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信濃川中流域水環境改善検討協議会

第11回協議会

第11回協議会では、以下の5点について協議が行われました

  • 第10回協議会の課題
  • 平成15年度現地調査結果の報告
  • 水温予測検討
  • 宮中取水ダム下流及び魚道の遡上環境について
  • 今後の水環境改善に向けた取り組みについて

第10回協議会の課題、平成15年度現地調査結果の報告

【事務局説明】

[水温]

  • 西大滝、宮中区間ともに試験放流期間中は天候に恵まれず、8月前半の天候の良かった日以外は、例年よりも水温は低い状態で推移した。

 

[水質調査]

  • 平日試験放流、休日試験放流日に放流水到達時刻にあわせて採水し、試験放流水到達前後で水質の比較をした。
  • pHが下流に流下すると上昇しているのは、主に付着藻類の活性が上がる(光合成が盛んになる)ため二酸化炭素が増加するからである。逆に川井大橋では採水時刻が夕方から夜間であるため、付着藻類の活性が低下しpHが低下している。ECについては差が見られなかった。
  • DOは、差があるように見えるが、これは採水時の水温の差により溶存する酸素量に違いがあるためである。飽和率で見ると差が無いことから試験放流による影響は見られなかった。
  • SSは、試験放流水到達後に増加しており、22.65m3/sと放流量が多いときは、より増加している。これは、放流量の増加により堆積している泥などが流されていることが覗える。BODは試験放流による影響は見られなかった。
  • T-Nは試験放流により増加傾向があり、22.65m3/s放流の方がより増加傾向であった。T-Pは10.13m3/s放流では試験放流水到達前後で差は見られなかったが、22.65m3/s放流では到達後に増加していた。

 

 

[魚類調査]

  • 十日町橋での確認種数は、2003年度は、6月の確認数が少なかったが、試験放流の影響を受けている8・9月、10・11月に増加し、年間では差がほとんどなかった。特に8・9月の確認種数は顕著に増加している。一方、百合居橋では、2003年度は、各季ともこれまでで確認種数が最も少なく、止水性を好む種が見られなくなった。
  • 捕獲数では、両地点ともに試験放流後、増加傾向が見られる。増加分はほとんどがオイカワ・ウグイの幼魚で占められる。

[底生生物調査]

  • 定量調査では百合居橋の緩流部では、夏季および秋季は試験放流前の1999年よりも確認種類数が増加している。十日町橋では種類数、個体数ともに試験放流後において明確な傾向は見られない。
  • 定性調査では、今年度は両地点とも1999年よりも確認種類数が増加していた。
  • 多様性指数で見ると、両地点とも試験放流開始後は種の多様性が増加した。

 

[付着藻類調査]

  • 付着板を用いた調査では、宮中取水ダム直下の流速が速い方がピークとなるまでの期間が遅く、ピーク時のクロロフィルa量も低くなっていた。姿大橋、十日町橋は、流速の速い方がピークとなるまでの期間が遅い傾向が見られた。
  • 自然石での種組成変化は、糸状藻類の割合が最大となるまでの期間がおよそ3週間から4週間であり、付着板調査でのクロロフィルa量がピークとなる期間と概ね同じとなっていた。このことから減水区間の付着藻類がピークとなるのは、今年のように水温が例年より低く、流量も多かったものの3週間から4週間であったと考えられる。
  • プランクトンネットを用いた流下藻類調査では、試験放流により堆積している泥が流されていることが確認され、特に22.65m3/sの放流では捕えた糸状藻類の割合が増加することから、糸状藻類を流していることが確認された。

 

 

[サケ遡上調査]

  • 2003年は、川井で捕獲したサケは65尾と昨年より20尾多かったが、宮中取水ダム魚道で採捕されたサケは、22尾と昨年の約半分であった。また、今年から開始した西大滝ダムトラップでは1尾採捕されただけであった。
  • 川井で捕獲した65尾にタグをつけて再放流したが、宮中取水ダムでタグのついたサケは1尾しか採捕されなかった。また、宮中取水ダムで捕獲し、タグをつけた22尾のサケは、西大滝ダムでは採捕されなかった。
  • 2003年は支川の魚野川で、昨年よりもサケの捕獲数が少ないことから、魚野川との合流部より上流の清津川、宮中取水ダム、西大滝ダムでのサケ捕獲数も減少したと考えられる。
  • 長野県が平成12年3月をもって稚魚放流を中止したことにより、サケが回帰する年数を考慮すると、今後、遡上数が減少する可能性がある。

 

【質疑応答】

委員:
魚類調査結果、底生生物調査結果、付着藻類調査結果から増放流の効果があることが明らかとなってきた。今後、この増放流の効果が、このプロジェクトが始まった当初の周辺住民等が期待していたものかどうかを検証する必要がある。また、その段階にきている。

委員:
底生生物調査結果の多様性指数は、出現種が多く、個体数のばらつきが少ないと多様性指数が高くなる。裏返せば、際だった優占種が少ないから多様性が高い。また、種の交代を示す置換率も考慮したらよいのでは?

委員:
環境が良くなると増加する昆虫など、指標となる生物や微環境に着目して整理すると増放流の効果がわかりやすい。

委員:
付着藻類調査は、自然石についてもクロロフィルaの分析等を実施したのか?流下藻類調査ではプランクトンネットが目詰まりをしなかったか?また、ネットでは細かなプランクトンが抜けてしまうので、採水で調査してはどうか?

事務局:
自然石について分析もしているが明確な傾向が出ていないので、ここでは紹介していない。ネットの目詰まりは起こしていない。採水での調査については今後検討してみる。

委員:
可能ならば、総放流量を変えずに流量を増加させて調査をしたらよいのではないか?

事務局:
今後、JRと協議していきたい。

水温予測検討

【事務局説明】

  • 2003年で比較的天候に恵まれ、降雨等の影響が少ないと思われる8月3日を計算対象日として、十日町橋、栄橋について、現況再現計算、放流量、放流時間等を変化させた場合の水温予測計算を行った。
  • 予測計算結果より、十日町橋では、試験放流の水温低下効果が見られるが、下流の栄橋では試験放流水が到達するまでに日射で温められてしまうため、水温低下効果が小さくなる傾向が見られた。また、35m3/sの一定放流の場合は、流量も多く、温められにくいので栄橋まで水温低下効果が続く結果となった。
  • 十日町橋、栄橋以外の地点では予測計算の再現状況は思わしくなかった。その原因は観測水温に湧水などの影響、流下する河川水の流速等の計算値が、実情とあっていないことだと考えられる。こうした問題の解消に向け、適切な水温観測地点の設定、実情にあった流況の把握、検証計算の追加を行っていきたい。

十日町橋予測計算結果 栄橋予測計算結果

【質疑応答】

委員:
十日町橋の結果で朝6時ごろの再現がおもわしくないようである。予測結果は参考になるので、今後、さらに発展させてほしい。

事務局:
モデルに地熱の影響を上手く取り込めていないことが原因であると思われる。今後、検討していく。

委員:
十日町橋付近は右岸から地下水が湧いており、その影響かも知れない。

委員:
湧水の影響をモデルに反映させるのは難しい。また、湧水のある場所は環境上悪いことはない。環境評価をする上では湧水の影響のない地点を選び、検討していきたい。

宮中ダム下流及び魚道の遡上環境について

【事務局説明】

[ダム下流部の流況から見た遡上環境について]

  • 現在実施されている試験放流にあわせた流況調査と、サケ遡上期に実験的にJRの協力により、ダム下流部の澪筋に近い場所のゲートから放流した場合の流況調査を実施した。
  • 現在の夏季試験放流の場合、中央部の7番ゲートから放流されており、流れの強い気泡流が発生すると共に、ゲート左岸側に循環流が発生する。その強さは放流量が多いほど強くなり、循環流に乗った魚類は左岸側の止水域に迷入する可能性がある。また、放流ゲートから魚道入口の流況は、ゲートからの放流によりゲート右岸側にも循環流が発生し、放流ゲートと魚道入口の距離が長い。一方、ゲートからの放流が無い場合は、澪筋から魚道まで連続した流れを形成し、他のケースに比べ、特にゲート下流部から左岸澪筋に向けての流れが弱い。
  • サケの遡上時期である秋季試験放流の場合、魚道近くの10番ゲートから放流されており、澪筋から放流ゲート付近までは連続した流れを形成し、ゲートからの放流により流れの強い気泡流が発生する。ゲート右岸側への移動を阻害された魚類は左岸止水域に迷入する可能性がある。また、魚道入口付近では複雑な流況を形成し、放流ゲートから魚道入口までの距離が短い。一方、澪筋に近い5番ゲートから放流した場合、澪筋から放流ゲート付近までは連続した流れを形成し、ゲートからの放流により流れの強い気泡流が発生し、他のゲートに比べ魚類は右岸側に移動しやすく、左岸側止水域に迷入する可能性は低い。放流ゲート右岸側に弱い循環流を形成し、放流ゲートから魚道入口までの距離が長い。

ダム下流部の流状  ケース1

[魚道内における遡上環境について]

  • 魚道内の流量を変化させた場合の、大型魚道、小型魚道、折り返しプールで流況調査を行った。調査は目視による観察、3次元流速計を用いた流向・流速観測とした。大型魚道の流量は3.66m3/s、2.61m3/s、1.65m3/s、小型魚道の流量は0.33m3/s、0.24m3/s、0.20m3/sの3ケースについて調査した。
  • 大型魚道の魚道プールでは、切欠きと潜孔が交互に配置され、それぞれから流速の大きい流れが発生するため乱流や気泡流が発生し、魚の遡上に影響を与えている。折り返しプールでは、水面が変動し整流が完全に行われず、遡上を困難にする横波発生の可能性があった。出口ゲート部では、泡の発生が多く、ゲートが下流側に転倒する構造のためゲート裏側に止水域が発生するため、魚がゲート裏側に回りこみ滞留時間が長くなるといった課題が挙げられる。
  • 大型魚道内の流況変化に対する調査結果では、流量を少なくすることで、泡や乱れの発生を抑制する効果がある。一方、あまり流量を減らすと剥離流が発生するという現象が起きる。今回の調査では2.61m3/sときは、大きな横波が発生した。
  • 小型魚道の魚道プールでは、越流部の流速1m3/sを超えており、泡の発生も見られるが、流れの乱れは小さく、概ね良好な流況と考えられる。折り返しプールでは、整流がなされており、特に問題点は見られない。出口ゲート部では、ゲートが下流側に転倒する構造のためゲート裏側に止水域が発生するため、魚がゲート裏側に回りこみ滞留時間が長くなるといった課題が挙げられる。
  • 小型魚道内の流況変化に対する調査結果では、傾向は大型魚道と同じであり、流量を減らせば泡や乱れは少なくなる。しかし、流量を少なくすると剥離流が発生する。

大型魚道における横波の発生状況 

【質疑応答】

委員:
潜孔は機能していないのでいらないと思う。魚道内の流量を決めるのは難しいがどのように考えているのか?小型魚道はロープを張れば底生魚ものぼれるようになる。大型魚道は流量を下げて途中に休める場所を設けるのがよい。呼び水をどうするかが課題である。

事務局:
具体的には来年度に検討するが、横波発生に対しては整流板を間に入れることなどを考えている。今の施設を活かして潜孔を塞ぐなど実験的なことをして検討していきたい。

委員:
昨年、1000トン規模の洪水があったが魚道、潜孔が埋まるといったことはあったか?潜孔は人が魚道に落ちた場合吸い込まれて危険なので、ない方がよいので、潜孔を塞いだ場合の実験を是非やってもらいたい。

事務局:
昨年は埋まることはなかった。実験的な検討については今後JRと相談していきたい。

委員:
過去に魚道内をのぼる魚の様子を水中カメラで撮影する調査をしたことがあるか?

事務局:
昨年行ったが、濁りで観察できなかった。

今後の水環境改善に向けた取り組みについて

【事務局説明】

  • JRに協力していただき、魚道機能や対応策について調査・検討を行う。
  • 水温予測モデルを構築する。
  • 今までの継続調査を続け、底生生物調査については、本日の委員の先生からの指摘事項をふまえて調査し、サケ遡上調査については、長野県の稚魚放流事業中止の影響のことも念頭において調査していきたい。

【質疑応答】

委員:
40トン放流での調査の可能性は?

事務局:
JRと相談して考えていきたい。

委員:
思い切った緩やかな魚道を提案してはどうか。

委員:
詳細な調査結果は地域住民にはわかりにくいので、放流の効果、今後の課題など、地域住民が理解できる解説版のようなまとめが必要ではないか?

事務局:
大事なことであるので、今後、がんばっていきたい。



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