を申し上げます。

また、特別発表をいただきました北澤様、貴重な資料提供ありがとうございました。大いに勉強になりました。

さて私見ですけれども、今私達の生きている現代社会は、大きな構造変化のさなかにあると思います。人口が減ること、高齢社会を迎えていること、労働時間の抑制政策、あるいは地域間格差の存在などなど、そして最も喫緊の課題は、「担い手の確保」であろうかと思います。

建設産業を持続可能な産業とするには何が大事なのか、これを私達は今ほど真剣に考えなければならないときは無いのではないかなというふうに思います。「働き方改革」という言葉が今ございますが、切り口を少し変えますと「考え方改革」と言い換えてみてはいかがでしょうか。

行政ご当局におかれましては、引き続き安定的かつ持続的な事業量の確保をお願いいたします。私達が誇りの持てる地域の建設産業に育てていただきたい。先ほど、遠藤会長から大変暖かいお言葉をいただきましたが、これからも発表会が継続されますことを希望いたしますと共に、今日開催できましたことに感謝を申し上げます。ありがとうございました。」