はじめに

第1章
新潟県中越地震の概要
第2章
北陸地方整備局所管施設
等の被害及び応急復旧状況
第3章
様々な支援の取り組み
第4章
北陸地方整備局所管施設
等の本復旧及び復興
第5章
地震発生後の動き
第6章
地域への情報提供
第7章
参考資料



国土交通省
北陸地方整備局


第7章 参考資料

第6節/復興へ向けた取り組み
復旧・復興関連の主なイベント・行事
1.新潟県中越地震1周年事業 震災復興ラウンドテーブル
2.中越地震から1年−「地震防災フォーラム」〜その時、情報はどう活かされたか〜
3.ふるさとニッポン・よりみち街道『中越』プロジェクト

2  中越地震から1年−「地震防災フォーラム」〜その時、情報はどう活かされたか〜
 災害時の情報収集と共有は、生命を結ぶリレーであり、特に「情報による被害の最小化」は最重点課題であるため、中越地震を振り返り、「今後の情報活用」や「行政と住民が果たすべき役割」などについて考えることを目的に開催した。
(1) 概要
開催日時: 平成17年10月22日(土) 13:30 〜 16:40
開催場所: 新潟グランドホテル
主   催: 国土交通省北陸地方整備局、新潟県、新潟日報社
(2) 内容
【基調講演】『なぜ、災害発生直後に情報が大切なのか』
 <講師:林  春男(京都大学防災研究所教授)>
基調講演
基調講演
 災害とは大規模で急激な自然環境の変化である。災害発生1秒目から最初の1カ月は応急対応期。その環境に適応できず、判断や対応行動ができなくなったり、誤った行動に陥るといった不安定な心理状態になりやすい。その後、命を守るための情報、災害に関する情報を集めたり知らせたりし始める。
 次に、生活情報や災害救援に関わる情報、再建に関わる情報を得たいと考える。それが新しい現実への適応で、それには「復旧」と「復興」という二つの形がある。
 「復旧」は災害前の姿に戻すこと。「復興」は災害後の現実に今の自分を修正して、新しいものをつくること。この復興は時間がかかる。復旧・復興の方向性は最初の2週間で出さないといけない。地震直後に流される情報を的確に整理・分析し、きちんとした計画を早くつくり、みんなに見えるようにすることが復旧・復興の第一歩となる。
 そして、復旧・復興を進めるためには、リーダーが重要である。情報は必要条件であるが、それだけでは災害対策はできない。情報を分析し、的確に意志決定を行うリーダーの存在や役割が重要である。

【パネルディスカッション】
パネリスト: 林  春男(京都大学防災研究所教授)、
桑原 眞二(NPO法人ながおか生活情報交流ねっと理事長)、
関  広一(小千谷市長)、
泉田 裕彦(新潟県知事)、
柳川 城二(国土交通省北陸地方整備局長)
パネルディスカッション
パネルディスカッション
コーディネーター:夏川 陽三(新潟日報社編集委員)

1)地震直後からの対応と情報ニーズ
1) <柳川局長>
 被害の全体像を早くつかむため、全力で情報収集に取り組んだ。特に、ヘリコプターが威力を発揮した。
被災者の対応で手が回らない市町村に対し、全国の関係機関から延べ12,000名が被害調査で支援に入った。
北陸地方整備局のホームページで被災、通行止め、復旧等の情報を掲載し、1日最大20,000件のアクセスを得た。
<泉田知事>
 知事就任約30時間前に地震が発生し、災害対策本部設置を見届け、すぐ現地へ入った。ハード面での被害の現状把握、被災者と直接話ができたことなど、初動段階で必要な事柄を認識できたことは大きい。
<関市長>
 職員の手がない中で、何度も同じことを聞くマスコミに困惑し、情報収集・発信の難しさを実感した。
 一方、本部に自衛隊や県、警察、消防が同席していたので情報交換・共有がうまくできた。そして、大きな被害を受けたが、町内会の団結力と伝達力で大混乱が防げた。
<桑原理事長>
 被災者が地震直後に欲しかったのは、まず安否情報。翌日からはライフラインの復旧情報。1週間後は、交通の復旧状況や風呂屋などの生活情報であった。NPOとしては、電気復旧後にインターネットでブログを立ち上げ情報を発信し続けた。

2)情報共有を図るための課題や施策
<柳川局長>
 国民の生命、財産を守るのは国の基本的な責務であり、県庁内に現地支援対策室を設け、国の15省庁の担当者が常駐し、国と県の情報の一元化ができた。今後は市町村との情報共有、住民への情報提供の運用態勢をどうつくっていくかが課題である。
<泉田知事>
 災害時の情報提供を市町村から求めるのではなく、県から人を派遣するシステムに見直している。市町村とNPOとの相互理解と役割分担が、今後の重要な課題である。
<関市長>
 今後すべきことは、ハード面では各町内に配置してある消防無線の強化と、中山間地に役立つ衛星携帯電話の設置。ソフト面では自治防災組織や町内会の連絡網の整備と強化である。
<桑原理事長>
 情報関連の防災訓練をやってみて、文字による情報伝達が一番確実だと実感した。携帯メールなどITを活用した地域情報システムづくりが必要である。
 
3)日頃からの防災として何が必要か
<柳川局長>
 自分が住んでいる場所の災害の危険性をハザードマップなどでよく知っておくことが重要である。そして、地域コミュニティで被災者を助け合う体制、高齢者や障害者などの要援護者がきちんと避難できる仕組みを考えておく必要がある。
<泉田知事>
 ハード面では回線の二重化や衛星回線の確保が必要である。ソフト面では緊急時に対応できる組織づくりや情報提供などのため、県危機管理防災センター(仮称)設置の準備を進めている。一方、市民との情報共有も重要である。
<関市長>
 地域コミュニティの強化と防災訓練の重要性を実感し、その方策を立てている。全国の自治体と連携し、物資の保管などを効率的に行うネットワークづくりも考えている。
<桑原理事長>
 町内会や学区単位で独自の防災マニュアルやハザードマップが作れると良いと思う。災害時には民間情報員が重要だが、平常時から信頼度を高める努力が必要である。
<林教授によるまとめ>
 良い災害対応は、被災者に被害を正確に知ってもらうことと効果的な対応をすることである。そのために国や県が現場をどう支援するかが課題と思う。
 そして、入ってきた情報を分析評価する仕組みづくりが必要。災害時にはだれもが、その時々に必要な情報を判断し、多種多様な情報の中からそれを見つけ出すことが重要であり、平常時から、必要な情報を的確に判断する力を高め、地域全体で防災力の向上を図ってほしい。

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