中越地震と河川の被害
中越地震の概要
 10月23日17時56分頃、新潟県中越地方の深さ約13qでマグニチュード6.8の地震が発生し、震度計による観測が始まって以来初めて震度7を観測しました。また、同日18時11分頃にマグニチュード6.0、18時34分頃にはマグニチュード6.5の地震が発生し、いずれも最大震度6強を観測しました。

河川被害の概要
 信濃川をはじめとする多くの河川で堤防の亀裂や法面崩壊などが発生したほか、土砂崩壊による芋川の河道閉塞や妙見堰のゲート操作が不能となるなどの被害が発生しました。

 (地図中の○数字をクリックすると、その箇所の被災状況が表示されます。

@中之島町(現長岡市)長呂
 堤防天端亀裂
A長岡市三俵野
裏法面滑り
B長岡市妙見
門柱破損
C山古志村(現長岡市)大谷坪
河道閉塞

芋川の河道閉塞
 地震による地すべりによって、山古志村の芋川流域では5箇所で河道閉塞が発生し、そのうち寺野地区、東竹沢地区における河道閉塞は大規模なもので、集落が水没するなど多くの被害が発生しました。
◎地すべりの規模
  長さ    :360m
  幅     :230m
  想定深さ :25m
  土量    :約104万m3
◎河道閉塞箇所
  高さ    :31.1m
  最大長  :260m
  最大幅  :123m
  堰き止め土砂量:約30万m3
  最大湛水量:約39万m3
◎地すべりの規模
  長さ    :350m
  幅     :295m
  想定深さ :30m
  土量    :約130万m3
◎河道閉塞箇所
  高さ    :31.5m
  最大長  :320m
  最大幅  :168m
  堰き止め土砂量:約66万m3
  最大湛水量:約256万m3

復旧状況
 被災後は、降雨や河川水位の上昇等により堤体や河道閉塞が深刻な事態とならないよう、直ちにシート張り工や仮排水路設置などの応急対策が実施され、工法の検討を踏まえて本復旧工事へと着手しました。

【中之島町(現長岡市)長呂】
1.被災直後 2.応急対策後
3.本復旧工事 4.本復旧工事完了

【山古志村(現長岡市)東竹沢】
1.被災直後 2.応急対策(11月17日)
3.本復旧工事(12月17日) 4.本復旧工事完了

活かされる地震の教訓
 従来の土木構造物における設計では、構造物の供用期間中に発生する確率が高い地震動(「レベル1地震動」という)を想定した耐震設計が行われてきました。しかし、平成7年に発生した兵庫県南部地震を契機としたその後の耐震設計の改定により、対策地点において現在から将来にわたって考えられる最大級の強さを持つ地震動(「レベル2地震動」という)による耐震設計へと移行し、平成19年には「河川構造物の耐震性能照査指針(案)・同解説」が策定され、レベル2地震動対応の構造物設計や耐震点検が実施されるようになりました。
 
中越地震で被災した妙見堰は、クラックへの薬液注入、鋼板による巻立補強などを実施し、設計強度が確保されています。 同じく被災した信濃川堤防は、亀裂が入った部分の土砂の撤去、軟弱地盤の改良などが実施されました。

 現在改築中の大河津可動堰は平成15年度に特定構造物改築事業として事業着手しました。建設地点の河道計画と合わせ施設設計が進められる中、新潟県中越地震を受けたことから、河川構造物として本格的なレベル2地震動を考慮した設計を行うこととし、先行した形で耐震設計が行われました。
堰本体を支える基礎杭。太さ0.8m〜1.1m、長さ2.5m〜16.0mの杭が1560本打込まれています。
基礎杭の上に建設された堰柱。
(H20.6.28撮影) (H20.6.28撮影)
大河津可動堰改築事業全景 平成21年9月16日
大河津可動堰の完成イメージ
大河津可動堰改築事業の詳細は可動堰情報館をご覧下さい。

 近年は地震や降雨に伴う土砂災害が増加傾向にあります。土砂災害の種類や特徴、避難方法についてもご覧下さい。
  →土砂災害に関する情報を見る

 本ページで紹介した資料・写真は次の資料から引用しています。
○平成16年(2004年)新潟県中越地震による河川被害状況速報版(平成16年10月、国土交通省北陸地方整備局)
○平成16年(2004)新潟県中越地震土砂災害速報(平成16年10月、北陸地方整備局河川部・新潟県土木部)
○平成16年(2004年)新潟県中越地震芋川河道閉塞における対応状況(平成16年12月、北陸地方整備局中越地震復旧対策室・湯沢砂防事務所)
○中越地震による土砂災害(平成16年12月31日、国土交通省砂防部)
○「平成16年新潟県中越地震」による被害と復旧状況第2報〜復旧から復興へ〜(平成17年1月、国土交通省北陸地方整備局)
○平成16年(2004年)新潟県中越地震による土砂災害と対応(平成17年2月、国土交通省北陸地方整備局湯沢砂防事務所)
○新潟県中越地震 −北陸地方整備局のこの一年−(平成17年12月、国土交通省北陸地方整備局)
○可動堰回覧板 No.3(国土交通省北陸地方整備局信濃川河川事務所大河津出張所)
○新潟県中越地震に伴う土砂崩落による妙見堰等への影響検討について(平成18年度北陸地方整備局管内事業研究会論文)
○大河津可動堰改築における耐震設計について(平成18年度北陸地方整備局管内事業研究会論文)
○芋川災害復旧砂防事業の概要(平成19年4月、国土交通省北陸地方整備局湯沢砂防事務所)
○東竹沢砂防えん堤排水路転流報告会(平成19年12月20日、国土交通省北陸地方整備局河川部河川計画課・湯沢砂防事務所記者発表資料)
○河川構造物の耐震対策の経緯(国土交通省)


※著作権・リンクについて(信濃川大河津資料館HP準拠)

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