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信濃川中流域水環境改善検討協議会

第10回協議会

第10回協議会では、以下の4点について協議が行われました。

  • 水環境改善の方向性再整理について
  • 水環境改善に向けた動きについて
  • 平成14年度調査結果の報告について
  • 今後の水環境改善に向けた取り組みについて

水環境改善の方向性再整理について

【事務局説明】

  • 信濃川における潜在魚類相として30の魚種から、減水区間で採捕数が少なくなった種(アユ、サケ、ニゴイ)、聞き取り・文献調査で減水区間での生息分布が減少したとされる種(カワヤツメ、カジカ、アユカケ)、現況分布と過去の生息域に関する情報がある種(サクラマス、ウグイ、ウケクチウグイ)としてそれぞれ3種ずつ選定し、試験放流前における減水区間での問題点を選定魚種毎にまとめた。
  • 減水区間での問題点は、生息のための適水温を上回る頻度が高い、餌となる新鮮な藻類が少ない、魚野川合流点での信濃川の流量が少なく、流速が遅いため遡上環境の悪化、床固め等の河川横断工作物による移動障害等が考えられた。
  • 水環境の改善が期待される取り組みとその効果として、試験放流による水温の低下、藻類に堆積した泥などの掃流効果、流量増加による良好な生息域の拡大、魚野川合流点での河床掘削による流量・流速の確保、および十日町床固の改修による遡上障害の軽減などが考えられた。

 

【質疑応答】

委員:
今まではサケばかりを対象として考えてきたが、特に春先、雪解けが終わった後、急に流量が少なくなってしまうことで、アユカケやカジカなどの遡上に影響があるようなので、今後、こういうサケ以外のほかの魚類に関してもどういうふうにしていったらいいのか考えていくということが信濃川の生態系の回復につながっていくのではないか。

委員:
今までより魚種を広げて突っ込んだ情報を整理して非常に有益だと思う。この中で河川形態の判断は非常に大事だと思うが、早瀬、平瀬、トロ、淵の判断の基準は、目視的にも大体感覚的に分かるが、淵はこういうものだ、早瀬はこういうものだ、水深とか流速とか、そういうものの分類基準をはっきりさせておいた方がいいのではないか。

事務局:
河川形態については、現地調査、目視も含む写真等の観察、瀬とか淵の存在状況を見ながら取りまとめた。

委員:
灌漑期の4月から9月まで、取水されて水が減る問題に関連し、アユカケやカジカの中卵型みたいなのは、水の少ない方、流速の少ない方が上りやすいというようなこともある。また、魚種の生態によっては、その時期までエプロンのところに生息して、好機とばかり上っていったりするものもいる。

水環境改善に向けた動きについて

【事務局説明】

  • 覚書に従い昨年度同様、宮中取水ダム、西大滝ダムでも、4月1日から11月30日まで試験放流が実施された。
  • 試験放流により、アユ釣りをする人の姿が見られ、河原の石にはアユのはみ跡が確認されるなどアユの餌としての新鮮な藻類の再生産が伺えた。
  • 協議会でサケの遡上に影響しているのではないかとの指摘のあった魚野川との合流点部の流況改善に向け、合流点部に形成されている砂洲中央部の掘削を実施した。
  • 十日町橋下流に設けられた床固は上下流の水面が不連続な状態となり、小型魚、底生魚の遡上環境が悪化しているのではないかとの前回協議会での指摘を踏まえ、底生魚にも配慮した改修・補修工事を実施した。

 

【質疑応答】

委員:
掘削した場所は砂洲が形成されている場所であるが、ここは、砂洲があることから堆積しやすい場所だと思われる。また、右岸のほうが、安定した瀬であると思われるが、なぜ、この場所を掘削したのか。

事務局:
掘削前から薄い直線の水道(みずみち)があり、掘削作業が容易である。また、右岸掘削だと、遡上の際に大きく曲がる必要があり、なるべく直線的に遡上できるように配慮した。

委員:
実際、魚野川は信濃川より水流が強く、右岸掘削だと遡上したサケが魚野川にいってしまうので、この掘削でよかったのではないか。

委員:
掘削場所の選定は難しい問題であるが、魚が上りやすいようにすることと、掘削の効果を長続きさせることが重要である。

平成14年度調査結果の報告について

【事務局説明】

[水温]

  • 水温は西大滝、宮中区間ともに7月中旬にまとまった雨による水温低下が見られ、データの欠測部分があるが8月下旬にも同様の水温低下が見られた。
  • 7月20日から8月末までの毎時間の水温を出現頻度の割合で見ると、西大滝区間では28度を超える水温はほとんど観測されず、宮中区間では試験放流が開始された2001年、2002年も28度を超える水温が観測されたが、2002年は前2年より出現割合が低下する傾向であり、30度を超える部分も減少した。
  • 今年から日射計設置により積算日射量と水温の関係の把握が可能となった。その結果、試験放流水が昼間に通過する十日町橋、妻有大橋では、7m3/sと10m3/sとの比較では水温が下がっているように見えるが、22m3/sとの比較ではあまり変化せず、22m3/sのときは河床との熱交換による水温上昇の可能性が伺えた。
  • 妻有、岩沢の夏のたまり部の水温は地中温度、気温よりも高く、また、本川水温よりも常に高い状態であり、地中温度は夜になってもあまり下がらない傾向が見られた。

 

[水質]

  • SSは、2001年、2002年は大きな値を示したが、これは降雨による増水で濁水が発生した影響であり、SS以外のpH、溶存酸素、BODは概ね環境基準値内で例年どおりの観測結果であった。

[魚類調査]

  • 昨年同様、十日町橋、百合居橋で、春、夏、秋の3回、魚類調査を行った。季節別の確認種数に大きな差はなかった。
  • 採捕数は今年の方が多く、オイカワとウグイの幼魚が大半を占めていた。
  • 十日町橋では外来種のオオクチバス、移入種のスゴモロコが、百合居橋では西日本に広く分布するオオキンブナ、外来種のコクチバスが初めて採捕され、底生魚のカジカは両地点で初めて採捕された。
  • エビ、カニ、貝類は、一昨年と比べ確認種数に大きな変化はなく、採捕数では、1999年よりも多い傾向となり、十日町橋ではヒメモノアラガイ、新潟県レッドデータブックに準絶滅危惧種として記載されているテナガエビ、百合居橋ではチリメンカワニナの採捕数が増えた。
  • 宮中ダム魚道の遡上機能調査のため、魚道でのトラップ、電気を利用した採捕器具による魚類調査と水中カメラ撮影を行った。魚道とその周辺ではウグイ、オイカワなどが多数採捕され、小型魚道の入り口ではアカザ、カジカ、ギギ、およびホトケドジョウなどの底生魚が数多く確認されたが、魚道のトラップ、折り返し部では確認されなかった。

 

[底生生物調査]

  • 試験放流前との比較のため魚類調査と同時期、同地点で底生生物調査を実施した。両地点とも種類数、個体数に明瞭な変化は確認されなかった。
  • 瀬の方では礫間に巣を作り有機物を捉える種、河床の堆積物を食べる種が多く、緩流部では付着藻類を食べる種が多く見られたが試験放流による大きな変化は見受けられなかった。

[付着藻類調査]

  • 十日町橋、百合居橋で素焼きタイルを設置し、3〜4日ごとに設置タイルの一部を持ち帰り、付着した藻類のクロロフィルa、フェオ色素、優占種などの分析を行った
  • 分析結果から、生長、枯死といったサイクルおよび優占種の変化などの様子が伺えた。
  • クロロフィルaの増減量を増水と試験放流によるインパクトとしてまとめると、大きな出水のときには剥離の状況が見られたが、試験放流そのものによるフラッシュの効果は明確には確認できなかった。

 

[サケ遡上調査]

  • 平成14年度の新潟県内の河川別のサケの採捕数は三面川、加茂川、名立川、能生川などで平成13年度や過去10カ年平均よりも多かった。
  • 今年の遡上調査では川井で採捕した45尾、宮中ダム魚道に設けたトラップで採捕した43尾のサケに、タグや発信器をつけて上流に放流した。
  • 川井では概ね毎日2〜4尾のサケが採捕され、そのほとんどが雄であり、宮中ダム魚道では概ね2〜4尾が採捕され、雌雄は概ね半々であった。
  • 川井で放したサケのうちに、明らかに遡上したのは8尾であり、その他は停滞、下降、または行方不明となり、宮中ダム上流で放したサケのうち12尾が遡上したが、その他は停滞または下降した。
  • 宮中ダム魚道で43尾のサケが採捕されたが、その内、川井でタグを付けて放流したサケが1尾しか採捕されなかったことから、川井で多くのサケが採捕されずに通過したと考えられ、信濃川本川では数100尾のオーダーでサケの遡上があったものと考えられる。

 

【質疑応答】

委員:
試験放流の開始以来、エビ・カニ・貝類は採捕数が増えているが、試験放流の効果によるものなのか。

委員:
試験放流の効果とは一概に言えないが、農薬使用の減少や水質浄化が大きな原因であると思われる。こうしたエビ・カニ・貝類の増加は信濃川全体の環境が良くなっている意味で、よいニュースである。ただし、年による変動もあるため、減水区間以外の場所での調査結果も考慮する必要がある。

委員:
付着藻類はその質、量、消長、生産速度などが複雑で、河川の水質、流況、季節により大きく変化する。今回の試験放流による流量では不明な点も多いが、適切な放流量の糸口をつかんだと考えられる。今回のような調査を行い、データを積み重ねることは大事である。

今後の水環境改善に向けた取り組みについて

【事務局説明】

  • 今年度の調査から底生魚等の一部の魚種について宮中ダム魚道の遡上機能の一部に改善の余地があるという認識を得たので、今後、さらなる調査を行い、その対応策について、JR東日本と共に検討を行っていきたい。
  • 長野県による西大滝ダムでのサケのトラップ調査が平成12年に終了し、昨年、一昨年は目視調査であることから、来年度は、西大滝ダムでのサケ遡上調査を東京電力と共に行いたい。
  • 魚類調査、付着藻類、水温等、引き続き調査を行い今後もデータを積み重ねていきたい。

【質疑応答】

委員:
今回の魚道調査で多くの魚類がいることを確認できた。その結果をふまえて、今後も環境を良くしていく上での有識者である委員の感想を伺いたい。

委員:
付着藻類調査でのインパクト評価では、剥離後の再生産と流量の関係を整理したが、このような調査結果は、今後の水環境改善の方向性の参考となる。

委員:
JR東日本と東京電力の協力は非常に素晴らしいことである。電気の使用量がこうした環境問題につながっていることを、もっと国民に問いかける必要がある。

委員:
付着藻類調査では、流量変動が大事であることが分かった。魚道でも協力をしていただき、流量を変動させてやる必要がある。周辺自治体の方にも関心を持っていただきたい。そのためには魚道を何とかしてやる必要がある。

委員:
現在の魚道の機能などについてどのような問題があると考えているのか。

事務局:
魚道調査結果から、折り返し部に底生魚が確認できず、こうした魚類が上ることを考慮すると魚道の改善の余地がある。他の魚種は魚道を利用している結果も得られていることから、今後は、さらに詳細な調査をして対応策を検討していきたい。

委員:
思い切った緩やかな魚道を提案してはどうか。

委員:
サケの遡上は、他の川では1000尾のオーダーであり、何十匹では少なすぎる。もっと、放流量を増やす必要がある。

委員:
魚道の設置を考えるときには、地域の事情に配慮する必要がある。

次回協議会の開催について

今年も環境調査等を進める予定であり、調査結果が分かるこの時期の開催を考えている。



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